中谷美紀結婚で“男を立てる大和撫子”報道に違和感! 本当の中谷は安倍政権の女性政策にも苦言する自立した女性

11月29日(木)15時10分 LITERA

オフィシャルウエブサイトで結婚を報告した中谷美紀

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 女優の中谷美紀が27日、結婚を発表した。各マスコミが一斉にこれを報じている。相手は世界的オーケストラであるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のヴィオラ奏者でドイツ出身のティロ・フェヒナー氏。実力派女優と世界的音楽家の国際結婚カップル誕生にマスコミも祝福ムードで盛り上がっている。なかでも中谷がマスコミ各社に送った結婚を報告する直筆の手紙の達筆ぶりが大きな話題になり、ワイドショーでも中谷について“気配りのできる女性”“男を立てる大和なでしこ”などと盛り上がっているのだ。


 しかし、この“大和なでしこ”や“男を立てる”などという言葉で中谷をくくる報道には大きな違和感がある。中谷美紀って、恋愛や結婚に依存・固執することなく、女優としてのキャリアを積み重ねてきた、むしろ自立した女性というイメージが強かったはずだ。


 そう思って、中谷本人のブログを見てみると、結婚を報告する11月27日の投稿で綴られていたのは、「男を立てる」などという女性蔑視的な男女関係とは対極にあるふたりの関係性だった。


 たとえば、フィヒナー氏の人柄について、中谷はこのように紹介している。


〈共に山歩きをする時などは、常にこちらのペース配分に配慮し、自らの楽しみや利益よりも、人の幸せを優先する彼の人柄に惹かれました〉


〈ヴァイオリンをはじめとする様々な楽器の音に耳を傾け、自らの音を主張するのではなく、調和を大切にして来たヴィオラ奏者だからこそ、私のような自由を愛する人間をもてなずけることができるのでしょう〉


 ふたりの趣味である山歩きやフィヒナー氏が弾くヴィオラという楽器の特性になぞらえながら、フィヒナー氏に中谷が付き従うのでなく、フィヒナー氏のほうが中谷のペースや自由を尊重している様子を綴り、むしろそうしたフィヒナー氏の調和的なところに惹かれたと言っている。また、中谷自身が「自由」であることをとても大事に考えていることもよくわかる。


 今回の結婚報告だけではない。中谷は、こうした“大和なでしこ”“男を立てる”という男尊女卑的な価値観について、これまでたびたび批判的に綴っている。


 たとえば、今年3月15日の投稿では、主演ドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS)に言及、ドラマが女性の心を代弁するとして“日本男性”についてこう苦言を呈した。


〈自分は何も家事を手伝わないにもかかわらず、妻や恋人への要求だけ高い男性は、まだまだたくさんいらっしゃるようにお見受けいたします。
あるいは、ゴミ出しをしたり、子供をお風呂に入れただけで、「俺は家事を手伝ってやっている」とご満悦の男性もいらっしゃることでしょう。
そんな男性のあれこれに、憤り、嘆息し、諦め、果てはボツ交渉となった女性たちの悲痛な心の叫びを盛り込んだリアルな物語であるのと同時に、ともすればドロドロの惨憺たる作品になりがちなテーマを痛快に笑い飛ばし、たくましく生き抜く女性の姿をお見せしたいと思っております。〉


 男にかしずく“なでしこ像”どころか、旧態依然とした日本の男女の性役割を拒み、女性に押し付けられる家庭内労働、家事ハラスメントに一石を投じる真っ当な文章だ。


 また2016年7月4日には宮部みゆき原作のドラマ『模倣犯』(テレビ東京)に関連し、家庭内での男女の役割についてこんな考察をしている。


〈ドラマでは、ある俳優さんが滋子(主役・中谷が演じるルポライター)の夫を演じて下さっていますが、自らも稼業に専念する傍らで、妻の仕事にも理解を示し、執筆で昼夜逆転になりつつある妻に代わって朝食を作り、事件が佳境となると洗濯物までたたんでくれる理想の夫です。
実際には、日本においてはそのようなできたご主人はまだまだ少ないと思われますし、あるシーンで主人公が執筆をしている傍らで黙々と洗濯物をたたむ俳優さんの後ろ姿を見ていて少々切なくなったりするのは、やはり私自身の中にも「男性はかくあるべき」とか「女性はかくあるべき」などといった固定観念があるからなのでしょう。〉


●安倍政権の女性政策にも苦言!「一億総活躍と言われましても…」


 ドラマのなかでも、メインストーリーの事件ではなく、サイドストーリーともいえる夫婦の関係を切り取る。しかも自戒を込めて。そして中谷は従来の日本男性にありがちな家庭での家事や育児を妻任せにする夫にたいしての皮肉を交え、それとは真逆のドラマの夫を“理想”と言っているのだ。さらにブログでは安倍政権が掲げた一億総活躍について、働く女性の目線でこう続ける。


〈一億総活役時代と言われましても、女性がますます苦しくなるような、そんな気がしてなりません。
家事を気軽にアウトソーシングできる制度が整い、子供や年老いた親を安心して預けられる場所が潤沢にあれば多少は異なるのでしょうけど、まだまだ追いついていないのが現状です〉


 男社会の日本において女性が性役割を押し付けられている現状を冷静に指摘する中谷。


 また中谷は、直筆の手紙にも〈日本を主戦場とする私は、お互いの文化に敬意を払いつつ、共に齢を重ねて参りたい〉と表明しているとおり、日本文化や日本的価値観だけをことさら誇るような人間でもない。


