エミリア・クラーク、“ドラゴンの母”を解き放ち『ラスト・クリスマス』で“新章”へ

12月4日(水)17時0分 シネマカフェ

『ラスト・クリスマス』 (C)Universal Pictures

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明るく朗らかで、弾けるような笑顔が魅力の英国女優エミリア・クラーク

世界的ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の“ドラゴンの母”“カリーシ”デナーリス・ターガリエン役でお馴染み。映画『世界一キライなあなたに』や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』などで彼女を知った人もいるだろう。

今年最終章を迎えた「ゲーム・オブ・スローンズ」について彼女が何かしらを語れば、いまだに大きなニュースとなる中、12月6日(金)からは、デナーリス役に幕を下ろした後の初めての主演映画『ラスト・クリスマス』が公開される。

「ワム!」のクリスマスの定番曲をモチーフにした本作では、エミリアの“新章”のスタートを実感できるはずだ。

新人ながら異例の大抜擢!スターダムにのし上がる

1986年10月23日、ロンドンに生まれ、オックスフォードシャーで育つ。劇場で音楽エンジニアをしていた父とキャリアウーマンの母のもとに生まれたエミリアは、幼いころから父の仕事を目にし、女優を目指したのも必然だったといえる。やがてコリン・ファースやピアース・ブロスナン、トム・ハーディ、グウェンドリン・クリスティー(ブライエニー役)などを輩出したロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズのドラマセンターで演劇を学び、2009年に卒業。

TV映画などの端役を経て、2010年に「ゲーム・オブ・スローンズ」のオーディションを受けることになる。同作はすでにパイロット版(1話)が撮影されていたが、制作側の意向で撮り直しとなり、主要キャラのデナーリス役が「THE TUDORS〜背徳の王冠〜」などに出演していた中堅女優タムジン・マーチャントからエミリアへと変更となったのは、同作のトリビアでもよく語られる有名な話だ。


また、オンライン映画データベースIMDbによると、実現はしなかったものの、「ゲーム・オブ・スローンズ」でスターダムにのし上がったエミリアがキャスティングで候補に上がっていた映画には、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)のエージェント13(演じたのは「リベンジ」エミリー・ヴァンキャンプ)、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2015)のアナスタシア(演じたのはダコタ・ジョンソン)、『スーサイド・スクワッド』(2016)のエンチャントレス(演じたのはカーラ・デルヴィーニュ)と錚々たる作品ばかり。

そんな中で、ブリー・ラーソンやマーゴット・ロビーらも候補になっていた2015年『ターミネーター:新起動/ジェニシス』で映画史上最も有名な女性キャラクターのひとり、サラ・コナー役に抜擢されたのだから、人生はどう転ぶか分からない。


強大すぎる!?「ゲーム・オブ・スローンズ」の影響力

エミリアの人生といえば、今年3月、2011年と2013年に2度の大きな脳の手術を受けていたと「The New Yorker」誌に手記を発表し、脳の病気や損傷などから回復している人たちを支援するチャリティー団体「SameYou」の立ち上げをインスタグラムで発表したことも記憶に新しい。

最初の手術の後は自分の名前さえも言えないほどの状態だったというが、リハビリに挑み、現在では完治したエミリアは、約8年間も公にすることなく「ゲーム・オブ・スローンズ」を最終章まで演じ切った。公表しなかったのは、周囲に“病気を抱えた人だから”と思ってほしくなかったと、最近も「ガーディアン」紙に語ったところだ。

自身も4度ノミネートされ、エミー賞最多受賞記録を持つ「ゲーム・オブ・スローンズ」は、最終章に署名活動が巻き起こる一方、最終話でHBO歴代最高視聴率を記録するなど、その影響力は凄まじいものがある。英米ではデナーリスの別称である、ドスラクの女王を意味する「カリーシ」を赤ちゃんに名付ける人も急増したという。


