ゲーム実況で食ってる人で下手くそなのは俺たちだけ──人気実況者・加藤純一ともこうが考える、視聴者たちが彼らのプレイに熱中する理由とは

11月30日(土)11時30分 電ファミニコゲーマー

 ゲームが“遊ぶもの”ではなく、“見るもの”になりつつある時代が到来している──。

 ゲームをプレイしながら、その様子を自身で実況する動画を配信する。「ゲーム実況」と呼ばれるジャンルが、世の中に定着しつつある昨今。

 2007年から2008年にかけて、ニコニコ動画内でアップされる例が増え始めたゲーム実況は、2009年以降に人気カテゴリーへと成長していく。しかし、ゲームの映像や音声はあくまでメーカーの著作物。
 ジャンルの創成期からしばらく経つまでは、法的にグレーな存在であり続けた。

 ところが、2013年にスパイク・チュンソフトが『不思議のダンジョン 風来のシレン4 plus 神の眼と悪魔のヘソ』『テラリア』など新作のプロモーションのために条件付きで許可を出したことを皮切りに、徐々にゲームメーカー側が理解を示す例が増え始めた。
 そしてここ数年では、新タイトル発売前に人気実況者が実況配信をする事例はPRの主要な方法になりつつある。

 さらに、ノンジャンルで活動するHIKAKINはじめしゃちょーといった人気YouTuberがサブチャンネルでゲーム実況をアップする例が多くなるばかりか、人気女優の本田翼がYouTubeでゲーム実況を開始
 今年10月にはさいたまスーパーアリーナでリアルイベントを開催するなど、新たな展開も。

 世界に目を向けても、2018年に世界で最も稼いだYouTuberトップ10のうち、実に4人がゲーム実況者であり(Forbes調べ)、ゲームを見ることを楽しむ人の多さが伺える。

 ゲーム実況は、もはや一部のゲーム好きのみが楽しむジャンルではなく、YouTubeで動画を見る人たちが日常的に接する、一般的なジャンルとなりつつあるのだ。

 今回は、そんなジャンルの創成期から活動を始め、今年で10年目を迎えた人気実況者の加藤純一氏、もこう氏をお迎えしてインタビューを行った。

 加藤氏は、編集した動画をアップするのではなく、主に生配信を行うスタイルの実況者。令和へ改元後間もなく行った配信『ポケモンエメラルド・バトルファクトリー金ダツラを倒す男~令和~』では、約7万8000人がその様子を見守り、生配信のリアルタイム同時接続者数が世界一位を記録。

 時を同じくして生配信を行っていた世界一人気の実況者・Ninja(YouTubeの登録者は約2200万人)の視聴者数を大幅に超える大記録となった。

 一方のもこう氏は、主にネットの対人戦を好む実況スタイル。YouTubeチャンネル登録者数約78万人を誇り、2018年には『ぷよぷよ』のプロライセンス保持者(当時11名のみ)となった。
 今年にはNHK Eテレの『沼にハマってきいてみた』のeスポーツ回にて「プロプレイヤー、ゲーム実況者」として出演。タレントの桜井日奈子にぷよぷよの指導をするなど、ゲーム実況界の顔の一人として活躍している。

 そんなゲーム実況というジャンルの最前線で戦い続けるおふたりに、この10年のトレンドの変化から、実況と編集動画の違い、実況するにあたって大切にしている姿勢など、ゲーム実況にまつわる様々なトピックを、2時間半に渡って語っていただいた。

 果たして、ゲーム実況というジャンルの最前線で何が起こっているのか。このゲームが見るものになりつつある時代に、一体どんな体験が、視聴者たちを魅了しているのか──。

取材・文/森ユースケ
取材・編集/TAITAI
撮影/佐々木秀二
取材協力/丹羽一臣


左からもこう氏、加藤純一氏

はじめに

──おふたりがゲーム実況を始めて、今年で10年目となりました。どんなことを考えながら活動しているのかをお聞きします。
 そこから、実況者たちがどんな工夫をしているのか、視聴者たちは何を求めているのかなどを考察できるのかなと。現在ではふたりで同じ企画に挑戦することも多いですが、実況を始めた当時からお互いを認識していたのでしょうか?

加藤純一氏(以下、加藤):
 彼のほうが少しだけ始めるのが早かったのと、同じゲームの実況をしていたので、認知はしていましたよ。なんかヤバイやつがいるって感じで(笑)。
 そもそも、もこうはなんでゲーム実況を始めたの?

加藤純一氏(別名・うんこちゃん)

もこう氏(以下、もこう):
 ニコニコ動画でよく見ていた実況者さんが、目隠しでポケモンをクリアする企画をやっていて。その人がとあるゲームをやり始めたときに、俺のほうが面白くできるんじゃね?って思ったんですよ。
 当時、大学で一人暮らしを始めたタイミングだったこともあって、動画を撮ってみたのが始まりです。

──それぞれ、最初に上げた動画はポケモンの実況動画でした。もこうさんが「【バトレボ実況】第一回 厨ポケ狩り講座!」、加藤さん(うんこちゃん名義)が「ポケモン6画面で一気にクリアしてやんよ 実況プレイpart1」ですが、ただプレイするのではなく、企画として少しひねろうとする工夫が見えますね。

加藤:
 確かに、ただ普通にプレイするよりは、ちょっとひねってやろうって考えはあったんだと思います。

もこう:
 当時は、強いポケモンばかり使う人は「“厨ポケ”【※】ばっかり使う」ってヘイトを受ける時代だったんですよ。そこで単純に、弱いポケモンを使って倒してやるぜって思ったのかな。
 それをやってる人がいなかったので、実際にやってみたらコメントがめっちゃついたのを覚えてますね。朝起きたら、1000件を超えてて、びっくりするみたいな。

もこう氏

 大学から帰ってきてPCを見たら、こんなに反応が来るのか……って。このときから、見てもらえて、反応が来ることへの快感はありましたね。

※厨ポケ
一般的に、「厨房が適当に使っても勝てる、極めて強いポケモン」を指す。
単純に種族値が高いポケモン、ガブリアスのように「ドラゴン+地面」という弱点の少ないタイプを持つポケモン、第7世代(『サン・ムーン』シリーズ)で能力の下方修正がなされる以前、第6世代(『X・Yシリーズ』)で猛威を奮ったメガガルーラなどが「厨ポケ」とされることが多い。
しかし、なんらかの定義があるわけではないので、どのポケモンが「厨ポケ」であるかの判断は、人によって変わる。禁止されていないのだからなんら問題はないと考える人がいる一方で、強いキャラばかり使う姿勢を嫌う人まで、反応は様々である。

加藤:
 その前に数年間引きこもってたから、反応に飢えてたんだろうね。

もこう:
 そうですね。中学校は1年だけ行って、2〜3年は引きこもってそこから通信制の学校だったので。大学でも友だちができなかったし。

──それぞれが実況するゲームを選ぶ際にはどんな基準があるんですか?

加藤:
 人間って、誰かが楽しそうに何かをやってるような、お祭りがあると目を向けちゃうと思うんです。
 つまり、僕が楽しんでさえいれば、野次馬もいっぱい集まってくるだろうと。そのためにも、とにかく自分が楽しめるゲームをやる。
 
 僕はとにかく育成ゲームが好きなんですよ。モンスターを育成したり、人間を育成したり。パワプロやポケモンも全部そう。自分の好きなゲームをやればいいんじゃないかって思ってます。
 だいたい、面白いことを言って笑わせてやろうみたいなことは、生まれてこの方一回もないので。たいてい、狙って言ったことってウケなくないですか?

──とはいえ、加藤さんが実況するゲームのジャンルは幅広いですよね。

加藤:
 そうですね。ノベルゲームも音ゲーも、なんでも。もこうはオンライン対戦特化型だよね。

もこう:
 俺はそこにこだわりを持っちゃいますね。

──これまでに手応えを感じた動画はどれですか?

