中条きよし 後ろ姿だけでも全てを語れる芝居を目指す

12月3日(日)7時0分 NEWSポストセブン

中条きよしが「色気」と「芝居」について語る

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、『艶歌仕事人〜中条きよし〜ベストアルバム』が発売中の役者兼歌手、中条きよしが芝居と色気について話した言葉を紹介する。


 * * *

 中条きよしは数多くの女優たちと共演してきたが、その中で最も上手いと感じたのは長谷川稀世だという。往年の時代劇スター・長谷川一夫の娘だ。


「長谷川稀世とだと舞台を一か月やっていても疲れないんです。


 僕が芝居しようとすると引いてくれる。絶対に来ないんです。で、向こうが来ると僕が引ける。それから踊りも天下一品。『女優さんの踊り』と『踊りをやってる人の踊り』って違うんです。彼女の踊りは『上手くみせる』んじゃなくて、『きれいだな』と思わせてくれる。『ここが見せどころ』というのがハッキリと分かる。勉強になりました。


 ただ『十六夜参上』という舞台で相手役をしてもらった時、中日の前にぼそっと言われたんです。『中条さん、これ以上上手くならないでね』って。


 その真意は分かりません。でも僕は『これ以上、くさい芝居をしないでね。芝居をやり過ぎないでね』という意味だと思いました。何事もやり過ぎはよくないんですよね。


 それでも、テレビの時代になってくると劇場はたとえ下手でも名前や顔が売れてる女優を大きく扱いたがる。そうすると彼女を三番手にせざるをえなくなります。それで彼女に出演を断られて。その扱いじゃ彼女は嫌だろうって、僕も分かるんですよ。ですから、後で謝られた時は『大丈夫、分かってるから。何もできないのが上に来るのは嫌だよね』って言いました」


 中条は『極道の妻たち』シリーズなどで悪役を演じることもあるが、その時も色気や品格のようなものが漂っている。


「ヤクザの親分をやる時でも悪役をやる時でも、品がないって嫌なんですよ。着物の着方も歩き方も、品があった方がいい。


 着物をはだけて着ると粋な感じになりますが、襦袢まではだけると汚くなり、品がなくなります。ですから、着物をざっくり着る時でも、襦袢だけはきちっとしている。そういう計算をして芝居はする必要があります。


 悪役をやる時は『怖くしよう』とは考えません。優しい顔をして人を殺すのが一番怖いと思っているので、悪役も基本的には二枚目じゃなきゃいけないと思っています。悪いことするのも汚ないことするのも品がないと。


 そのためにも色気は大事です。色気って、自分で出そうと思って出るものではない。色気を出そうとしているのが見える人って、色気ないですもんね。陰で色気を出す努力をして頑張って、それでふっとした瞬間に出るといいますか、人がそう思った時が色気なんだと思います。そのためには私生活からちゃんとしてないと。私生活がダメな奴は顔に出ます。


 目指すところは、たとえば寺の庭掃除をしている人が後ろ姿しか見えてなくても、『この人、誰だろう』って思ってもらえる芝居がしたい。島田正吾さんみたいなね。よく『背中で芝居をする』って言いますが、昔の俳優はそれができているんです。赤穂城を去っていく大石内蔵助を演じた萬屋錦之介さん、頭を下げている後ろ姿だけなのに全てを語っています。ああいう芝居が大好きです」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


■撮影/藤岡雅樹


※週刊ポスト2017年12月8日号

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