師匠と弟子の組み合わせによる落語の「親子会」の楽しさ

12月8日(金)7時0分 NEWSポストセブン

落語「親子会」の面白さとは

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 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の連載「落語の目利き」より、師匠と弟子の組み合わせによる「親子会」の楽しさについてお届けする。


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「勉強会」という言い方がある。二ツ目あたりの若手が自主的に行なう小さな落語会のことで、「未熟な者ですが会を開いて勉強させていただきます」というニュアンスが込められた呼び名だが、これを「聴き手が勉強する」セミナーのようなものだと誤解する落語初心者がいる、という話を先日ある落語家から聞いた。


 落語会の名称でもうひとつ、初心者が誤解しがちなのが「親子会」だ。これは本当の親子による落語会ではなく、「師匠と弟子1人の組み合わせによる2人会」のことだ(弟子が数人なら「一門会」になる)。以前、「談志・志らく親子会」のチラシを見て「志らくって談志の息子なんだ」「確かに似てるね」と話している2人連れに遭遇したことがあるが、いくら志らくが「談志のDNAを継ぐ男」といっても、生物学的な意味で親子関係にあるわけではない。


 前回ここで触れた「白鳥ジャパン雪月花」は10月9日午後1時開演だったが、同じ日本橋三井ホールで午後5時から「雲助・白酒そして一朝・一之輔 ダブル親子会」があった。「五街道雲助と弟子の桃月庵白酒」「春風亭一朝と弟子の春風亭一之輔」という2組の師弟が出演するから「ダブル親子会」、というわけだ。


 もちろん一般的に「ダブル親子会」という形式があるわけではないが、この組み合わせはそういう言い方が似つかわしい。雲助と一朝は共に来年で芸歴50年となる本格派の古典の名手、2人の弟子は言わずもがなの売れっ子同士で、パンチの効いた芸風も似ている。落語ファンならぜひ観たい素敵な企画だ。


 4人揃ってのオープニング・トークの後、まず一之輔が得意の『加賀の千代』。甚兵衛さんの可愛さと、それを愛でるご隠居のキャラが一之輔ならでは。逸品だ。


 続いて雲助が『幾代餅』。白酒の人情噺クサくない『幾代餅』のルーツは、この軽やかな雲助版にある。


 白酒が演じた『長屋の算術』は、大半の観客にとって初めて聴く噺だったに違いない。五代目柳亭燕路が創作し、志ん生が持ちネタとした珍品で、僕は柳家喜多八でしか聴いたことがなかった。長屋の連中のバカさ加減を徹底的にデフォルメした漫画チックな白酒版の可笑しさは悶絶モノ。喜多八のネタを同等のクオリティで継承してくれる演者がいるのは嬉しいことだ。


 トリの一朝は『抜け雀』を、古今亭そのままの本寸法で爽やかに聴かせた。個人的に、一朝は今が旬だと思っている。4人が持ち味を発揮した最高の2時間だった。


●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。


※週刊ポスト2017年12月15日号

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