弁護士「被害者の認識が裁判所に共有された」 新井浩文被告の判決からみる性犯罪裁判

12月4日(水)8時0分 AbemaTIMES

 東京・世田谷区の自宅で派遣型エステ店の女性従業員に乱暴した強制性交の罪で起訴され、2日に懲役5年の実刑判決が言い渡された新井浩文被告(40)。弁護側は判決を不服として即日控訴、保釈保証金750万円を納付し保釈が認められた。

 有名俳優の事件として注目された今回の事件。性犯罪事件に詳しい川本瑞紀弁護士は、事件そのものが注目すべき事例だったと話す。

 「この件は暴行・脅迫の程度が通常の性行為に付随する程度のものであった。それで被害者は十分に怖いけれども、今までそれは中々警察で立件すらされなかった。それが立件され、起訴され、裁判所までいって有罪になった。ここが重要」

 川本弁護士が注目していたのが、「暴行・脅迫」が認められるかどうかという点。強制性交罪の成立には、抵抗が著しく困難になるほどの「暴行または脅迫」が必要とされている。

 「現代人の感覚としては、無理やりセックスされたらそれはレイプだと思うが、いざ警察に行ってみると『それはちょっと強く押し倒したんじゃないの』とか、押し付ける程度について相手から『これは覚えてない』『そんなつもりじゃなかった』『本当は嫌だったかわからない』と言われたら困るということで、まず警察で取り合ってもらえない。普通の人がレイプだと思うものと裁判所がレイプだと認めるものの間にものすごく差があった」

 しかし、今回は体格差もあったことなどから、東京地裁は「女性が抵抗することが困難であった」と認めた。こうした裁判所の判断には、今年から行われているという「研修」が大きな影響を及ぼしているのではないかと川本弁護士は語る。

 「平成29年度に刑法が改正されたが、それに基づいて今年の頭から各裁判所で研修が行われている。それによって、被害者は自分に悪意が向けられて体を抑えられて、性的に狙われるという状態に対してそんな抵抗できるものではない、固まってしまう、どうしていいかわからなくなってしまうということが、裁判所に共有された」

 そもそも、性犯罪は密室で行われることが多いため目撃者がおらず、両者の言い分が食い違った場合、事実を明らかにすることが難しくなる。実は今年3月、性犯罪の無罪判決が相次ぎ、刑法の見直しを訴える声が多く上がっていた。

 名古屋で実の娘に対する準強制性交罪に問われていた父親の裁判は、抵抗できない状態にあったと認定するには疑いが残るとして、無罪判決。さらに、静岡県で行われた裁判では、女性に乱暴したなどとされたメキシコ国籍の男性について、故意はなかったとして無罪判決となった。このほかにも、福岡県の準強制性交事件、静岡県の強制性交事件と4件立て続けに無罪判決が続いた。

 こうした流れの中下された、新井被告の懲役5年という判決。今後の性犯罪の裁判に与える影響について、川本弁護士は次のように話す。

 「今回特殊なのは“性的なサービスをしない”という同意書があること。今までの判決は、男女が2人になったらうっすら性行為に同意しているという流れで進んでいた。現代において、残業していたら男女2人になったということはいっぱいある。男女2人になったらうっすら性交に同意しているなんて言われたら、女性としてはたまったものじゃない。恐ろしくて仕事もできないので、偶然2人になった、家に押し入ったわけでもないし路上で押し倒したわけでもないというところ(案件)に波及すると思う」

 性犯罪をめぐる法律について、BuzzFeed Japan記者の神庭亮介氏は「現行法で救いきれていない人たちがいるのは確かで、改善する必要があると感じる。それには解釈・運用を変えるのか、法律を変えるのか2通りの方法があると思うが、解釈を変える場合には都度判断が揺れる危うさも伴う」と指摘。

 「冤罪を生むことがないよう、『疑わしきは罰せず』という刑事司法の大原則も踏まえ、どんな状況であれば『合意がない』と考えられるのか、客観的かつ明確に条文として定めるべきではないか」との見方を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
 

映像:新井被告判決は性犯罪裁判として”画期的“か

AbemaTIMES

「裁判」をもっと詳しく

「裁判」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