もこう:
 難しいですけど、後で見返したくなる動画があるんですよ。例えば、シャドウバースで上手く読みがハマったプレイングのシーンを見返すのが好きだったり。相手の手の内を読んだりするのが好きですね。

──コンピュータ相手だと、テンションが上りきらないというか。

もこう:
 それはあるかもしれないですね。

──引きこもり時代に、対戦ゲームをやっていた影響もあるのでしょうか。

もこう:
 それもあるかもしれないです。ぷよぷよのネット対戦で、勝った後にチャットで相手を煽るなんてことも(苦笑)。逆にやられることもありましたけど。
 そういうのがけっこう長く続いていたので、自分の中に根付いている気はします。

加藤:
 対戦ゲームって試合ごとに区切りがあるから、動画にしやすいのかも。俺の場合、生配信だから、動画畑の人と考え方が違うんだよね。
 生配信だと、数時間区切りくらいで考えるから、ストーリーモノでもいけるのよ。30時間でクリアできそうなら、1日4時間で1週間みたいな。月曜から始めて、日曜で終わるっていうのが1つのサイクル。

もこう:
 なるほど。僕の場合は、長くて15〜20分を目安にしてるので、対戦ゲームになっちゃうのもありますね。
 ストーリーモノのゲームだと、一回動画で上げちゃうと、コンスタントに上げていって、パート57とかになってもモチベーションを維持するのが難しいですね。

──他の実況者の動画は見ますか?

もこう:
 見ますよ。シャドバとか、好きなゲームの生配信はよく見てます。研究とかっていうより、いち視聴者として楽しむって感じが強いかな。
 
加藤:
 DeToNator【※】とか好きですね。仲良さそうに楽しくやってるのを見ることが多いです。

※DeToNator
今年で結成10年めを迎える、日本を本拠地として活動するプロゲーミングーチーム。2016年からは海外拠点も構え、海外のプロリーグにも参加している。

──ゲーム実況を見る人たちにとって、ゲームを仲良くワイワイやってる姿を見て疑似体験するという動機はありそうですよね。

加藤:
 そうだと思います。ただ個人的には、実況者同士でワイワイやってるの、あんまり好きじゃないんですよね。本当はそんなに仲良くねえだろって思っちゃうから(笑)。
 幕末志士とかは、本当に同級生でマジで仲良さそうだから、見てて面白いんですけど。まあ、自分もそういうところがあるかもしれないのであんまり言うのもあれですけど、いち視聴者としては、あまり見ないです。

──いち視聴者として好きな実況者はいますか?

加藤:
 なんかキラキラした人たちはあんまり見ないというか、ちょっと苔むして臭いがある感じが好きなんですよ。
 さっきも言ったDeToNatorみたいに、男同士でやってる、男が楽しむコンテンツが居心地いいです。極論、男にとっては、男同士で遊んでるのが一番楽しいと思うんですよ。

──学生時代に部室でバカやってた時の感じというか。

加藤:
 コンビニの前で同級生とたむろしてるときみたいな。もこうはけっこう友だち多いよね。

もこう:
 交友関係は増えてきましたね。でも、それを表に出すと視聴者からは嫌がられたりします。
 一回、知り合いと一緒に動画を撮ったら、「出すんじゃねえ」って荒れて、その人が病んじゃったんですよ。

加藤:
 視聴者が疎外感を感じたのかな。

──そのエピソードを聞くと、もこうさんが日常的に浴びているヘイトコメントは、常人であれば一発で病んでしまう威力がありますよね……。

もこう:
 普通にダメージを受けることもあるんですけど、この10年で耐性がついてきましたよね。
 もともと、引きこもり時代からネットラジオをやったりブログを書いたり、痛い感じでやってたので慣れていたっていうのもあると思います。

ゲーム実況で食べてる人で、下手くそなのは俺らふたりだけ

──ゲーム実況を10年続けてきたなかで、なにかトレンドの変化を感じたことはありますか?

加藤:
 なんとなく、最近は日本のゲームがちょっと弱くなった気がしますね。名作として挙げられるのは海外のゲームが多かったりして。
 僕はドラクエとか日本のゲーム大好きなので、『ドラクエⅪ』が盛り上がって売れてるとテンションが上ります。

 後は、10年前だと、聞いたこと無いメーカーのゲームで実況が盛り上がったりしてなかった?

もこう:
 ありました、ありました。

加藤:
 でも最近は、メジャーなメーカーのゲームをやるのが主流になってきてるんじゃないですかね。寂しいですけど。
 2年前くらいにやった『Getting Over It』とか、YouTubeで僕の名前を広げていただいたゲームだなと思ってて。すっげえ難しかったけど、あれから同接の人数も増えたし、そのちょっと後にも『UNDERTALE』ってゲームをやりましたね。もこうもやってたよね?

もこう:
 やりましたね。

 もう一つのトレンドとしては、対戦ゲームだと魅せるプレイングをできる人の方が伸びやすくなってきた気がします。プレイスキルがあって、そのうえで面白いことが喋れることが重要というか。

加藤:
 確かに。ゲーム実況で食べてる人のなかで、下手くそなのって俺ともこうくらいじゃない?他の人たちはある程度上手いじゃん。

もこう:
 マジでそうかもしれないです。

──確かに、かつてニコニコ動画で人気だった実況者たちは、上手さよりもキャラ重視だったように感じます。ただ、今YouTubeで人気な人たちは、ニコ動でも人気だった人が多いですよね。

加藤:
 ああ、そうですね。キヨレトルト牛沢ガッチマンとか。あ、キヨもゲーム下手だわ(笑)。若いから、俺たちより多少は上手いけど。

 なんでですかね。見ていてストレスがかかるんですかね? これだけインターネット使う人が増えたら、本当にいろんな人が見るので、そこまで興味ない人たちにとって、グダグダやってるの見てられないって感じなのか。

もこう:
 僕も「イライラするからもう見ない」って書かれるようになったかもしれないです。昔だったら「草」「ここ下手すぎワロタ」くらいだったところが、徐々に変わってきた。

加藤:
 でもさ、今さら変えられないし、俺たちが喋らずにそれなりのプレイをしてたって面白くないじゃん(笑)。

──上手さを求める方向って、結局同じ方向に向かっていってしまうわけですもんね。ビジネス業界でも、最近はロジカルシンキングはコモディティ化しているという見方もあって、意思決定に合理性を求めるほど平凡なサービスになってしまうという。それに近い気がします。

加藤:
 プロゲーマーがYouTubeでプレイ動画を上げても、そこまで再生数が上がらないのって、そういう理由があるのかもしれないですね。みんな、引退してエンジョイ勢になってからの方が人気が出るんですよ。

もこう:
 確かに、現役のプロでYouTubeでも人気な人ってあんまり……。

加藤:
 それこそ、現役プロで今一番人気あるのはもこうじゃない? 一応プロでしょ。なのに1勝もしてないんですよ。一番人気あるのに一番下手っていうのが面白いんじゃない?
 競馬で言うハルウララ【※1】みたいな。馬場豊【※2】と語感も似てるし(笑)。そのままでいいんじゃないかな。

※1 ハルウララ
2000年代初頭に人気を博した競走馬。当時日本歴代2位の108連敗を喫するなど、連戦連敗が続いたことで「負け組の星」として人気を誇った。当時引退時の成績は113戦0勝。

※2 馬場豊(ばば・ゆたか)
もこう氏の本名で、声優活動をするときはこの名義を使う。

──盛り上げるために、あえて上手く進めないこともあったりするんですか?

加藤:
 いや、あえて下手くそにやってるわけじゃなくて、本当にうまくないんです。なんなら、老化で反射神経もなくなっていくし。気持ちでカバーしてる感じです。
 まあでもね、ゲームって上手い人だけのものじゃないし。下手くそが楽しんだっていいわけじゃないですか。

 だから、語弊があるかもしれないけど、eスポーツに対してもゲームは上手いだけが全てじゃないぞって気持ちもありますね。もこうは、プロゲーマーなわけでしょ?

もこう:
 そうですね。ぷよぷよで。

もこう選手
(画像はSEGA | ぷよぷよポータルサイト | eスポーツ | プロ選手一覧より)

加藤:
 プロゲーマーだけど、1回も勝ったことがないんですけど、それが超面白いんですよ。
 でも、ぜんっぜん勝てない彼が1勝したときの盛り上がりって、尋常じゃ無いと思うんですよ。そういうプロゲーマーがいてもいいと思うんですよね。
 eスポーツが盛り上がるのは悪いことじゃないけど、上手いだけが全てじゃないぞって。

 聞きたいんだけどさ、もこうはゲームが上手いように見せたいの?

