「賃金や人手の問題、決して楽観できない」 『ひるね姫』を鋭意制作中の神山健治監督が見出したい新たな希望とは?

12月9日(金)21時45分 おたぽる

写真:神山健治監督特別講演「日本のアニメの、これから。」

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 12月3日と4日、名古屋のナディアパークにて「デジタルコンテンツ博覧会NAGOYA」が開催された。当イベントは2014年より開催され、今回が3回目。初日の3日には、神山健治監督の特別講演「日本のアニメの、これから。」が行われた。本稿ではその模様をお伝えする。

 名古屋は2年ぶりという神山監督。講演では小学3年の時に観に行った映画『シンドバッド虎の目大冒険』、高校時代の自主制作アニメ、現在上映中の映画『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』(総監督)についてたどりながら語った。

 目下、期待が高まっているのが、17年3月18日の封切りに向けて鋭意制作中の映画『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』。神山監督は「アニメに求められているものがすごく増えてきていますね」と『ひるね姫』の制作動機に触れた。

「(自身が監督したテレビシリーズ)『東のエデン』(09年)の頃には、青春群像劇だけでがオリジナルアニメを作れなくて、よっぽど売れている青春群像劇の原作を持ってくるしかないと言われていました。今は、もっと自分たちに身近な物語や登場人物を見たいという観客の要望によって、そういう作品が増えてきてますよね。その反面、ハリウッド超大作みたいな作品も作られて、世界中で観られているという状況の中で、アニメが色んな映像、映画からCMも含めて需要が増えて大きくなってくと思ってるんです」(神山監督)

 そうした状況を背景に「『ひるね姫』は偶然だったんですけども、自分の娘に観せられるような作品、観てほしいし観たいと言ってくれるような作品ができたらいいなといったとこからスタートしています」と神山監督。気になるその内容は「ただ僕が作ると単なる青春群像劇には収まらなくなったと言いますか、SF要素はそこまでないんですけど、ガジェットも出てきますし。まぁ普通の女子高生の話ではありますが……。ロボットの出し方は皆さんが想像してるのとは少し違うかもしれないですね」と語るに留めた。

『ひるね姫』では主人公・森川ココネのキャストを、NHK朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』で知られる高畑充希が務めることも話題だ。神山監督は「『とと姉ちゃん』が終わってから声を録らせていただいたんですけど、表現力のある方で、生きている女子高生になったかなぁと思います。あと主題歌も歌って頂いていて、ミュージカルもされてるので本当に表現力がありますね」と評価した。

 その流れで神山監督はキャストの選考方法を、「なるべく誰なのかを聞かずに声だけを聞いてます」と明かした。そして「声の中に必ずその人の資質みたいなのが埋まっていて、出てくるキャラクターと似てますよね。僕の全ての作品そうなんですが、タチコマ(『攻殻機動隊』シリーズ)の玉川(砂記子)さんも似てるかもなぁ」と笑わせた。

 また神山監督は自身の今後について、「オリジナル作品を作っていきたいと思うし、まだまだTVシリーズもやりたいですね。過去の作品の新シリーズもやりたいなぁとも思うし。本当に体がいくつあっても間に合わんという感じで、色々やりたいんです」と展望した一方で、「やっぱり今後デジタル化していく中で、今までの手描きの良さというものを残しながら、賃金や人手の問題だとか、コンテンツとしては良い状況なんだけども制作状況としては決して楽観できない中で、同時にスタッフを育てたい、現場を作っていきたいんですよね」との思いを覗かせた。

「自分もそこに参加したいとか、作る側に回りたいと思ってもらえるような現場を作っていかないといけない。『ひるね姫』は手描きなんだけど、紙を使わずにタブレットでフルデジタル化に挑戦しています。今までは作り方が決まってて、だからこそたくさん同じ品質のアニメを作ることができたんですけど、今後は変わってくると思うんですよね。デジタル化することで、今まで東京でないとできなかったのを地方でできるようにするとか。海外のスタッフとも仕事してるんですが、フランス人とSkypeで打ち合わせをして、データのやりとりをするとか、新しい試みをしてるんです」(神山監督)

 最後に神山監督は「変わっていかなければいけない部分もあるし、良いところを変えてしまっては勿体無いというか、ハイブリッド化していくことで新しい希望みたいなものを見出せたらいいなと思いますね」と話を締めた。

 以下、聴衆との質疑応答でも興味深い質問と回答を聞くことができたので、Q&A形式で記しておく。

—— 決められた期間内で作品を完成させるには?
神山 まさに今その最中なんですけども、特に原作のない作品を作る時に『アイデアを出すとかの無形の部分にお金をかける意味はあるんだろうか?』とか問われます。原作があるものは売れてるから人気があるって結果が分かってるわけですが、原作が作られてきただけのお金と時間をかけさせてもらえないんです。オリジナルを作っていかないとなかなかアニメ業界は良くならない。今その現状があって、そこが苦労してる部分かなと思ってます。

—— 作品における社会問題との向き合い方は?

神山 脚本家さん何人かとチームを作ってやってるんですが、最初は無駄話をしてるんですよ。『あいつら会議室で14時間も何やってんの?』みたいなことを。そうするとだんだん興味の対象みたいなものが出てきて、この人はこういうことを思ってるんだなとか、それだったらこういうことを掘り下げてみようとか、そういうのを物語の中で解決する方法はないのかとか、考えてるうちにテーマが見つかる感じですかね。

—— 『精霊の守り人』のドラマ版(※別監督/NHK)はどうですか?

神山 アニメが得意なところと実写が得意なところがあるんですね。実写で上手くやっているなとか、苦手なところをどうするんだろうとか思って観てるんです。『いいよなアニメは。夕日がすぐ撮れて』とか思われてるかもしれないし、『何でアニメは止まったまま会話してるの?』とか思われてるかもしれないです。そういうお互いの得意不得意というか持ち味が違うので、色々と勉強になりましたね。一監督として観られなくなる弊害はあるんですが。

—— 映像で魅せる面白さと脚本で魅せる面白さのバランスは?

神山 TVシリーズの時は映画より映像にお金と時間をかけられないというのがあって、万が一、映像で上手くいかなかったとしても脚本で面白くしようと考えます。テレビの場合は、お皿を洗いながら観てても分かるようにしなきゃとかいう意識の違いだと思います。映画は画で語らないといけないので、セリフを切ったとしても同じ気持ちになるようにするにはどういう画作りにすればいいだろうというアプローチの違いですね。
(取材・文/真狩祐志)

■『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』
http://www.hirunehime.jp/

■デジタルコンテンツ博覧会NAGOYA
https://www.digihakunagoya.com/

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