若尾文子、橋本マナミ…、愛人役が似合う女優11人の系譜

11月28日(水)16時0分 NEWSポストセブン

淡路恵子はヴァンプ女優と呼ばれた(共同通信社)

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 保守合同の立役者である大物政治家・三木武吉は、1952年の衆院選の立会演説会で、「私には、妾が4人あると申されたが、事実は5人である」と豪語した。1957年に施行される売春防止法を巡っては、事前に「妾」が法律の規制対象に含まれるかどうかが国会で議論された。


 それほど、戦後のある時期まで、金や権力のある男が「妾」=衣食住の面倒を見た上に“お手当”まで与える相手を持つのは当たり前のことで、しかも「妾」の多くは正妻にも知られる半ば公然の存在だった。俗称として「二号」とも呼ばれた。「そんな時代を象徴するのが、“ヴァンプ(妖婦)女優”と呼ばれた淡路恵子です」と語るのは、映画評論家の秋本鉄次氏だ。


 淡路は1950年代後半以降、東宝の「駅前シリーズ」「社長シリーズ」などで、金持ちの浮気相手となるバーのマダムや芸者をよく演じた。自身が20代前半から30歳前後の頃だ。その後、妻のある男が「男と女の関係」にある妻以外の女性の名称として「愛人」が定着する。愛人は、生活を全面的に“お世話”されているとは限らない。


「1960年代以降は錚々たる女優がさまざまな愛人役を演じました」(秋本氏)



 若尾文子、渥美マリ、風吹ジュン、関根恵子、秋吉久美子、古手川祐子、原田美枝子などが、自身の代表作となる作品で愛人役を演じ、その妖艶なイメージを確立した。


 ちなみに、同時期、歌謡曲でも愛人をテーマにした作品が数多くヒットした。こちらは「日陰の存在」として描かれ、女の立場からその哀しさを歌ったものが多い。箱崎晋一郎の『熱海の夜』(1969年)、テレサ・テンが歌った『愛人』(1985年)などが代表的だ。


 そんななか異彩を放つのが、『月曜日のユカ』(1964年)で加賀まりこが演じた主人公。会社社長をパトロンに持ち、さらに日替わりで多くの相手と寝て、男を翻弄する奔放な若い女だ。「妾」とも「愛人」とも異なる。


「背景には台頭しつつあった60年代ポップカルチャーがあり、加賀が演じたのは新しい時代の新しいタイプの女性です」と、作家でコラムニストの亀和田武氏は話す。


 愛人を巡る時代の風俗を素材にした映画もあった。「愛人バンク」の人間模様を描いた『夕ぐれ族』(1984年)だ。愛人という記号が性風俗産業の商品と化したことを物語っている。



「ところが、1990年代以降は、愛人が登場し、時代を代表するような作品がほとんどありません」(前出・秋本氏)


 理由として考えられるのは現実の世界の変化で、バブル崩壊、リーマン・ショックにより、一般の男性に愛人を持つ経済力がなくなったことが挙げられる。また1986年施行の男女雇用機会均等法により、女性の社会進出、自立が進んだことも大きい。


 男女が対等の立場に変わるにつれ、婚姻関係にない男女の関係が愛人から不倫へと変わったのだ。さらに前出・亀和田氏は、「ウェットでヘビーな人間関係が疎まれ、ライトでドライな人間関係が好まれるようになったことも影響している」と分析する。


 だが、愛人を持つことへの男の憧れ、願望が消滅したわけではない。壇蜜や橋本マナミらが「愛人の象徴」として人気があるのは、そうした思いの投影ではないだろうか。


取材・文■鈴木洋史


※週刊ポスト2018年12月7日号

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