もこう:
 対戦では、そう見せたいですね。自分の理論に基づいた行動で読みが当たったら嬉しいし。それが裏目に出たとしてもぜんぜん構わないですけどね。
 シャドバでも、いい試合にしようとして、結果的にぜんぜんダメだったりするけど、コメントで「わざと下手にやってるんじゃないの」って言われるんですよ。

加藤:
 言われるよね。でも、俺たちはちゃんとやって下手くそなので(笑)。

──おふたりはYouTubeとニコニコ動画という2つのプラットフォームを使っているわけですが、それぞれになにか違いは感じますか?

加藤:
 やっぱり分母がでかいからYouTubeメインでやってますけど、見てる人たちの雰囲気はそんなに変わらない気がします。

もこう:
 そうですね。

加藤:
 視聴者の数が5倍くらい違うので、金銭的にも変わってくるとは思いますけど。あ、YouTubeでやれそうなゲームを、ニコ生で試してみるっていうのはありますね。
 まあでも、結局は自分が楽しかったらいいというのが大事で。視聴者の反応ばっかり気にしてたら、それこそ病気になっちゃうから。

 一回だけ、超狙って十万人企画みたいな感じでホラーゲームをやったんですけど、地獄のようにスベったんですよ。それ以降、ウケ狙いは金輪際やらないって決めたんで。

もこう:
 当てに行ってスベるのはしんどいですね(笑)。

──ウケは狙わないとはいえ、ゲームを選んだり、プレイしている最中に、視聴者を盛り上げるための工夫はしているんですよね?

加藤:
 これをやったら面白いんじゃないかって工夫はしますよね。例えば、ニコニコ生放送って、視聴者さんがいくつかの部屋に分かれているんですよ。
 それぞれの部屋から、別の部屋のコメントは見えないので、部屋ごとのコメントでキャラを操作させてプレイするとか。

 『ファイアーエムブレム』ってゲームをやったときに、俺は主人公を動かして、他のキャラは部屋ごと割り振って。
 例えば、立ち見Aの部屋にいる人たちは代表を決めてコメントで行動を決めてくれって感じでやっていったらすごく面白かったんですよ。

 普通なら自分が全部決める選択肢に、他人の意見が入ってくるのが面白かったし、視聴者さんも楽しんでくれたみたいです。

 いま考えてるのは、あれを今度はニコ生とYouTubeでやったら面白いんじゃないかって思ってます。なんか知らないけど、ニコ生とYouTubeの視聴者たちって、お互いを嫌い合ってるので。

配信中に“感情失禁”して泣いてしまったことも

──ちなみに、お互いの動画や配信を見ることはあるんですか?

加藤:
 生配信をやってるのに気づいたら、今日はどんなケンカしてるのかなって見に行く感じですね。

もこう:
 僕も加藤さんの生配信はけっこう見てますよ。特にオーイシマサヨシさんとやってるネットラジオはけっこう見てますね。

──お互い認める、ここはスゴいと思うポイントはありますか?

加藤:
 すぐ思いつくことが1つありますね。同期で後輩で付き合いも長いから、長く見てきたけど、こいつ、最近おかしくなっちゃったんですよ。
 企業さんの案件でも、ブチ切れて止めたりしちゃって(笑)。もともと荒い奴だったとは思うけど、あれ以降は共演すると心強いですね。最悪、ちゃぶ台ひっくり返していいんじゃんって思うから。

 普通、そういうことはできないじゃないですか。僕も、8年間は社会人を経験してからゲーム実況の専業になってるので、かしこまっちゃうんですよ。
 でも彼は良くも悪くも、そういうことがなくて、その素直な部分が視聴者にウケてるんだろうなって思います。

──ブチ切れてしまったのは、どんなシチュエーションだったんですか?

もこう:
 とあるゲームの案件で、ゲーム自体は非常に素晴らしい、海外でも人気な作品なんですけど。

加藤:
 去年の生配信の中で、一番面白かったですね。俺も聞きたいわ、なんで切れちゃったの?

もこう:
 1時間の配信って聞いてたんですけど、なんかしんどいなって感じて時計を見たら、まだ15分くらいしか経ってなくて。これが後45分も続くのかって感じたら、しんどくなってきちゃったんですよね……。やってて、楽しくなかったというか。
 コメントの返しの雰囲気とかも含めて、自分が楽しい空気を作れなかったのが悪いんですけど。

加藤:
 ちょっと前にも動画で募金【※】をしてたけど、あれは俺がやったらいやらしくなっちゃう。いやらしく感じないから感心したもん。

※募金
今年7月、アニメ制作会社の京都アニメーション放火殺人事件が発生。しかし、アニメを見ていただけの無関係な自分が、関係者に混ざって「ご冥福をお祈りします」などと発言することに違和感を感じ、追悼コメントを出さずにいたもこう氏。
しかし、動画に対する不謹慎なコメントを放置した結果、「もこう自身も同じことを思っているのか」という理不尽な批判が相次いだことで怒りを覚え、偽善者と言われようが、自分なりにできることをやろうと考え、99万円の募金を決行した。

──逆にもこうさんから見て、加藤さんのすごいところは?

もこう:
 僕がスゴいと思うのは、絶対にネガティブなことを言わないところ。自分でも言ってるじゃないですか、「配信中はあくびをしない」とか。
 それをここまで徹底できる人っていないんじゃないかな。まず加藤さん自身が一番ゲームに没頭しているから、ゲームを見てる人が、同じ目線で加藤さんの配信に没入してしまうんですよ。
 これはここ1〜2年で学んだ部分ですね。自分も実況をやる上で取り入れなきゃだめだなって。

加藤:
 8年も一緒にいたのに、そんな最近?(笑)

もこう:
 まあ8年一緒にいましたけど、去年くらいから仕事する機会が増えたじゃないですか。
 20〜30時間一緒にやっててもずっとテンションが変わらないし、ゲームの集中が途切れない。これは一緒にやらせてもらって学べたので、感謝してますね。

──ゲーム中にネガティブなことを言わない、テンションが変わらない。こういった部分は、昔からなんですか?

加藤:
 たぶん、昔からずっとそうですね。ゲームしながら、「今日のご飯はなんとかでさあ」って喋ってても集中できないじゃないですか。
 自分が見てる側のときもそうだったんです。自分の好きなもの、例えば野球を見てるときに、他の話題を話したり、他の映像が入ってくるのは好きじゃなかったから。
 基本的にゲームやってるときは、そのゲームに関することしか話さないですね。

──ゲーム実況者のファンが、実況者自身のファンで、その人の話すことであれば、ゲームに関係なくてもいいという需要もあるのでは。

加藤:
 そこに関しては、ニコ生で雑談の枠を取って話します。ニコ生ではけっこうヤバイ話もしてますよ(笑)。

もこう:
 それがなかなかできないんですよ。僕も、動画を見てくれている人に対して、自分の話を押し付けたいタイミングがたまに来るんですけど。やっぱり、ゲームに没頭できてないのかな……。

 でもそれだけじゃなくて、結局、加藤さんはひたすら喋ってるのもスゴいけど、その内容が単純に面白いんですよ。最近やってたパワプロの厳選配信でも、同じ作業をひたすら繰り返しているのに、しゃべる内容がどんどん変わっていくから。実況力がスゴいですね。

──実況力といえば、おふたりは喜怒哀楽を極めて強く表現しますよね。パワプロの例でいえば、初期キャラを厳選すると同じことの繰り返しになってしまうのに、常に新鮮なりアクションをし続けられる。
 疲れてきても、同じテンションで「おい!」って怒れるのって、メンタルのスタミナが無尽蔵に感じます。

加藤:
 なるほど。俺ら、演技じゃないよな。

もこう:
 何かが本当に欲しいってなってると、やっぱり感情が出ますよね。

加藤:
 いつも本気です。最近だと、マリオメーカーで負けると本気でパソコンをぶん殴りたくなる。男の子って、みんなありません? 遊んでるときに、ムキになっちゃう感覚。

──ありますね。大人になると失われていく感覚だからこそ、代わりに怒ってくれるのが、見てて気持ちいいという側面があるのかもしれません。
 例えば僕もパワプロが大好きなんですけど、やり続けたところで「あぁ……」みたいな反応しかできないと思うんですよ。

加藤:
 仕事を辞めて、皆さんよりもゲームをする時間が長いから、必然的に長時間の配信をすることになってるんですよ。
 20時間とか同じゲームをやり続けると、後には引けなくなるじゃないですか。「俺の20時間がぶっ壊れる!」みたいな気持ちもあると思いますね。今更やめられるかよ、みたいな。
 そこから、ひと試合ごとの気持ちの入り方が大きくなってくる。その積み重ねで、どんどんリアクションが大きくなってきたのかなって思いますね。

──ゲームをしながら撮影するときは1人なわけですよね。ずっと1人でマックスのテンションでいると、変な感じにならないんですか?

