源流曲からの“見事な昇華” HARAの『Midnight Queen』——近田春夫の考えるヒット

12月4日(水)18時0分 文春オンライン

『Midnight Queen』(HARA)/『Tears』(ニコラス・エドワーズ)


※こちらのコラムはク・ハラさんの自殺報道以前に書かれたものです。謹んでハラさんのご冥福をお祈りいたします。(編集部より)




絵=安斎 肇


 今週のお題は「日本に出稼ぎソロ」ということだそうで、早速、担当の若者から作品と資料が送られてきた。


 一枚はもとKARAのメンバーのCDだった。こちらは俺も名前ぐらいは知っていたが、ニコラス・エドワーズとなると、どこのどなたか、まったく存じ上げもせず、どのような音楽傾向/経緯の人なのかも、皆目見当がつかない。


 なんでも日本語ペラペラの米国人とのことで、動画を見る限りでは金髪碧眼(多分)の、そして色白の、それこそ絵に描いたように美しい、女優も真っ青な顔立ちの青年だ。声質は、そうした外見から受けるものよりは男性的で、そこは少し予想外だったかも。



Tears/ニコラス・エドワーズ(ユニバーサル)日テレのバラエティで人気を集める。実家は米オレゴン州で東京23区ほどの広さの牧場を経営。


 日本語ペラペラといえば、コンビニのレジだ。留学生と思しき店員の皆さんが、ネイティブかと思われるほど、発音、ニュアンスともども超自然な日本語で対応してくれる。外国人力士の日本語も、いい回しとかすごく板に付いていて、粋だなぁってよく思っていたけれども、それを上回る表現力を感じる時が多々ある。いずれにせよ、前にもいったけれど、ドナルド・キーン系!の人達の口語日本語が彼等に劣るのは一体何故なのか? どなたか、そのあたりのわけをご教授下さいませな。


 来日するkpopのアイドルも全員日本語が達者である。迎え撃つ我が方はといえば、韓国語を流暢に話せる/ハングルが読める人気者など、草彅剛ほか、数えるほどもいないだろう。こんな今般の時局である。日韓橋渡しってことなら、草彅くんらの出番なのちゃう?って俺なんかは考えちゃうんですけどねェ……。


 話が脇道にそれてしまいついでに書くと、韓国が日本に求めている何よりは、正論や理屈ではない、もっと生理的な部分でのわだかまりの解消じゃないのかなぁ? で、その方法を思うのだけれど、例えば中学校などで、第二外国語にするとか、もう少し韓国語の一般化に力を入れてみたらどーお? すなわちそれは“文化へのリスペクト”にもつながるからで、相手も決して悪い気はしまいと思うのだ。


 そろそろ本題に戻ると、ニコラスくんの『Tears』は大変丁寧に作られているというのが、第一の印象であった。そういってしまえば、HARAの楽曲も同じく、仕事として申し分ない仕上がりをみせる。


 なので、ここから先はある程度主観的な評価になってしまうことをご理解の上読んでいただきたいのだが、面白かったのは『Midnight Queen』の方だった。



Midnight Queen/HARA(LOG-IN)もとKARAメンバー。本曲の制作では、2010年のKARA日本デビュー曲のスタッフが再集結。


 というのもおそらくコレは、かの『愛のコリーダ』にインスパイアされ誕生した楽曲に違いない。しかし、パクリには当たらない。「サウンドロンダリング」とでも申しましょうかねェ。ほぼ跡形もなく元曲の気配は消し去り、でも何だか『愛のコリーダ』がなければ生まれなかったろうなぁってことだけは(分かるものには)分かる仕組みになっているのだ。その“昇華の見事さ”を是非! 皆さまにもご堪能いただきたく……。






ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。




(近田 春夫/週刊文春 2019年12月5日号)

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