「老後資金2000万円不足」は本当? むしろ大事なのは<毎月の赤字×生きる年月>という計算式

12月5日(日)18時0分 婦人公論.jp


「老後資金2000万円不足」どころか、今は黒字って本当?(写真提供:写真AC)

全国東映系で公開の映画『老後の資金がありません!』。パート先をリストラされたり、夫の会社が倒産したりする中、お金の問題を解決するべく天海祐希さん演じる主婦の後藤篤子が東奔西走する作品ですが、実際、19年ごろに「老後資金2000万円不足」という報道をよく見聞きした方は多いのでは。しかしファイナンシャルプランナーである長尾義弘さんは、コロナの流行を経た今同じデータを見ると不足どころか黒字の状態にあり「大事なのは金額ではなく、収支のバランス」と主張します。

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晩婚化の今「50代」に人生の三大支出が折り重なる


世の人々は、何のためにお金を貯めるのでしょうか。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2020年)によると、第1位が「老後の生活資金に充てるため」(70・0%)、第2位は「病気や不時の災害への備え」(60・9%)、第3位は「子どもの教育資金」(30・4%)です。

ちなみに、1985年の第1位は「病気や不時の災害」(77・2%)、第2位は「子どもの教育資金」(43・0%)、第3位が「老後の生活資金」(42・5%)でした。この変化は長寿社会になり、長生きが大きなリスクになったからでしょう。

それほど心配な「老後資金」。しかし、現実はなかなか貯められていません。

「目先のことで手一杯。老後資金を貯めるなんて、とうていムリ!」

50代の人が、こう叫びたくなる気持ちはよくわかります。なぜなら、50代は人生の三大支出が折り重なっている時期だからです。

人生の三大支出とは、「住宅資金」「教育資金」「老後資金」を指します。これら三つが一時期に重なると、家計は厳しくなります。共働きで少し余裕があったとしても、やりくりにかなり苦労するでしょう。

最近、こうした傾向に拍車がかかっています。その一因として晩婚化の影響があります。

20代で結婚・出産していた時代との相違


国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」によると、1992年の平均初婚年齢は男性が28・3歳、女性が25・7 歳でした。

それが2015年の調査では、男性30・7歳、女性29・1歳となっています。厚生労働省の「人口動態統計」で第一子を出産した母親の年齢を比べると、1985年は26・7歳でしたが、2019年は30・7歳です。

かつては20代で結婚・出産が一般的なパターンでした。住宅資金→教育資金→老後資金と、大きな支出は順番にクリアしていけたのです。ダブったとしても短い期間ですみ、なんとか乗り越えられました。


20代で結婚した場合の支出時期(『運用はいっさい無し! 60歳貯畜ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』より)

たとえば、30歳で住宅を購入し、30年間のローンを組むと60歳には完済されます。教育資金がもっともかかるのは、子どもが大学生になるころです。とはいえ、ちょうど40代後半で、収入ももっとも多くなる時期です。子どもが独立し、家計がグッと楽になるのが50代前半。

ここから老後の準備を始めて60歳で定年退職すれば、それまでに貯めたお金と退職金を合わせて老後資金がまかなえたのです。

ところが、現在は事情が違います。

結婚が30歳前後となれば、出産は30代前半、住宅の購入も40代前半になるでしょう。住宅ローンは70歳近くまでずれこみます。子どもの大学入学は50代です。


晩婚世代の支出時期(『運用はいっさい無し! 60歳貯畜ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』より)

50代の半ばには収入のピークが過ぎ、役職定年などでむしろ減少に転じます。収入が減る時期に教育資金がピークを迎え、住宅ローンはまだ半分も残っている状態です。

しわ寄せが「老後の資金」に押し寄せるワケ


仮に、35歳で子どもが生まれたとして、逆算してみましょう。

60歳…定年退職

57歳…子どもが大学を卒業

55歳…役職定年で給与が下がる

53〜57歳…子どもが大学に入学し、教育資金がピーク

40歳…35年の住宅ローンを組む

だいたいですが、それぞれ次のような金額が必要になります。

住宅資金 3000万円

教育資金 1000万円(私立文系のケース、一人の金額)