加藤:
 あります、あります。自分でも「あれ、おかしくなってるな」ってときもありますよ。あ、この間、もこうも“感情失禁”して泣いちゃったもんね。

もこう:
 あれはおかしくなってた(笑)。

加藤:
 自分がおかしくなって、なんかわけわかんないことを、べちゃくちゃ喋って。全然つまんないときでも、おもしろくなってくるよね?

──どんなタイミングだったんですか?

もこう:
 めちゃくちゃ難しい『ダークソウル』をやってたときなんですけど。
 全然クリアできずに、6〜7時間ずっと詰まってた後で、最後に加藤さんがパシッとクリアしてくれたのを見て、思わず感極まって……。自分がふがいない、悔しい気持ちがありましたね。

──ふたりのクリアするまで帰らない生放送、もこうさんがコメントで叩かれてましたよね。

もこう:
 ああ、そうでしたね。

加藤:
 でも俺は『SEKIRO』やったとき、感心したけどね。すごい量の「チュートリアル見ろ」「〇〇しろ」ってコメントが無数に流れてきたんですよ。でも、俺は絶対にコメントの通りにしてほしくなかったから、心の中で「絶対に読むなよ」って思ってて。
 50時間くらいかな、最後まで読まなかったんですよ(笑)。広報の人が来て、「こうやって読むといいですよ」って言ってたのに、読まなかったから。

 最後までコメントが荒れてたけど、自分のやり方を突き通したわけじゃん。あれはスゴいなって思った。ただ言うことを聞いてたら、ラジコンと同じなわけじゃん。

もこう:
 まあ、それは捉え方の問題ですね。俺はあのゲームをアクションだと捉えていたので、文字を読んだら負けかなと。

加藤:
 何言ってるのかちょっとよくわかんないけど、そういうこだわりがあったほうが良いよね。
 どんなに荒れたとしても。世界中の人から批判されても、決して曲げない姿勢は絶対に必要なんですよ。俺もそういうときがあるし。
 あ、もこうにもあるんだ、と思って見てたけど、50時間ずっと読まないとはね(笑)。

──ゲーム実況の配信では、視聴者とコミュニケーションすることでライブ感が高まることもあると思うのですが、あえて意見を聞かないのがいいということですか?

もこう:
 そのときは、すでに何回か視聴者のコメントを真に受けながらやってたけど、身が入らなかったから、その反省を活かしたのもありますね。
 あと、加藤さんが『ダークソウル2』やってたときに、同じような感じのことをやってたんですよ。毒の沼地みたいなところで、これを使えば簡単にいけるっていうコメントを無視し続けて。

加藤:
 そのとき、もこうが起きてきて、開口一番に「なんでコメント拾わないんですか?これで行けるらしいですよ」って言ってきて、俺がキレたんだよね。

もこう:
 「ずっと見てたけど、無視してたんだ」って言ってて、なるほどなって感心しましたね。

加藤:
 でもこれって俺たちだけじゃなくて、全人類にあることなんですよ。『ドラクエ6』で使わなくてもいいテリーを使うとか。
 皆さんも無駄にこだわりのあるキャラクターを使うことがあると思うんですよ。その程度のことなんです。でも、誰かに見られてるわけじゃないから、意識しないだけで。

──『ドラクエ5』でフローラを使ったほうがお金も貰えて覚える呪文も強いけど、ビアンカを使いたいとか。

加藤:
 そうそう。野球でも、合理的な勝ちだけを求める考えだったらソフトバンクを応援すればいいわけじゃないですか。でも、オリックスを応援してる人たちもいるわけで。
 ゲームやってたら、趣味嗜好が入るわけですよ。それを理解していない人たちが多い。もこうだって、『SEKIRO』のときは文字を読みたくなかったわけじゃん!

もこう:
 そうですね(笑)。

加藤:
 それは、すごいわかるの。だから何も言わなかったじゃん、俺。いいぞ!って思ってたから。

──以前、イベント出演の際に「自分に嘘をついたら終わりだ」と話していましたが、そういう気持ちだったんでしょうか。

もこう:
 そうですね。

加藤:
 あれはすごかったですよ。あんなにコメントが荒れてるのに、無視してやってんのすげえなと(笑)。「帰れ」って言われまくってたから。

──実況のスタイルとして、加藤さんは「ここ、どうするべき?」などとコメントを拾うイメージが強かったのですが、意外です。

加藤:
 そういうときもありますけど、うっとおしいと思ったらコメントを見てるふりしてるときもありますよ(笑)。

もこう:
 え、マジっすか!?

加藤:
 「ああ、そうなんだ」とか言って、拾ってるふりしながら、1〜2時間見ないときもある。

もこう:
 “エアコメ読み”してるんすか(笑)。これは初耳ですね。

加藤:
 見てる人たちはストレスなく進めてほしいから。気持ちはわかるんだけど、俺は俺がやりたいようにやっちゃう。そこに大きな差が生じたときは、ちょっと申し訳ないけど、消しながらやることもあるね。

 こっちの方が面白いと思ったら、何万人でも無視することもありますよ。コメントが止まったのかわからなくならないように、最初の1文字目だけ表示して。
 だってさ、もこうも同じだと思うけど、あれだけたくさんの人に見ていただいて、全部の意見は聞けないわけじゃん。

もこう:
 それはそうですね。

加藤:
 もちろん、仲良くするときはめっちゃ仲良くしますけどね。
 なんというか、攻略本を見て、答えの決まってるレールにずっと乗っかっていくのって、面白くないと思うんです。
 生配信に関しては、自分がこうなったら面白いはずって方向に進むのが一番面白いと思います。

もこう:
 僕も理想の配信像を思い描くけど、そのとおりにならないことが多いかな。

──もこうさんにとっての理想像とは?

もこう:
 最後、思いっきり盛り上がって、ピークのところで終わる感じですかね。
 最近だと、最終的に視聴者とケンカして、後味悪い感じで終わっちゃうことが多かったけど。

加藤:
 それはそれで面白いじゃん。

もこう:
 毎回、別の意味では盛り上がるんですけど……。でも、本当はゲームで盛り上がりたいんですよと。
 例えば、「24連勝するまで終わりません」って『ぷよぷよ』をやってるときに、19連勝とかいいところまでいって、結局は達成できずに、無理やりオチをつけて終わらせるって感じになっちゃったりして。

 それでも面白がってくれる視聴者もいますけど、やっぱり「最後までやれよ」って言われるので。もちろん僕もそうしたかったけど、音を上げちゃったんですよね。
 そういう意味では、加藤さんの「金ダツラ」【※】が全クリまで行ったのは、びっくりしましたね。僕も見てたんですけど、2年は無理なんじゃないかって思ってました。

※金ダツラ
ダツラとは、『ポケットモンスターエメラルド』で登場する、バトルファクトリーという施設のボスキャラクターの名称である。
この施設では、自身の育てたポケモンではなく、ランダムで変化するレンタルのポケモンで戦う形式で相手もランダムで決まるため、運の要素が非常に高いシチュエーションとなっている。24戦目、48戦目でダツラが登場し、前者を倒すと銀のシンボル、後者では金のシンボルをもらえる。
つまり「金ダツラ」とは、倒すと金のシンボルをもらえる48戦目のダツラの通称であり、実質的に『ポケットモンスターエメラルド』のバトルファクトリーで48連勝をすることを意味する。
加藤氏が金ダツラに挑んだ下記の配信では、同時接続者数7.8万人という驚異的な数字を記録。世界の配信ランキングでトップとなり、2200万人超えの登録者数を誇る実況者・Ninjaの配信をも上回った伝説の配信となった。

──加藤さんと一緒に配信をして、「テンションについていけない」と感じたことはありますか?

