作詞をする際 心に留めておきたい「良い歌詞」「悪い歌詞」

11月28日(木)17時0分 TOKYO FM+

10代向けのTOKYO FMの番組「SCHOOL OF LOCK!」。11月27日(水)の放送では、11月10日(日)に開催された『未確認クリニック2019』を特集。作詞家で音楽プロデューサーのいしわたり淳治さんを講師に迎え、歌詞に関する講義を行いました。
その後編では、“良い歌詞”と“悪い歌詞”について、参加した10代の意見も交えて話を進めました。
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いしわたり:こういう歌詞の講義を今まで何回も何回もしてきたんですが、“言いたいことがうまく言えません”みたいなことが悩みとして一番多いのかなと思いきや、実際には“書くことがありません”、“1番は書いたけど、2番で何を書いたらいいかわかりません、ネタ切れです”みたいなことが一番多いんです。極論を言えば、言いたいことが無かったら、“言いたいことが無い”ということを歌にできたらいいんです。それがただの自虐じゃなくて、うまく書くことによって社会風刺になったりしたら、それは素晴らしい作詞能力って感じがします。

ここで気になるのは、“良い歌詞とな何なのか”、“悪い歌詞とは何なのか”ということですが……、また聞きたいと思います。校長、誰か選んでください。

とーやま校長:はい。今、パッと答えられる人いる?

参加者3:私の思う良い歌詞は……自分の言いたいことが半分、相手が受け取ることが半分で、想像ができるような歌詞がいいと思っています。

いしわたり:はい。では悪い歌詞とは何ですか?

参加者3:悪い歌詞は、自分の言っていることが空回りして、相手に伝わらないものだと思います。

いしわたり:なるほど。何を言っているかよくわからないやつですね。では、“普通の歌詞”って何ですか?

参加者3:普通の歌詞は……いたって一般的にみんなにわかる歌詞。

いしわたり:みんなが知っているようなことが、歌われているということですね。ありがとうございます。もう1人くらいどうでしょう……?

参加者4:良い歌詞は、感性に届く歌詞、心に届く歌詞。悪い歌詞は、理解はできるけどつまらない。普通の歌詞は、わかるけど良くない。

いしわたり:普通の歌詞は、悪い歌詞と似ている感じですね。OKです。
こうやって最後に“普通の歌詞”を聞くと、みんな“ありきたり”だとか、“知っていることを歌っている”とか悪口になっちゃって……冷静に考えると、この世には良い歌詞・悪い歌詞・普通の歌詞があるはずなのに、普通の歌詞も悪い歌詞も、やっぱり悪い歌詞なんですよね。だから、この世には良い歌詞と悪い歌詞しかない、ってことなんですよ。

ここで考えたいのは、その悪い歌詞を考えている人、普通の歌詞を書いている人が、「今日は悪い歌詞を書くぞ!」、「今日は普通の歌詞を書くぞ!」と思っているはずはないんですよ。自由に書いたら、知らないうちに普通の歌詞になったり悪い歌詞になったりしているのでしょう。じゃあ、どうやってその歌詞が生まれてくるのか、というのを考えることで、良い歌詞を書く手がかりにならないかな、という話をしていこうと思います。

ではまず悪い歌詞について、さっき聞いたら“意味がわからない”という話がありましたけど、僕もそう思います。結局何かというと、“伝わらない歌詞”、“意味がわからない歌詞”というのが悪い歌詞の典型なんじゃないかなと思います。
例えば……『静寂は欲望とカルマを飲み込んで 僕らの過ちを忘却の彼方に解き放った』……どうですか? 意味深だけど、全然意味わからないですよね。こういうことを言っている人、意外といるんですよ。こういうことを書いている人は、常に「解釈は人それぞれで……」って言うんです。これって、実は一番やっちゃいけないことなんです。なんでかというと、“解釈は人それぞれ”って言っちゃった時点で、もう自分に興味を持ってもらっている前提になってしまっているんですよね。なのでそれは、作詞家だったりアーティストがやるのではなくて、どちらかというとナルシシストの皆さんがやること、という感じがします。なので、なるべくやらないほうがいいです。

僕は歌詞を書いているにも関わらず、全ての人にとって良い歌詞というのは、やっぱり無いと思います。なぜかというと、人生に躓いたときにいつもトイレに貼ってあった“人間だもの”の文字を見て我に返るように、シチュエーションに応じて良い歌詞は変わっていくんだと思います。誰にでも響く良い歌詞なんて、考えていけばいくほど、また凡庸な歌詞になっていくだろうと思います。だから、誰にでも効く薬なんて探さないほうがいいと思います。

それでも良い歌詞とは何かと考えたら、僕は“まだ名前が付いていない感情に、名前を付けるような歌詞”って思っています。多くの人がモヤモヤしていて「なんだこの感覚?!」って思っているようなものに、ビシっと書き抜いて「うわっ! これ、俺の曲だ!!」って思わせるような歌詞、それが良い歌詞だと思います。

良い歌詞はもうワンパターンあって。それは僕がよく“収納が多い物件”って呼んでいるんですけど……一人暮らしをしたことがある人は、部屋探しをしたことがあると思うんですけど、みんな収納があるのは嬉しいんですよ。それはなぜかというと、捨てたいわけじゃないけど隠してしまっておきたい、と思っているものをたくさん持っているから。人ってそういうものですから。それは心の中も一緒で、“捨てたいわけじゃないけど……”みたいな思い出がたくさんあると思うんですよね。それをうまく収納できる、歌の中に。そういう、しっかりとした棚の力がある歌……それは、良い歌詞だなと思います。

例えば、ユーミンの失恋ソングなんてとてもオシャレでかっこよくて。自分の惨めな失恋の体験を、その綺麗な棚にしまえたらすごく幸せじゃないですか。そんな風に、歌には棚の力があるんじゃないかなと思います。だからこそ言葉の建て付けは大事で、今にも倒れそうな棚にはしまいたくないので。なので技術がしっかり注がれた、建て付けのしっかりした棚、みたいなものが曲の中に、歌詞の中にあったら、良い歌詞なんじゃないかなと僕は思っています。

メモってくれている方もいて嬉しいんですけど、今聞いたからって明日からできるわけではなくて。なんでかというと、ちょっとした口癖とか自分の癖って、直すのすごく大変じゃないですか。どうしてかというと、無意識でやっていることを意識的に監視しなきゃいけないからなんですよ。自分が無意識でやっていることを自分で意識的に見張り続けて、それを直していくなんていうのは、すごい大変なことで。だからそこには、並大抵ではない努力というものが生まれて、それの積み重ねが歌詞を書いたときのきっと筆圧みたいなものになって、おそらく多くの人に届くようになると思います。なので今言ったような話を心のどこかに留めて、明日から強い気持ちで……というんですかね? やっていくといいんじゃないかな、と思います。

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<番組概要>
番組名:SCHOOL OF LOCK!
パーソナリティ:とーやま校長
放送日時:月〜木曜 22:00〜23:55・金曜 22:00〜22:55
番組Webサイト ⇒ http://www.tfm.co.jp/lock/

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