 中谷が日本的価値観にとらわれない広い視野を持っていることは、ブログを見るだけでもわかる。今回話題になった達筆に限らず、中谷が着物や器など日本文化に造詣が深いことは事実だが、中谷が造詣深いのは何も日本文化に限ったことではない。仕事でもプライベートでも世界中の様々な地を訪れ、国籍や国境にこだわらず、様々なルーツのアートに精通している。とくに現代アートについては、作品の背景にある現代社会への問題意識も踏まえた鋭い論評を展開している。


 アートだけではない。2017年9月に中国を訪れたことに関する投稿では、現在の中国の勢いに感嘆すると同時に、インターネット規制や格差拡大という負の側面にも触れ、さらには歴史問題を意識しつつ訪れた南京での現地の人と心を通わせたエピソードを綴る。その投稿だけでも、中谷がいかに国際情勢や社会問題について高い見識をもち、偏見にとらわれないフェアな批評眼をもっているかがよくわかる。


 そもそも中谷は、女優として長年一線で活躍してきた実力派女優であり、エッセイなど文筆にも堪能。数年前には大手芸能事務所を独立し、個人事務所を立ち上げる。恋愛面においても渡部篤郎が前妻と離婚後も結婚にこだわることなく事実婚を貫き、その間シリアスな局面もあったかもしれないがパブリックには支障をきたすことなく変わらず仕事を続け、男性や恋愛だけに依存することなく旅行や美術鑑賞などの趣味も大事にする。どこをどう取っても、自立した個人にしか見えない。


 そんな中谷に対し“大和なでしこ”などという安易な言葉で礼賛することこそ、あまりに失礼なレッテル張りとしか言いようがない。実際に中谷は3年ほど前の2015年、日本文化に関するトークショーで「私はお転婆。決して和美人でもないし、大和撫子でもありません」と自ら断言しているほどだ。


 しかし今回の中谷に向けられた“大和なでしこ”なる表現は一部でフェヒナー氏が語ったかのように流布されているが、どうやらその元はあるスポーツ紙の記述にあるようだ。


●中谷美紀に“大和撫子”像を押し付ける、日本マスコミの男尊女卑体質


 それが26日、中谷の結婚の一報を打ったサンケイスポーツの記事だ。そこには2人の馴れ初めなどと共にこう記されている。


〈フェヒナー氏が拠点とするオーストリアと日本の距離は約9000キロだが、中谷は交際後、オーストリアへ飛び、彼の自宅で同居。仕事の度に日本へ帰るスタイルで世界を股にかける彼を支え続けた。
 フェヒナー氏は、常に男性を立て、品のある“大和撫子”な中谷に惹かれ、結婚を決意。一方、今年4月期のTBS系主演ドラマ「あなたには帰る家がある」で夫に不倫される妻を演じ、結婚することに戸惑いを感じていた中谷も、女性を大切に扱うフェヒナー氏にぐんぐん惹かれていった。〉


 フェヒナー氏が本当に“大和撫子”などと語ったのか、それ以前にこれはフェヒナー氏の言葉なのか、文章からはまったく不明だが、しかし、いかにもゴリゴリのオヤジタカ派の「フジサンケイグループ」らしい物言いだ。そしてこれに我が意を得たりと、ワイドショーも丸乗りし、飛びついた格好だ。


 まさに勝手な思い込みと押し付けだが、しかし考えてみるとそれも当然だろう。なにしろマスコミこそが、旧態依然とした男社会なのだから。実際、スポーツ紙やテレビワイドショーでも、幹部だけでなく権限を持つデスクやプロデューサーの多くが男性で占められる。そのためパワハラやセクハラが横行している世界でもある。


 たとえば元NHKの登坂淳一アナはNHK時代のセクハラが発覚し『プライムニュース イブニング』(フジテレビ)のキャスター就任が見送りになったが、代わりに『プライムニュース イブニング』キャスターになった反町理・フジテレビ報道局解説委員長にもパワハラ・セクハラ報道があった。さらにリニューアルした『news zero』(日本テレビ)でも、出演が内定していた青山和弘解説委員による性暴力問題が持ち上がり、直前に降板している。しかも、こうした卑劣なセクハラ・パワハラ問題が表面化しているにもかかわらず、新聞やテレビでは自社のセクハラ事件を決して報じようとはしない。こうして表沙汰になったのは氷山の一角、その裏に隠蔽され、女性が泣き寝入りしている事例はごまんとある。


 そう考えると、今回の中谷“大和なでしこ”礼賛報道も、自分たちの願望をそのまま投影し、まるで男にかしずく中谷を演出し、矮小化した結果だろう。さらに悪質なものになると、中谷が過去に俳優の渡部篤郎と長い事実婚状態ののち別れたことを持ち出し、“渡部よりランク上の男性をゲットしてよかった”“リベンジ婚”などと、これまた女性蔑視も甚だしい視点で報じてもいる。


 しかも中谷美紀個人が結婚しただけなのに、世界的音楽家の白人男性に「日本女性が認められた」「日本文化が認められた」と、なんなら“日本スゴイ”まで潜り込ませようというゲスさまで透けて見える。


 あまりにグロテスクとしか言いようがないが、残念ながらこれが日本マスコミ、そして日本社会の悲惨な現状なのだ。
(伊勢崎馨)


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