もこう:
 5年くらい前に初代ポケモンを同時に進めて対決していく企画をやったんですよ。あれが最初に一緒に長時間やった企画だったと思うんですけど。
 6〜7時間なのに、ぜんぜんノリについていけなかったです。正直、しんどかった(笑)。

加藤:
 最近も、もこうと一緒にやると、最初の15分くらいは張り切ってるけど、その後は一段落するよね。「よし、仕事したな」みたいな(笑)。
 ペース配分なんだろうけど、後半の方は意識がなかったりすし。

もこう:
 意識ないですね。だから、加藤さんのテンションのスタミナが異常なんですよ。

──そのスタミナは昔から持っていたんですか?

加藤:
 いや、ゲーム実況を始めてからじゃないかな。だって、学生時代、会社員時代は徹夜もできなかったし、やっぱり配信が好きなのかもしれない。
 麻雀好きな人が、気づいたら寝ずに丸二日打っちゃったっていう感覚に近いんじゃないですかね。

──では、仮に配信せずにゲームをするなら、そんなにスタミナが持たないのでしょうか。

加藤:
 配信しなかったら、すぐ飽きるでしょうね。配信して、見てくれる人がいて、リアクションがあるのが楽しいんだと思います。

──配信していて、一番アドレナリンが出るのはどんな瞬間ですか?

加藤:
 一応、10年やってきたので、こんな内容だったらこのくらいの反響かなという想定はできるんですよ。でも、皆さんの反応が予想を大幅に超えてくる瞬間があって、そういうときは脳から変な汁が出ますね。

 今年もあったんですよ。いつも3万人くらいの方が見てくれるんですけど、ある日突然7万人くらい、ドカンと来たときがあって。
 今までにない幸福感があったので、死ぬ前にもう一度味わいたいって思いますね。

──それはどんな企画だったんですか?

加藤:
 ポケモンで、ストーリーとは別のサブイベントがあって。6匹の中から3匹選んで連勝していくモードがあるんですよ。
 41連勝したら42戦目でボスが現れるので、それを倒すっていう生配信をしてたんですけど、ずーっと勝てなかったんです。

もこう:
 あれは毎回見てましたけど、向こう2年は終わらないだろうなって思ってましたよ。見てる人たちもみんなそう思ってたところを超えていく、そのライブ感が半端なかったですね。

加藤:
 やっぱりハードルは高ければ高いほうがいいっすね。その方がやってて楽しい。ハードルの高さは自分の物差しでよくて、世界初の挑戦をしたいわけじゃないんですよ。

もこう:
 最後、スターミーのれいとうビームでバンギラスが凍ったじゃないですか。あの瞬間、どんな感じだったんですか?

加藤:
 これ、凍ったら神回だなって思ってた(笑)。でも、予感はあったの。今までさんざん失敗してきてたから、凍るんじゃないかとは思ってた。
 ああいうときって、なにやってもうまくいくじゃん。

もこう:
 わかります。そういうとき、ありますよね。

加藤:
 人生でたまにあるじゃん、そういう時。
 凍れ、凍れって思ってたら、本当に凍ったから。たまたま10%の状態異常を引いて、無理やり勝ったシーンだったんですけど。マジで脳みそがとろけた、あの瞬間。終わった後も、しばらくパソコンの前で動けなくて。
 あの後、1週間くらいずっと機嫌よかったもん(笑)。もこうにも味わってほしいわ。

──もこうさんも、「何をやってもうまくいく」という感覚を味わったことがあるんですね。

もこう:
 「動画が調子いい」って感じる波がたまにあって、今年の4月〜5月くらいにもあったんですよ。それこそ、加藤さんが言う想像を超える反響が一回ありましたね。
 すごい昔のゲームをやって、ほぼノーカットで適当に話してる動画を上げたら、めっちゃ伸びたんですよ。そのときは、脳汁が出たというか。

 ニコ動時代からそうなんですけど、数字を見てるのが大好きで、毎時ランキングをずっと見てるのが楽しいんです。

加藤:
 やっぱり、みんなそうだよね。

もこう:
 荒れた動画でも、初動の24時間はどんな感じで伸びてるのか、とか。逆に、今回は伸びなかったか……って一喜一憂してるのが楽しいから。
 ニコ動でもYouTubeでも、それが一番楽しいんですよね。


動画と配信の違いと、編集することで失われるライブ感

──加藤さんは配信でもこうさんは主に動画と、実況のスタイルは異なりますが、配信と動画でなにか違いはあるのでしょうか。

加藤:
 僕はもう生配信しかやってないので、もこうの方が詳しいんじゃないですかね。

もこう:
 僕のYouTubeチャンネルでは、生配信の面白くなったところを切り抜いてアップしてるだけなので、どうなんですかね……。
 最近は、編集で自分なりに見やすくしているし、面白いのが撮れるまでは頑張ろうと思ってるんですが、ほぼ毎日アップするために惰性になってる部分もありますね。

 ただ、やってて思うのは、生配信の面白さのピークみたいなタイミングに比べると、動画はなかなか難しいというか。

加藤:
 そうだよね。生配信で盛り上がってる雰囲気って、「研磨されてない真実」って感じがするじゃん。
 ずっと見てたらつまらない、無言の時間もあって、そこからだんだん盛り上がっていって、最後にドーン!みたいなライブ感。
 動画って、いくらでも嘘をつけるから、俺はそれがしんどいんですよ。「はい、どーも!」みたいなオープニングを何回も取り直したりしてさ(笑)。

もこう:
 めっちゃやりますね(笑)。

加藤:
 あれが自分的にどうも嘘臭くてイヤなの。「はい、どーも」なんて俺、言わないもん。
 でも、それをやらないで動画を上げたらふてくされてる感じもあるでしょ? お決まりの文句があればいいけどさ。

もこう:
 そうなんですよ。毎回、ちょっとひねったことを言おうとしたら噛むし。それもまたけっこうしんどい。

加藤:
 そこでYouTuberの人たちがよくやるのは、間を全部カットしていくジェットカット【※】。余分なところは全部排除して、ギュッと煮詰めて出すのが主流ですよね。無駄があっていいじゃんっていう、生配信とは真逆の感じ。

※ジェットカット
YouTuberが使うことの多い動画の編集方法。「えーと」「あの…」などの不必要な言葉や、言葉の間を埋めるように細かいカットを繰り返す手法。

もこう:
 時間が無いなかで、端的に見れるのを求める人が多いということで、ジェットカットに行き着くというか。内容が薄くなっても、見やすさを重視するって考えもありますね。

──ジェットカットの動画について、どう感じますか? マックスのテンションは、生配信の方が高いとのことでしたが。

もこう:
 作られた感はあるけど、やっぱり見やすいと思いますね。
 ただ、カットしないことでよりテンションの高さが伝わった経験もあって、「【バトレボ実況】第三十七回 厨ポケ狩り講座!-降参潰しのパラセクト-」を撮ってたとき、テンションも最高潮でめちゃくちゃいい感じに撮れたので、カットしない方が面白いと思って、そのまま上げたんですよ。そしたらものすごい反響がきたのを覚えてますね。

──変にカットしない方が、面白さが伝わると。

もこう:
 そうかもしれないですね。YouTubeに進出したての頃は字幕も付けるべきなんだろうと思ってたけど、最近は意味がない無駄な装飾はしない方がいいんじゃないかと感じていて。
 ほんの少しカットするだけが一番見やすいし、その方が数字も伸びたんですよ。

──面白い部分を凝縮するために編集するわけですが、お話を聞いていると、おふたりは動画を編集することで何かが失われるという感覚があるようです。

加藤:
 それはありますね。例えば、僕はゲームを始めるときに、インストールするところから配信を始めるんですよ。

 なぜかというと、小さい頃にゲームを買ってもらって、車に乗って帰るまでの間に感じた「うわー早くやりてえ!」ってワクワク感があったじゃないですか。あの感じを出したいんです。それでつまんなかったときのダメージが計り知れないんですけど(笑)。
 楽しみにして超長いインストールも待ったのに、超つまんなかったら、それはそれで面白いし。だから1時間くらい始まらないときもありますね。

