販売停止がすすむ成人向け雑誌 いまの主要購入層は誰か

11月29日(水)7時0分 NEWSポストセブン

雑誌コーナーはかつてコンビニ集客の中心だった

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 かつてコンビニエンスストアの雑誌コーナーといえば、発売日に書店よりも早い時間に入手できる、立ち読みする人がいることで防犯の役目も果たすなど店舗にとっての役割が小さくなかった。ところが、最近では成人向け雑誌の存在を筆頭に、何かと風当たりが強い。イオングループのミニストップが販売停止を発表した成人向け雑誌を今、購入している人たちは今後、どこで入手すればよいのか。このジャンルが生き残る道はあるのはか。ライターの森鷹久氏が苦しい業界の内幕を探った。


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 大手コンビニ「ミニストップ」が、12月から千葉市内の店舗で成人向け雑誌の取り扱いをやめると発表した。さらに来年1月からは全国のミニストップ店舗でも販売を停止する。


 同社によれば、コンビニを訪れる女性客、子連れ客からの要望を受け、今年5月ごろから取り扱い中止の検討をしていた。さらに、ミニストップを含めた総合スーパーやドラッグストアなどを傘下におさめるイオングループ全店舗でも、来年1月より成人向け雑誌の取り扱いを中止する方針が明らかになった。


 成人向け雑誌は「有害図書」と受け取られているため、この取り組みに対する世論の反応は「概ね良い」(経済誌記者)というが、表現規制に反対するグループなどからは「行き過ぎだ」との声も上がっている。では、当の成人向け雑誌の制作サイドはどうだろうか。旧知の現役編集者に話を聞いたところ、意外にも落ち込んではいない反面「見せしめにされた」との憤りを隠さない。


「エロ本(成人向け雑誌)をコンビニで買う、という習慣はすでに消滅し、コンビニ側がエロ本の売り上げに期待しているなんてこともない。雑誌取次店などとの関係から、やむを得ず陳列していたという状況だった今回の決定は、商業的には“すでになくてもよい存在”になっていた、エロ本、そして我々を“悪”にして、企業イメージのアップを図ったのではとすら感じる」(現役の成人向け雑誌編集者)


 そもそも今回の取り組みは、イオンと、同社が本社を置く千葉市側との調整を経て決定したものだ。販売店側が扱い拒否を一方的に決めてしまっては雑誌取次業者、流通業者との間に要らぬ軋轢を産んでしまう。また、行政だけが進んで“表現規制”をしようものなら、反発する声も余計に大きくなる。そこで、小売業者と行政側とがタッグを組み、また東京オリンピックなどを控えた昨今の“時代の要請”や、女性や子供たちに優しい環境作りをする、といった面をアピールすることで、企業イメージと自治体イメージの向上を狙ったのでは、と成人向け雑誌業界は見ている。


 成人向け雑誌に限らず、大手コンビニの全店舗で、雑誌コーナーは縮小され続けている。かつては主力商品のひとつで、成人向け雑誌も有力商品に数えられていたため、棚も用意され仕入れルートも確立している商品だ。


 ところが最近、たとえば大手コンビニのセブンイレブンでは、旧店舗のリニューアルを進めているが、新店舗での雑誌コーナーは旧店舗の半分以下という場所も多く、成人向け雑誌に至っては、ギャンブル本などに紛れて、わずか数冊が平積みにされているほど。「成人向け雑誌など、二日に一冊も売れません」と語るのは、千葉県内にあるミニストップの店長。


「年配のトラックドライバーなど、熟女モノや漫画モノを熱心に買い続けてくれる人たちもいます。彼らはネットに疎い人が多く、コンビニで買えなくなれば、もう手段はないでしょうね。書店でも成人向け雑誌の扱いは減っていると聞いていますから……」(ミニストップ店長)


 彼らの多くは長距離の荷受け時間帯である深夜や早朝など、他の買い物客が少ない時間に買ってゆくという。出先で楽しむためにだけ購入するので、自宅に持ち帰らずに済む気兼ねのなさも、購入意欲を刺激しているのではないか。出張での利用者が多いビジネスホテルの近くにあるコンビニでは、成人向け雑誌コーナーが根強く残っているのもそんな事情だろう。


「老人が多い地域、地方の過疎地域では、今もエロ本の需要がある。北海道や九州の過疎地域では、エロ本の品揃えがよいほど客が増えた、ということもあるくらい、コンビニの主要商品でした。だたやはり、時代の流れには敵いません」(ミニストップ店長)


 前出の編集者は、今回の決定に憤りながらも「エロ本など売れない」と開き直る。


「エロ本を買っているのは、ネットに疎い中高年だけ。若い子は皆インターネットで成人向けコンテンツを見ている。ネットには田舎も都会も関係ないので、日本中の若者がエロ本を買わなくなりました。売れなくなったことで、金をかけて作れない。最近のエロ本はアダルトビデオ会社からもらったスチール写真を使いまわして、アダルトビデオのサンプルDVDを特典につけて……と、もはやアダルトビデオの紹介ツールと化している。これが300円でも売れないんですから……」


 これらの雑誌はコンビニ以外でも、例えば雑誌の通販サイトなどを通じて気軽に買うことが可能ではあるが、そこまでして「エロ本が欲しい」という需要は少ない。当然に扱い数は激減、遠くないうちにこちら(通販)も「淘汰されるはず」と、見通しは暗い。そうなれば、まさに「エロ本」の文化は完全に消えて無くなってしまうが、結局のところ「エロ」というコンテンツ自体は永遠に無くなることはなく、中高年であっても”エロ”に触れたければ、デジタル機器に挑まざるを得なくなる。


「一部の出版社は、携帯で見ることができるアダルトコンテンツ開発などにも力を入れています。ただ、紙とは性質が全く違うので受け入れられるまでには時間がかかると思いますが……。動画を縦型にして、スマホで見やすくしたり、熟年女優を多く起用したりと、中高年を取り込む努力はしている」(前出の編集者)


 一方、同じアダルトコンテンツでも「BL(ボーイズラブ)」などのジャンルは、今なお紙コンテンツでの需要が高い。出版社の判断で縮小を余儀なくされている成人向け雑誌の制作者たちは、BLというジャンルへシフトしている。


 かつては「河原に落ちているらしい」「友人の兄貴の机の上に……」など、筆者にとっても「エロ本」は思い入れのある「文化」の一つだったが、その灯火が消えかけようとしている様は、少し物寂しい気がしている。

NEWSポストセブン

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