宮本信子「自然を受け入れて、ありのままの自分で生きる!」

12月1日(火)12時0分 婦人公論.jp


「映画館は私にとって特別な場所です。暗闇に包まれてスクリーンの中の非日常と出会うのが、本当に好きでした」

現在発売中の『婦人公論』12月8日号の表紙は女優の宮本信子さんです。現状を受け入れ、自分の生活のペースを取り戻そうと決意した宮本さん。家の中を徹底的に整理し、音楽や映画、本の世界を楽しんで——発売中の『婦人公論』から、インタビューを掲載します。(構成=篠藤ゆり)

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20年続けてきたジャズライブ


今年、外出自粛中は、よくジャズを聴いていました。幼い頃から芸事が好きで、伊丹(十三)さんが亡くなってから新しいことに挑戦しようとはじめたのがジャズライブ。近年は毎年開催しています。

約20年、こんなに長く続けられるとは思っていませんでした。

私は人前で自分自身のことを話すのはあまり好きではなく、苦手です。女優として役を演じる時にはびしっとスイッチを入れる。それでいいと思っています。でもライブではやはり素が出ますね。出てしまいますね、かなり(笑)。MCで何をお話ししようかと考えることも楽しいです。

今年は残念ながらライブができませんが、それほど落ち込んではいません。落ち込む暇があるなら、この間に持ち歌を増やしておこうと思っています。いつかまた、機会が訪れたら思い切り楽しむつもりです。


『婦人公論』12月8日号の表紙に登場している宮本信子さん(表紙撮影:篠山紀信

自分の生活のペースを取り戻そう!


今年はコロナ禍という、思いがけないことが起きました。なにせ世界で初めてのウイルスですから、どういうものかわからず、最初の頃はすごく不安で──テレビを見ていると、恐怖に取り込まれそうな感覚になりましたね。でもある時、「イカン、イカン、自分の生活のペースを取り戻そう!」と、気持ちを切り替えたのです。

映画の撮影は中断しましたが、慌てても仕方ありません。現実を受け入れるしかないですから。とにかく日々、楽しいことをして過ごせばいい。まぁ、いい加減というか、ざっくりした感じですね(笑)。私はもともと、キチキチするのは好きではないのです。

ただ、出かけてはいけない、これをしてはいけないと、いろいろ制限がありましたよね。時間はたっぷりありますから、まずは家の中のモノの整理を徹底的にしようと思いました。同じことを考えた方も多かったのではないでしょうか。

私はもともと、それほどモノに執着があるほうではないので、捨てるか残すかを決めるのは早いです。服は、3年間で一度も着ていないなら、もう手放してもいいかな、と。身体も精神も変わっていきます。この数年間の身体のありさまは目をおおうことが多々ありまして、自分でビックリ(笑)。でもまあ、自然を受け入れて、ありのままの自分で生きる! と、思っております。その時の自分に似合う服を着ればいいんですものね。

「伊丹十三賞」をきっかけに広がった世界


音楽もたくさん聴きましたし、映画も楽しみました。本で面白かったのは、映画監督の稲垣浩の『日本映画の若き日々』と、高瀬昌弘の『我が心の稲垣浩』。伊丹十三の父である伊丹万作について、かなり書かれているのです。

伊丹万作は挿画家を経て映画界に入り、脚本家や監督として活躍しましたが、この時こう言ったとか、こういう選択をしたとか、具体的な記述がたくさんあって。今まで想像の中の人だったのが、本を読むことで実体として立ち上がってくるのでワクワクしました。いずれこの本を伊丹十三記念館に収めたいと思います。

愛媛県松山市にある伊丹十三記念館は、伊丹が亡くなって10年になる2007年にオープンし、私が館長を務めています。今年で13年ですから、ちょうど十三(笑)。09年には、優れた文筆・映像作品に対して贈る「伊丹十三賞」を創設しました。今年の受賞者は宮藤官九郎さん。コロナの影響で贈呈式やパーティもできません。近々お目にかかって正賞の盾と副賞をお渡しするつもりです。

「伊丹十三賞」をきっかけに、私自身の世界も広がりました。16年に受賞された是枝裕和監督は、もちろん存じ上げていましたが、受賞パーティの時にお目にかかったことで思わぬご縁が生まれたのです。是枝監督が日仏共同で作られた映画『真実』の日本語版で、なんと主演のカトリーヌ・ドヌーヴの吹き替えに声をかけてくださって、とても嬉しかったです。

映画館は非日常と出会える特別な場所


公開中の映画『STAND BY ME ドラえもん2』では、のび太のおばあちゃんの声を担当しています。『ドラえもん』は誕生してもう50年になるんですね。それだけ愛されている作品なので、ぜひ出演させていただきたいと思いました。それに脚本・共同監督を務められた山崎貴さんは、かつて伊丹組の現場にいらした方。当時、若い山崎さんの印象は、いつも走り回っていらした(笑)。あの彼が、素晴らしい監督になられたことが、本当に嬉しい。そういうご縁がある作品です。

今回、一番好きだったのは、「おばあちゃんは、ここで待っているから」という台詞です。いつでも戻ってきていいよ。おばあちゃんは、いつものびちゃんを見ているよって。誰かが自分を守ってくれている。自分を優しさで包んでくれる人がいたら、つらくて逃げ出したりしても必ずその人のところに戻ってくると思うのです。のび太のおばあちゃんはそういう存在ですね。

できあがった映画の完成版はまだ観ていません。私は子どもが大好きなので、劇場で子どもたちがどんな反応をするか、一緒に映画館で観たいから。こっそり映画館に行くつもりです。

映画館は私にとって特別な場所です。叔父が名古屋で映画館を2館持っていたので、小さい頃からフリーパス。暗闇に包まれてスクリーンの中の非日常と出会うのが、本当に好きでした。私の人生において、映画の影響はとても大きいと思います。

今年はコロナで、今まで当たり前だと思っていたことが、決して当たり前ではないと思い知らされました。「あなたたち、もっと考えなさい」と言われているような気がしますし、いい知恵を出し合ってこの状況とつきあうしかないですね。

長くこの仕事を続けてこられたのは、本当に幸せなことです。これからも、自分が演じたいと思える役と出会い、より深く演じられたらいいなと思っています。

婦人公論.jp

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