もこう:
 『スパイダーマン』はダウンロードに3時間くらいかかってましたよね(笑)。

加藤:
 インストールに時間がかかるから、別のゲームをやったり、説明書を読んじゃうとか。賛否両論あるんですけど、一体感を出すうえで大事だと思っていますね。

──加藤さんにとって、一体感の演出として、視聴者と目線を合わせるのが重要なんですね。

加藤:
 それは大事ですね。

──加藤さんにとって初めてのゲームでも、視聴者がプレイ済みの場合、視点がズレている。でも、感情移入していくことによって、徐々に目線が合っていく。
 動画と生配信の違いは、そういったところにあるのかもしれません。

加藤:
 まあ、確かに動画じゃ考えられないですからね。インストールする時間を待つなんて。みんなも「早く始まれ」って思って待ってるわけですからね。
 特に新しいゲームをやるときは、その待ってる時間で「このゲーム、あんまり面白くないよ」「いや、そんなことない」「あっちのゲームが面白い」とか、意見交換もできたりして。

 あとはなんだろう。もちろん大団円を目指すんですけど、その道中では、コメントがぐちゃぐちゃに荒れる地獄のような時間も欲しいんですよね。
 どれだけ荒れようが、最後は丸く収まってれば、楽しかったねって感じ、よくあるじゃないですか。それこそ、荒れに荒れて、広報の人も冷や汗をかいちゃうような。

──(笑)。

加藤:
 雨降って地固まる感じで、最後はみんなで協力して勝つ、みたいな。その方が好みなので、あえてこれをやったらみんなが怒るんじゃないかってことをやるときもあります。

──インストールの時間を共有するなど、あえてストレスをかけるという考え方は面白いですね。昨今の主流は、視聴者の負荷を取り除いて、快適に見れるように編集する人が多いわけですから。

加藤:
 ゼロから100じゃなくて、マイナス100から100の振れ幅があったほうが、絶対に面白いじゃないですか。生配信では特にそう。
 他の実況者は20〜80くらいの間で収めようとしてるけど、俺の場合、ひどいときはマイナス500くらいまで行っちゃうんで。そこからは、ゼロに戻っただけで相当盛り上がるんですよ。

──盛り上がった部分だけを凝縮して編集すると、その幅が出ないと。とはいえ、下がりすぎて、フォロワーが離れるなどの弊害は無いんですか?

加藤:
 いや、無いと思いますよ。コメントでは「もう見ない」とか書くかもしれないけど、プレイ内容いかんで見なくなる人が存在するのかな。

──視聴者への信頼がアツいですね。

もこう:
 いや〜、でもそこを恐れる実況者は多いと思いますけどね。やっぱり、荒れてほしくないし。

加藤:
 もこうは俺よりひどいときあるじゃん。暴言を吐いて、荒れて、謝罪するまでがセット。次はどんなふうに謝るのかなって考えてる人もいるんだよ、たぶん。それって、マイナスからゼロ、プラスへの幅を使ってるってことだから。

──加藤さんの言う“振れ幅”を図らずも体現していたわけですね。

加藤:
 そうそう。もこうも意外とちゃんとやってるの。

もこう:
 そんな意識はなかったですけどね。荒れてるときは、普通に焦ってるし。

──とはいえ、コメントが荒れた結果、脅しにも似たコメントが来たり、最悪の場合はなんらかの危害が加えられる可能性もあると思うのですが。

加藤:
 いうて、みんなにもちゃんと生活があって、なんだかんだ、わきまえてコメントしてるので。そういう信頼感はありますね。

──ストレスのかけ方に始まって、視聴者への信頼がすごいです。

加藤:
 みんな意外とちゃんとしてるので、ギリギリアウトくらいのことしか言わないんですよ。
 大抵は白線の内側でやいのやいの言ってて、ほんのたま〜に越えちゃう奴もいるけど、謝れば許してもらえるレベルのことしか起こらないんです。僕の信条で、謝ったら許すってルールでやってるので。

 結局、今まで嫌がらせされたことがないんですよ。住所まで公開してるけど、なんだかんだ、一回もない。

もこう:
 それ、マジですごいですよね。住所がバレた後も同じところに住んでたじゃないですか。僕、何回かバレて、いたずらされたことありますもん。

加藤:
 え、どんないたずらされたの?

もこう:
 そんな派手なことはないですけど。ポストに服を入れられたり。

加藤:
 これを着ろよって? それ、いたずらっていうより、ちょっと好意があるじゃん(笑)。

──それを聞いても、特に気持ちは変わらないですか?

加藤:
 まあ、服が入ってても、捨てて終わりですね。もちろん、若い女の子とかだったら、俺と同じことはしないほうがいいですよ。あ、もちろん34歳のおっさんにも、いたずらしないでくださいね。これ、太字にしといてください。

 俺、最近思うんだけどさ、YouTubeを張り付いて見てる人に、イケてる人は少なくない?
 「この後はパーティーだから、時間ないわ〜」って人、ほぼいないでしょ。1〜2時間、動画を見る暇くらいあるんじゃないの?
 俺はそう思って、30時間ぶっ続けで生配信やったりしてる。

──Webサイトの編集記事でも同じことが起こっていて、「短くしないと読まれない」と強く主張する人もいるんですが、実際は3万字でも読まれる記事は読まれるし、結局のところ内容によるんですよね。

加藤:
 ああ、つまんなかったら1行でも読みたくないですもんね。まあ、短くするのが主流になってるから、長時間やるライバルが少ないっていうのもありますけどね。

もこう:
 っていうか、まず誰もそんな長くできないんですよ(笑)。何十時間も喋り続けてあのクオリティを維持するのは無理ですね。

見た人の感情が動けば、その方向は100でもマイナス100でもいい

──ここまで動画と生配信の違いについて語ってきましたが、視聴者たちはご自身の企画のどんな部分を楽しんでいると感じていますか?

もこう:
 僕の場合は、「パチンコみたいに、たまに面白い瞬間があるから毎回見ちゃう」って言ってもらうことが多いです。
 あとは何だろう。ゲームの悪口にどこかで共感してくれるから、見れる人もいるんですかね……。

加藤:
 もこうの場合は、人間性だよ。本当に、人間性の一本勝負。今回は何をやらかすのかって楽しみにして。
 だってさ、暴言吐いてコメントが荒れて、謝罪動画を上げて金儲けするまでがセットじゃん(笑)。

もこう:
 まあ……。確かに、何かをやらかすのを期待してくれてる人が多いのかなって気はしますね。

加藤:
 俺の場合は、ゲームをやっているのを同じタイミングで見て、文句言ったり称賛したりっていうのを楽しんでると思いますね。僕の発言を楽しみにしてるとかじゃなくて。

──確かに、アイドル的存在が生配信で、時間を共有したい欲求とは違う感じがしますね。

加藤:
 ただ、プレイするたびにちゃんとしようと思っていることはあります。
 例えば、俺らみたいなもんが、有名なメーカーの新作をプレイできるのって、要は祭りじゃないですか。
 その手の配信の時に必ず冒頭で言うのが、「毎日いろいろあると思いますけど、仕事とか面倒なことは全部忘れて、楽しみましょう」って感じで始めるんですよ。

 我々が楽しんでるから、「みんなもせっかくのお祭りだからちょっと見てね」っていうスタンスで。
 だから何十時間ぶっ続けだとして、つまんなそうにやってる時間は作らない。それこそ、夜勤上がりで夜の3時から見る人だっているじゃないですか。その時に死にかけでやってたら、すごく損させた気分になっちゃうから。
 寿命を減らしてでもいいから、辛い時間もなんとか気を振り絞ってやってます。

──それって、いったい何が加藤さんをそこまでさせるんでしょうか?