“狂王”と呼ばれた前・国王の末娘でありながら、国を追われ、王位を狙う兄の策略で幼くしてドスラクの王と政略結婚させられたデナーリス。やがて彼女は3匹のドラゴンと共に、奴隷たちを次々と解放し、ドスラクの騎馬民族と無敵のアンサリード(穢れなき軍団)を手に入れ、まさにカリーシとしてシーズンを重ねるごとに強く、時に迷いながらも頼もしくなっていった。ジョン・スノウや自陣の軍勢がピンチを迎えたときにドラゴンで駆けつける様は、痛快ですらあった。


衝撃の最終章から約半年たち、エミリアが先月、第一章での撮影についてヌードシーンが多く、つらい体験をしたこと、そして“夫”役だったジェイソン・モモアへの感謝について、ポッドキャスト番組「Armchair Expert」(原題)で語ったことも注目を集めている。

演劇学校を卒業したばかりの彼女は撮影開始当時23歳、ほぼ新人だったことから“作品にとって必要なこと”と自分に言い聞かせ、バスルームで密かに涙しながら撮影に臨んでいたとか。そんな状況に手を差し伸べたのがモモアで、「これはよくない」とはっきりと言い、撮影合間には「ローブを持ってきて。彼女が震えているよ」とスタッフに指示するなど、とても親身に、ひとりの人間として気遣ってくれたという。モモアは1シーズンのみの出演だったが、現在まで続く2人の仲の良さはこうした中で培われた信頼関係によるものだ。


期せずしてか否か、イギリスの映画・テレビ監督による業界団体「ディレクターズUK」が、撮影で裸になるシーンや性的なシーンで“誰もが安心して仕事ができる”ようガイドラインを発表したばかり。BBCニュースでは、先のエミリアの発言とも関連づけて取り上げている。

また、ジミー・ファロンのTVショーに出演した際には、最終章で映り込んでしまったあの“コーヒーカップ”の真相について語ったことも話題に(実はヴァリス役のコンリース・ヒルが持ち込んだらしい!)。こうしたトーク番組やインタビューなどでの、素のエミリアの明るさに救われたというファンは多いはずだ。

※次の動画にはネタバレを含む表現があります。ご注意ください。


怪演ジュード・ロウの娘役『ドム・ヘミングウェイ』(2013)
ドラマでは無敵の女王だが、本作では父親役のジュード・ロウに四の五の言わせない娘役を演じた。主人公ドム・ヘミングウェイは12年間も服役していた破天荒な金庫破り。その間に妻は再婚し、がんで他界、エミリア演じる娘エヴリンからは底抜けに嫌われている。

ジュードの怪演や脱ぎっぷりにも注目だが、エミリアはバンドのボーカルとしてわずかだが歌を披露するシーンも。デナーリスのプラチナブロンドとまるで印象が違う、明るい赤毛のエミリアもキュート。彼女の歌を聴きながら涙を浮かべる、どうしようもないダメ父ジュードの姿にも注目。

最新作と全く違う時間軸『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(2015)

「ゲーム・オブ・スローンズ」でドラゴン誕生回の第一章10話などを手掛けたアラン・テイラー監督のもと、カリフォルニア州知事を退いたアーノルド・シュワルツェネッガーがカムバック。シュワ演じるターミネーターをオジサン(pops)と呼び、疑似親子のような関係を築いているサラ・コナー役に抜擢され、プロモーションで初来日もした。


“元祖”のリンダ・ハミルトンとも、「ゲーム・オブ・スローンズ」の“敵役”で海外ドラマ「ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ」のレナ・ヘディとも異なる、エミリアらしいチャーミングさと芯の強さが覗くサラ・コナー像を体現。エミリア演じるサラの影響で、ぎこちないスマイルを何度も繰り出すシュワ=ターミネーターも見逃せない。

だが、新3部作の1作目となるはずだったものの、興行と批評双方の不振から立ち消えとなり、ご存知のように『ターミネーター2』から続く正当な続編として最新作『ニュー・フェイト』が製作されている。