老後資金 2000万円

合計6000万円

これが35 歳ぐらいから60歳の25年間に集中してしまうのです。単純計算で年間240万円(月額約20万円)を貯めなければなりません。生活しているわけですから、もちろん生活費は別にかかります。高額所得者でない限り、ほとんど不可能な数字だと思いませんか。


『運用はいっさい無し! 60歳貯畜ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(著:長尾義弘/徳間書店)

昭和のころは25歳から60歳までの35年間でしたから、年間約171万円(月額約14万円)です。しかも、景気がよくて給与が右肩上がりだった時期もありました。

昨今は晩婚化に加え、給与も上昇していないため、教育資金さえも貯めることが難しいと言えます。2000年以降、名目賃金は下がり続けています。

晩婚化・晩産化によって定年までの期間が短くなり、三大支出が同時期に重なってしまうわけです。住宅ローンと教育資金は先送りできないので、つい老後資金にしわ寄せがいきがちです。

人の平均寿命は着々と延びています。なおさらお先真っ暗だと落ち込まないでくださいね。寿命が延びているぶん、健康でいられる時間も長くなっています。ここは発想を転換し、長寿を大いに利用しようではありませんか。

現役時代に老後資金を貯めるのがベストですが、ない袖は振れません。どうしてもムリな場合は、老後資金は定年後に貯めるのです。

「老後資金2000万円不足」にあまり意味はない


では、どのくらい貯めればいいのでしょう。

「老後資金は2000万円必要」だと、よく言われます。2019年に「老後資金が2000万円不足する」と話題になったことがきっかけでした。

この数字は、家計調査報告(2017年)「高齢夫婦無職者世帯」のデータに基づいています。年金などの収入が月額20万9198円、生活費などの支出が26 万3717円。差額の5・5万円が毎月の赤字です。この状態で95歳まで生きるとしたら、約2000万円が必要になるという計算です。


老後資金2000万円、本当に必要?(『運用はいっさい無し! 60歳貯畜ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』より)

ところが、最新(2020年)のデータを見ると、なんと毎月約1000円の黒字になっているではありませんか!

新型コロナの影響で外出を自粛したため支出が減ったのでしょうか。また、一人10万円の特別定額給付が支給されたことによって収入が増えたこともあるのでしょうが、2020年の数字によれば、老後資金は不足しないことになります。


老後資金、実は必要ない?(『運用はいっさい無し! 60歳貯畜ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』より)

このように、家計調査報告は毎年少しずつ変わっています。したがって、老後資金2000万円は、あまり意味のない数字だとわかると思います。

老後資金は「毎月の赤字額」で決まる


「それなら、いったいいくら必要なの? そこのところをはっきりしてくれないと困るんだよ」

苦情が聞こえてきそうですが、一律にいくらと示すことはできません。それぞれの家庭ごとに異なっているからです。いえいえ、これで締めくくるつもりはありませんよ。あなたに最適な金額をちゃんと導き出せます。順を追ってお話ししますから、どうかご安心を。

老後資金として必要な金額は、「収支のバランス」で決まります。

2000万円問題でわかるとおり、老後資金は生活費の補填という役割が大きいのです。つまり、毎月の赤字額×12ヵ月×30年=老後資金となります。


老後資金の必要額とは(『運用はいっさい無し! 60歳貯畜ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』より)

30年は、65歳から95歳までを指します。男性の平均寿命は81歳、女性は87歳です。男性も4人に1人は90歳まで生きます。老後資金が途中でなくなっては困るので、少し長めの95歳まで見積もっておきましょう。

それ以外に、余裕資金も必須です。病気や介護、認知症、配偶者の死亡など、トラブルはつきものです。最低でも800万円くらいの予備費は準備していきたいところです。

老後の収入と支出額、それによって生じる毎月の赤字額がつかめると、老後資金の必要額もわかります。毎月の支出をどの程度節約すれば、収支のバランスがよくなるかも見えてきます。個人個人によって、ここは違いますよね。

老後資金は金額ではなく、この収支のバランスが大事なのです。

※本稿は、『運用はいっさい無し! 60歳貯畜ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

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