加藤:
 いや、なんというか、俺のことを嫌いでもいいんですよ。見た人の感情が動けば、その方向が100でもマイナス100でもいいというか。
 低評価でも高評価でもよくて、感情が動けば、絶対に見てくれるじゃないですか。

──ゲームクリエイターのヨコオタロウさんも同じようなことを話していますね。気持ちいい変化であれば嬉しいけれど、気持ち悪いとかお腹が痛いとか、マイナスでもいいから、なにかしらのお客さんの感情に変化を起こしたいと。

加藤:
 同じだと思います。俺、すっごく嫌いなYouTuberがいるんですけど、毎日見てるんですよ。嫌いすぎて、毎日見てるの。

もこう:
 毎日ですか(笑)。

加藤:
 「お前の声は不快、死ね」とかよく書かれるんですけど、俺にとっては褒め言葉。ちゃんと聞いてくれるんだなって思うから。
 同意してくれる人だけ相手にしたら、取りこぼすってことじゃないですか。それがもったいない。嫌いでもいいから、俺の配信を見てほしい。

 今、配信をすると、ありがたいことにたくさんの方が集まってくれるんですけど、この部分が大きいと思うんです。
 他の実況者たちが生配信をやると、10000〜15000人くらい集まることが多いと思うんですけど、それって、自分のことを好きな人たちだけが集まっている。

 俺の場合は、俺のことを嫌いな人も見てくれているぶん、それより少し多く集まってくれていると思うんです。他に比べて、俺の配信ってコメントが異常なくらい荒れてるけど、それは別にいいというか。
 もう、つまんなくてもいいから見てください。あなたたちの事情は知ったこっちゃないんで(笑)。

──そうやって視聴者を増やしていった先の目標はあるんですか?

加藤:
 ずっと目標にしてるのは、同時接続10万人。たぶん、わけわかんないことになると思うんですよ(笑)。
 それだけいたら、変なやつも、俺のこと超嫌いなやつもコメントしてくれて、めちゃくちゃになって。その真ん中にいたいって気持ちがありますね。

ゲーム実況の演出にあたって、映画からパクることが多い

──ところで……。お二人はアウトプットとしてはゲーム実況という形をとっていますが、インプットでは、これまでどんなカルチャーに影響を受けてきたのでしょうか。
 ゲームに加えて、映画や音楽、演劇やお笑いなども含めて。

加藤:
 あ、そのあたりは一通り興味ありますね。

──加藤さんは、お笑い芸人のイシバシハザマのラジオに出演するなど、お笑いへの興味も強そうです。

加藤:
 お笑い、大好きですよ。サンドウィッチマンのコントを延々と見ますし。
 昔はライブもいろいろ見に行ってて、ハリウッドザコシショウが売れてない時代のライブも行ってました。その頃、ぜんっぜん面白くなかったけど、めちゃくちゃするなって思ってた(笑)。
 あ、思い出した。当時付き合ってた彼女と見に行ったんだ。パクったこともありますよ、誇張しすぎるモノマネとか。

 面白い人から影響をウケちゃいますね。ドキュメンタリー番組も好きだし、映画もけっこう見に行くし、旅行も好きだし。考えてみると、ちょこちょこ趣味はあります。

──ゲーム実況に何らかの形で影響しているのでしょうか。

加藤:
 考えてみると、いろいろパクってますね。映画からパクることが多いんですよ。こんな結末にしたいなってイメージを。
 例えばなんだろう。『君の名は』みたいな感じを出して、終わりたいなって思ったり。

──過去に、そうやって終わらせた企画はあったんですか?

加藤:
 ありましたね。なんの映画に影響されたのかは覚えてないんですけど……。
 『ドラゴンクエストモンスターズ』を、一回死んだら逃がすって縛りでやったことがあったんですね。だけど、全然人気がないドルイドってキャラクターが大好きだったので、そいつだけ逃さずに冷凍保存させてくれってことにして。

 全クリし終わった後でそいつを解凍して、他のドルイドをかけ合わせて。これは実は僕のお父さんとお母さんで、最終的に純一って名前のドルイドが生まれました……って感じで終わらせたっていう。
 SFっぽい感じにして、この実況は、実は回想録だったんです、みたいな(笑)。

──視聴者に、その意図は伝わっていたんですか?

加藤:
 いや、普通にキモがってましたね。まあでも、好きだからやっちゃう。クリエイターになりたい願望が出てるのかもしれないですね(笑)。

──ここまで聞いてきたような工夫をしながらゲームをプレイすることで、多くの視聴者を楽しませている点では、十分クリエイターといえるように思えるのですが。

加藤:
 うーん、まあ俺らはやっぱりゲームありきなので。のっかって遊ばせてもらってる感じですよ。

──同時接続で約8万人を集めて熱狂させている時点で、類まれなパフォーマーであることは間違いないと思います。

加藤:
 いや、やっぱりゲームの力がでかいと思いますね。あれだけ面白いゲームを作ってくれたら、そりゃあみんな見に来るよっていう感覚。
 これは本当に謙遜じゃなくて、やっぱりゲームありきだと思います。もこうさんはどうですか。

もこう:
 ゼロから生み出してこそクリエイターだと思うので、何かを作ってるという意識はないですよね。

加藤:
 『SEKIRO』広報の北尾さんから制作秘話を聞かせてもらったけどさ、口が裂けても自分がクリエイターだとは言えないよね。こだわり方も尋常じゃないだろうし。同じフィールドに立ちたくないよな?

もこう:
 うん。立てないですね。

──でもお二人とも、そういったゲームの尋常じゃないこだわりの部分や面白さを、多くの人に紹介している立場ではありますよね。

加藤:
 そういう存在になれたらいいな、とは思いますね。このゲーム、こんなに面白いんだよなって伝えて、みんなも買って楽しめるのが理想の形。

──先程から「クリエイター」という言葉を出したのには理由がありまして。結局のところ、相手の感情を動かすことこそがクリエイターの役割だと思うんです。
 そう考えると、近年YouTuberが台頭している理由として、Youtuberが視聴者の感情を動かすという機能を担っている部分が大きい。そしてそれは、十分にクリエイターといえる存在なんだろうなと思うんです。

加藤:
 まあでも、結局は我々もメディアで情報を得ておいて、何食わぬ顔して、俺が見つけてきた感を出してゲームをやったりするわけですから(笑)。

もこう:
 でも、加藤さんは何度もブームを生み出してる気がしますけどね。それこそ、「金ネジキ【※】」とか、加藤さんがやり始めてからまたみんなが注目するようになって。
 あの企画の後、ポケモンのハートゴールドが中古で全然買えないんですよ。

※金ネジキ
『ポケットモンスタープラチナ・ハートゴールド・ソウルシルバー』作中の施設・バトルファクトリーのラスボスキャラの名称がネジキ。
前述の「金ダツラ」と同様に、レンタルしたポケモンでバトルを繰り返し、21戦目と49戦目に登場するネジキのうち、後者を倒すと金のシンボルをもらえる。そのため、49戦目に登場するネジキの通称が「金ネジキ」となっている。
ちなみに、加藤氏が2018年に「絶対に負けられないポケットモンスター金ネジキ」を配信した後、多くの実況者たちが金ネジキに挑戦するという現象が起きた。

加藤:
 ああ、そうなんだ。それこそ、『シャドウバース』はもこうが流行らせたんじゃないの。
 もちろん実況やってた人はいただろうけど、YouTubeで、『シャドバ』でドカーンと伸びてたじゃん。あの頃、調子乗ってたもん(笑)。

もこう:
 いや、調子に乗ってないですよ(笑)。自分のYouTubeチャンネルが伸びたのはシャドウバースのおかげなので、シャドバ動画を上げてなんぼって感じではありました。

加藤:
 調子乗ってたっていうのは冗談だけどさ、お互い、視聴者が増えた時期が遅めだったから助かったよね。若い頃だったら、絶対にもっと調子に乗ってたと思うわ。
 YouTubeを始めたのが30歳超えてたので、あんまり調子に乗りようがないっていうか(笑)。

もこう:
 そうですよね。20歳で視聴者増えてたら、たぶん就職してないですね。

加藤:
 もっと嫌な人間になってたよね。もこうもさ、すっごい貧乏なときから知ってて、今は金持ちだろうけど、全然変わらないし。
 だって、今日のこの格好見てくださいよ。全然調子に乗ってないでしょ(笑)。

もこう:
 一応、衣装なんですけど……。

──おふたりとも謙遜をしていますが、これだけ実況を続けてきたんだという自負、誇りなどはやっぱりあるのでしょうか?