賛否両論を呼んだヒューマンラブストーリー『世界一キライなあなたに』(2016)

世界40か国以上で翻訳されるジョジョ・モイーズのベストセラー小説「ミー・ビフォア・ユー 君と選んだ明日」の映画化でラブストーリーに初挑戦。表情豊かな八の字眉と、みつばちタイツや雨の日の長靴やビニール傘までかわいい個性的なファッションで、“尊厳死”を見つめた物語を盛り上げた。


明るく天真爛漫で、1本筋が通った性格の主人公ルーは、まるで素で演じているのでは?と思うほどのハマり役。本作のシーア・シュアイック監督とは仲が良く、監督の息子のゴッドマザーになったとか。また、見事な化学反応を見せた共演のサム・クラフリンは、過去に「ゲーム・オブ・スローンズ」ジョン・スノウ役のオーディションを受けていたらしい!

幼なじみを好演『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018)
『スター・ウォーズ/エピソード3 シスの復讐』でダース・ベイダーが誕生し、帝国が銀河を支配し始めたころ、それに屈しない人々の反乱の萌芽を描いた「スター・ウォーズ」シリーズのアナザーストーリーで、若きハン・ソロ(オールデン・エアエンライク)の運命を大きく変えていく幼なじみキーラ役に。

過去の経験から人の言動の裏にある真意や弱みを敏感に察知しながら、自身が生き延びるための方法を探り、笑顔の下に本音を押し殺すような、勇敢であり、したたかな女性を演じた。デナーリスよりも世渡り上手ではありながら、いま思えば、ラストシーンの表情が彼女に重なるような気も…。

自身の思いも込めた『ラスト・クリスマス』(2019)

「ワム!」の楽曲をモチーフに、女優エマ・トンプソンと俳優グレッグ・ワイズ夫妻が大切なメッセージとイギリスの“いま”を盛り込んで、甘いだけではない素敵なロマンティック・コメディを作り上げた。監督はリブート版『ゴーストバスターズ』や『シンプル・フェイバー』などのポール・フェイグが手掛け、終始幻想的なクリスマスの世界観に貫かれている。

エミリアが演じるのは、人生がとっ散らかっているケイトという女性。サンタと呼ばれる店主(ミシェル・ヨー)のもと、クリスマスショップで小妖精の格好で働いているが、実家には帰らず、友人を訪ね歩いてはいつも何か“やらかし”、歌手になる夢もうまくいかない失敗続きの日々を送っている。


そんな中でトムという青年と偶然出会うのだが、彼がまたとらえどころがなく、いまどきスマホすら持っていない(戸棚にしまってあるらしい!?)不思議な男性。『クレイジー・リッチ!』の御曹司役だったヘンリー・ゴールディングが、爽やかだが謎多き王子様のようなトム役でその魅力を炸裂させている。


ケイトの母親役でエマも出演しており、この両親が移民の第一世代であることもポイント。イギリスのEU離脱(ブリグジット)にも絡み、LGBTQと家族についても触れ、多彩な人間関係を映しながら、“本当の自分”が分からなくなった主人公ケイトが自分自身を取り戻していく物語は、「SameYou」(あなたと同じ)という意味のチャリティーを行うエミリアにとっても大きな意味を持つ作品であることは確か。

そして何より、「クイーン」の『ボヘミアン・ラプソディ』やエルトン・ジョンの『ロケットマン』、「ビートルズ」の『イエスタデイ』に続く、2016年のクリスマスに亡くなったジョージ・マイケルと「ワム!」の音楽映画ともいえるほどの楽曲の散りばめ方もファンにはたまらない。


そんな『ラスト・クリスマス』でのエミリアは、全てを焼き尽くすようなドラゴンの炎ではなく、冬の空に輝く星のような、優しく瞬き続けるイルミネーションのような優しさに満ちたメッセージを伝えてくれる。

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