わが家のアイドルは秋田犬。ペットファーストでリビングも客間も消失して

11月30日(月)12時0分 婦人公論.jp


イラスト:タムラサチコ

わかってはいるけれど、言い訳ばかりして先延ばし。その積み重ねで、いつしか家にはモノがあふれ返り……(「読者体験手記」より)

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飼い始めてから見つかった病気


スーパーとドラッグストアに買い物に出かけ、右腕に1つ、左腕に2つ、肉にくいこむほど重いビニール袋を提げて帰る。なんとか玄関のドアを開けると、そこにはちぎれんばかりに尻尾を振り、私の帰宅を喜ぶ愛犬の姿。

夫や2人の子どもたちが、私が帰っても「おかえり」のひと言も言わなくなって、どれくらいになるだろう。家族で唯一、私の帰りを待ちわびてくれている犬の出迎えにしばし酔いしれた後、玄関からリビングへと続く廊下に散乱するモノたちが目に飛び込んでくる。

押すとブーブー鳴るゴム製のブタの人形、大きさの異なる4つのボール、歯形がついてボロボロになったフリスビー、骨の形をしたおもちゃ……。

キッチンで使っている手拭きタオルまで落ちている。

「また、やっちゃったねー」とつぶやきながら、買ったものをリビングに運び込むと、私はもう一度玄関まで戻って、転がっているあれこれを一つずつ回収する。そして、おもちゃはおもちゃ箱へ、床に落ちていたタオルは洗濯機へ。これが、外出から戻ってからの私の習慣である。

愛犬は、5歳になるメスの秋田犬だ。名前は「もも」という。朝と夜の散歩のときにトイレを済ませる犬が多いが、生後4ヵ月で我が家にやってきたももは、いくら教えても散歩までトイレが我慢できず、家の中でおしっこをしてしまう問題児だった。「お手」や「お座り」「待て」などは数回教えればすんなり覚えたのに、トイレだけ覚えられないのはおかしい、と病院に連れて行ったところ、膀胱に病気が見つかった。お医者さんによると、病気のために、長い時間トイレを我慢できないようだ。

病気であれば、仕方がない。しかし、今のまま家の至るところで粗相をされては困る。かといって、まだ幼いももにオムツをつけっぱなしにするのもかわいそうだ。そこで、玄関とリビング、キッチンの隅に犬用のトイレシートを置き、シート以外の場所でトイレをしないように教えることにした。ももはたった2日で室内でのトイレのルールを覚え、私たちに快適な日々が戻ってきたはずだった。

もものためなら「仕方がない」


ところが、である。生後6ヵ月ほどに成長したももが使う犬用トイレシートとなると、約90×70センチと結構大きい。小さめのレジャーシートくらいのサイズがある。そんなものが、3ヵ所を占拠するのだ。家がぐっと狭くなったように感じられる。なにより、見た目が美しくない。掃除機をかけるときにも邪魔になる。

そのうえ、ももが落ち着いてトイレができるように、周囲にあるモノは靴箱やテレビ台の上、チェストの棚の中などに移動する必要があった。なんだか家の中が急に雑然としたような気がする。でも仕方ない。見て見ぬふりをすることにした。

トイレシートの影響はそれだけではなかった。朝と夕方の1日2回交換するとなると、1日に6枚ものシートを消費することになる。1パック20枚入りのものが4日と持たない。買い置きが必要だ。1パック約2000円と安いものではないので、セールのときに大量に買っておく。

いつか義父母が移ってきたときのために空けておいた2階の8畳の和室に、そのストックを置くことにした。ほかにも、病気で水道水を飲めないももが飲むペット用飲料水のペットボトルやえさなどの買い置きも和室に。そんなことをしていたら、和室は手のつけようがない状態になった。でも、仕方がない。ももと私たちが快適に暮らすための必需品なのだから。

さらには、「秋田犬を飼い始めた」という噂が広まると、犬好きの友人、親戚が家に押しかけるようになった。しかも、珍しい秋田犬のももに、皆さまざまなおもちゃを持ってきてくださる。大喜びして愛嬌を振りまくももに気をよくした客人たちは、次にまた新たなおもちゃを携えてくるので、おもちゃの山ができていった。

せっかく持ってきてくれたものを処分するのは、ももをかわいがってくれている人たちに失礼なのではないか? そう思ったら、捨てるに捨てられない。いつしか、もも専用のおもちゃ箱が3つもリビングに置かれることになった。

「このリビングのどこに、そんなスペースが?」


そして、ある日事件が起きる。客人の一人が5歳の子どもを連れてきたのだ。人懐っこいももは悪気など微塵もなく、突進。遊んでほしくて飛びついたももに、その子が廊下で突き飛ばされてしまい……。その後はすっかり怯えて、もものいるリビングには入ろうともしなかった。

こういう事態が今後再び起こる可能性はゼロではない。最悪の事態を想定して準備をしておくのも、飼い主の義務だ。犬が苦手な親戚がお盆の時期に家へやってくるタイミングで、犬用のケージを用意することにした。

そして今、リビングには120×70×114センチの頑丈な金属製のケージが置かれている。それに加えて、トイレシートにおもちゃ箱3つ、そして、床にはももが遊んだおもちゃが散乱。ももには散らかすだけではなく、片付け方も覚えてほしいところだが、それは無理というもの。家族みんなで拾っては、おもちゃ箱に戻す日々だ。

映画が好きで、DVDを家で見るのが趣味の夫が、ちょっと高価なスピーカーをリビングに置きたいと言い出したときは、「このリビングのどこに、そんなスペースがあるの?」と、即刻却下した。でも、夫が文句を言うことはない。

それどころか、「おもしろいおもちゃを見つけた」と、もものおもちゃを買ってくる。子どもたちも同様だ。「これじゃあ、おもちゃ箱をもう1つ増やさなきゃいけないじゃない。これ以上家をごちゃごちゃにしないで!」と口では怒ってみるものの、心の中では「かわいいから、仕方がないのよね」と、うれしそうなももを見て、思っている。

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