加藤:
 めちゃくちゃあります。この前スクウェア・エニックスに行った時に思ったんですよ。ゲーム実況をやってなかったら、ここに来ることはなかったんだろうなって。
 この会社は俺が小さい頃、アホみたいにやりまくってたゲームを作った会社なんだって思ったら、貴重な経験なんだ、当たり前だと思ったらダメだなと。

 もちろん運が良かったとは思うんですけど、いろんなことに対して「当たり前じゃないんだよ」って気持ちでいるようにはしています。

もこう:
 普通じゃ経験できないことをさせてもらってますよね。

加藤:
 だってさ、もこうもひたすらコピー機を直す生活をしてたわけじゃん。

もこう:
 コピー機を直してたんじゃなくて、プリントした紙のバーコードがちゃんと認識されるか、8時間確認し続ける仕事をしてましたね。
 あれを続けてたら、株式会社ポケモンの公式番組に出させてもらうこともなかったです。

加藤:
 あれは、俺まで誇らしく思った。

──NHKの番組「沼にハマってきいてみた」(Eテレ)に有名ゲーム実況者として出演することもなかったわけですよね。

もこう:
 あれはめちゃくちゃ緊張しましたね(笑)。番組の冒頭で噛み倒して。

加藤:
 俺、仕事の前にずっと見てた。わざとやってるのかと思ったわ。最初の挨拶で「ここここここ……」ってなってたから、かましたのかって。
 うわ、やりやがったと思ったら、ちがったのか(笑)。あれは面白かった。

50歳になってもコントローラーを放り投げてたら面白い

──2015年にもこうさんをインタビューした際は、まだ公式に認められたゲーム実況は少ないグレーゾーンなカルチャーだったので「このまま線香花火みたいに燃え尽きると思う」と語っていましたが、あれ以降状況はかなり変わりましたよね。ここ数年の変化について、どのように感じていますか?

もこう:
 確かに変わりましたね。

加藤:
 答えはありますよ。俺らがゴキブリだからだよ。

もこう:
 ……確かに、ゴキブリですね。

加藤:
 俺たち、すっごい生命力が強いんですよ。今、YouTubeであんまり調子よくないでしょ?

もこう:
 まあ、一時に比べたらそうですね。

加藤:
 でも、この後に必ず何かしらで当てるんですよ。それで調子がよくなって。
 これは悪口じゃなくて、感心するんだけど、もこうしかやってないゲームがけっこうあって、ちゃんと伸びなくなるまでやり続けるよね。

もこう:
 少し前はポケモンのレトロゲームをやったりしてました。ポケモンピンボールの動画が予想に反してめっちゃ伸びたので、ちょいちょい昔のゲームをやることもあります。

加藤:
 それで、味がしなくなるまで同じゲームをやり続けるの、偉いと思うわ。アメリカのドラマみたいでスゴい。視聴者が飽きるまで、シーズン8くらいまでやってから終わるドラマみたいな。

もこう:
 ピンボールもシーズン8までやりましたよ(笑)。

加藤:
 それで終わった後は、スッと次のメインコンテンツを探すんだよな。で、必ず何かしらで当てるんですよ。それを10年繰り返してきてる。生命力が強い。

もこう:
 いやでも、その繰り返しはしんどいっすよ。やめたいんですよ。ただ、続ける以上は何かしら踏ん張ろうって意識はあるので。
 ある意味では、すべるのを恐れずに、普通だったらお蔵入りにするような動画もどんどん上げていって、当たるまで繰り返すっていう。

加藤:
 動画のゴキブリがもこうなら、俺は生配信のゴキブリ。しぶといんですよ。やっぱり調子悪いなって時期もあるけど、なんとかやってきたんで。

──全力で喜怒哀楽を表現する実況のスタイルで、いつまでやり続けるのでしょうか。それこそ、おじいさんになってもゲームにキレてたらめっちゃ面白いと思います。

加藤:
 確かにそうなってたら面白いですよね。どうせなら60歳なのに日焼けして痛い感じで若ぶってるみたいな。
 でも、生配信を楽しむ気持ちが萎えちゃったら、相当大変だとは思います。批判されることを恐れるようになったりしたら、また病院で働くしかないかなっていう。

もこう:
 気持ちの問題っていうのはわかります。今はまだ続けたいですよね。

加藤:
 リアルな話をすると、40歳くらいまでは今のまま頑張っていたいなって気持ちで。
 25歳のとき、「30歳になったらやめる」って言ってたのに、もう34歳までやってるので、もしかしたらまた続けるのかもしれないですけど。

もこう:
 僕も、楽しいと思える限りは続けるでしょうね。
 なんだかんだで、最初の動画を上げたときから今まで、モチベーションは変わってないんですよ。どれだけ再生数が伸びるか、コメントが来るのかを楽しみにするっていう。
 そのために神回を作りたいとか、ここで盛り上がったらいいなって思ってプレイして。その気持が変わらない限りは動画を上げ続けるだろうなって感じです。

加藤:
 まあでも、もこうが50歳になってもコントローラーを放り投げてたら、それはそれで面白いよな(笑)。

──それはめちゃくちゃ面白いと思います!

加藤:
 じゃあさ、ふたりで老害になろうよ。「俺たち、昔は人気があったのにな」って言い合ってさ(笑)。

もこう:
 その頃の再生回数は200とかかもしれないですけどね(笑)。(了)


 マイナスの目盛りまでを使って、振れ幅を大きくする。編集することで、失われる体験がある。
 ゲーム実況というジャンルにとどまらない、いわばクリエイティブ論に通ずるエピソードもたくさん聞けたが、結局のところ、物事に取り組む際の姿勢が重要なのである。

 ニコニコ動画からYouTubeへ。そして、動画から生配信へ。
 プラットフォームや視聴者に体験を届ける手段は変わっても、根っこにあるのは、心からゲームを楽しむ姿勢である。きれいごとに感じる人もいるだろうが、これがインタビュー終了時点で感じた、率直な感想だ。

 生配信で声を荒げながら喜怒哀楽を表す加藤氏に、対人戦で負けると悔しさから本気でコントローラーを投げ出すもこう氏。「ゲームをどれだけ上手くプレイできるのかという競技」では、必ずしも強者とはいえない。
 しかし、「ゲームをどれだけ本気でプレイできるか」という競技があるなら、間違いなく世界屈指の強者といえるふたりなのだろう。

 その本気のふたりを通してゲームを追体験したい人もいれば、その感情の振れ幅そのものを楽しむ人、実況者をパーソナリティとして消費する人や、多くの視聴者が集まっている場所に居合わせたい人まで……。
 ゲーム実況を見るにあたっては、様々な動機がある。

 特に印象に残ったのは、加藤氏がゲーム実況の生配信を「祭り」だと例えたことだった。彼の生配信では、有名タイトルをプレイする企画が多い。
 新作のPRを除き、既プレイの視聴者も多いはずだが、それでもついつい見に来てしまう。それは、「加藤氏がどんなふうにゲームを楽しむのか」を楽しみにしているということ。プレイ中に選択肢が発生した時には、面白くなりそうな方を選ぶ。分が悪い賭けをし続ける彼が、奇跡を起こす瞬間を、視聴者は心待ちにしているのだ。

 それをリアルタイムで視聴する体験と、アーカイブされた動画を見る体験は、まったく違うものになる。世間で音楽好き同士が「Rage Against the Machineが出た年のフジロック・フェスティバルに行った?」と話すのと同様に、「加藤純一の金ダツラ見た?」「もこうがプロ初勝利を上げた瞬間、見た?」というライブ感覚が市民権を得ていく。
 そんな時代が到来しつつあるのかもしれない。

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取材・文
森ユースケ
毎日ウルトラ怪獣Tシャツを着ているフリー編集・ライター。インドネシアの新聞社、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。意外なテーマをかけ合わせた企画とインタビューが得意。守備範囲は政治・社会からアイドル、スポーツ、お笑いなどエンタメまで。30歳を超えてなお、相変わらず「マリオ」「ドラクエ」「パワプロ」「スパロボ」「ロックマン」の最新作をプレイしている現状に、20年前から精神年齢がまったく変わっていないことを痛感している。
取材・編集
TAITAI
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。
元々は、ゲーム情報サイト「 4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「 ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「 ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter: @TAITAI999

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