「プチぼったくり」居酒屋増 繁華街からキャッチが消えない訳

12月9日(土)16時0分 NEWSポストセブン

「プチぼったくり」居酒屋とキャッチは一蓮托生

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 キャッチと呼ばれる「客引き行為」といえばキャバクラなど客席で接待される業態の店への勧誘のイメージが強い。しかし最近では居酒屋やカラオケなどへの「キャッチ」が増えている。しかも、この居酒屋などの店舗は、相場より微妙に高い「プチぼったくり」の店が多いのだ。今では多くの自治体で禁止され、取り締まりの末に逮捕者が出ているにも関わらず、繁華街の路上から「キャッチ」は消えない。最近では「プチぼったくり」を常習とする居酒屋などに雇われることが多い「キャッチ」の実態を、ライターの森鷹久氏がリポートする。


 * * *

「悪質なキャッチに注意しましょう」


 東京・上野の繁華街に繰り返し響く無機質なアナウンス。そのスピーカーの真下にいた男性が、男ばかり三人で歩いた筆者達の元に駆け寄ってくる。


「飲み、女の子、抜き、どれですか?」


 お兄さん、キャッチ? と聞くと“はい、キャッチっす!”と、悪びれるそぶりも一切見せず、笑顔で答える青年。キャッチが禁止されているはずの上野仲通り商店街で、しかも、今まさに通りには「キャッチについていくな」というアナウンスがなされているにも関わらず、実に堂々と“キャッチ行為”を行っている。そしてよく見ると、通りのあちこちにも、一目でキャッチと分かる若い男らが、少なくとも十数人はいた。


「(取り締まりを)やってもやっても、キャッチはまたやってくる。まるで雨後の筍。一週間前に逮捕したやつが、またキャッチをやっている、なんてのもザラ。取り締まったという見せかけだけじゃないか、こう思われても仕方がない」


 こう語るのは、警視庁の捜査関係者。今年10月、8〜9月にかけて上野の繁華街で悪質な客引き行為を繰り返したとして、警視庁はキャッチの男ら3人を逮捕した。こうしたキャッチが「迷惑防止条例」違反容疑のなかでもより罪が重くなる常習容疑で摘発された全国初のケースであり、その後、関西などでも悪質なキャッチが逮捕される事例が続出。東京だけでなく、全国に「キャッチ」が存在することも明らかになった。


 ただ、こうした当局による締め付けが、キャッチを撲滅させそうかと言われると、実情はそう簡単でもなさそうだ。


 東京都内の繁華街を転々としながら、今も“キャッチ”で生活費を稼ぐ現役大学生・槙野氏(仮名・23歳)は、逮捕された経験はないものの、キャッチが減らない理由について次のように証言する。


「とにかくギャラがいい。いろんな契約形態があるが、自分は店と直接契約を結んでいるっすね。キャッチして、その客が使った2〜3割程度がバックされる仕組み。だから、出来るだけ人数が多い客を狙います。一晩で5組キャッチすると、大体3万は稼げる。学生のバイトもいれば、昼職やってるサラリーマンが小遣い稼ぎにやってる場合もある。レギュラー(毎日)の先輩が一度パクられましたが、二日間留置所に入り、処分保留ですぐ出てきた。今も元気にキャッチやってますよ(笑)。出来るキャッチは、実は店側からも重宝されてるんです」


 確かに、日給3万円の仕事はなかなかない。毎日キャッチとして街に立ち、月に100万以上の収入を得ている先輩もいるという。また、週に二日ほど、夕方から深夜にかけて数時間キャッチするだけで、一般的なアルバイトの一ヶ月分を稼ぐ者もいて、その効率の良さが、キャッチへ流れる人々を魅了しているとも話す。


 とはいえ、逮捕はリスクではないのか。キャッチ男は店側から感謝されていると、違法な仕事の継続を正当化するような口ぶりで、逮捕された同業者が明らかな“違法行為を行っていた”という事実については、知らんぷりを決め込んでいるかのようだ。一方、上野・仲通商店街の飲食店関係者は、キャッチが関わる飲食店について「キャッチありきでやっているとんでもない店が多い」と憤る。


「キャッチが関わっている店は、“今では”あからさまではない“プチぼったくり”の店が多いんです。そもそも店とキャッチが結託しているから、客に出来るだけ多く支払わせようとする反面、ビールだと謳っているのに発泡酒だったり、メニュー単価が近隣店の1.5倍ほどだったり……。もちろん、メニューの質も著しく悪く、残り物を使いまわしたり、衛生管理が適当だったり酷いもんです」(飲食店関係者)


 かつては、キャッチが正当に店から必要とされていた時もあった、とも語るこの関係者。表通りに面していない飲食店が、キャッチ業者にお願いをして、客を連れてきてもらっていた時期も、極めて短期間ではあるがあったのだという。


 しかし、次第にいかにキャッチが儲かるか、というシステムに変貌していき、現在では、キャッチが客を連れてくることが前提となっている「プチぼったくり」の店舗ばかりになってしまったのだ。ここに、客をもてなすなどの意図は全くなく、あるのはキャッチと店が、いかに客から搾取できるか、という詐欺師めいた発想だけである。


 また、キャッチが関わる“プチぼったくり”店が周囲に増えたことによって、真面目に営業をしていた別の店舗が多額の損害を被ったり、閉店に追い込まれてしまうこともある。新宿・歌舞伎調の雑居ビルで居酒屋を経営する深沢氏は、紛れもなくその被害者だ。


「一時期ネットで騒がれた“歌舞伎町のぼったくり店”が、うちのビルの三階と五階にありました。実際に訪れてみると、客単価は恐ろしく高く、ありえないようなチャージ料にメシはマズイどころか、注文してから30分以上こない……。悪評はすぐに広まったものの、関係のないうちの店や、別のテナントまで“ぼったくり店では?”と噂が立ってしまい、売り上げが激減。ぼったくり店が出て行ってからなんとか回復しましたが、連中のせいで店を畳んだオーナーも一人や二人ではありません」


 このように、我々消費者にとっては百害あって一利なし、とも言える悪質なキャッチであるが、取り締まりを強化しても減らない理由については前述した通り。キャッチらと結託した悪質な飲食店も、店名を変え、人を変え、何度も何度も消費者を騙そうとやってくる。


「キャッチにはついていかなければ大丈夫」と、単純なことのようにも思えるが、酔っ払った勢いや、めぼしい店が満席で入れなかったり、店を探すのが面倒な時など、ついつい甘言に乗ってしまう可能性もある。また、本格的なぼったくりではなく、あくまで「プチぼったくり」なために、被害に遭った客も、ちょっと失敗したな、などと考えてシステムそのものを疑ったり、警察や行政などへ訴えることまではしない。せいぜい、SNSで不満を漏らす程度だ。


 実際に、レシートの画像を被害に遭った客がSNSで公開したことがきっかけで、閉店に追い込まれた店舗もある。その投稿では、キャッチからは「一人2600円のコースあります」という大手グルメ情報サイトと同じ条件を提示されたが、2人のはずなのに飲み放題を5人ぶんつけられ、「お通し」「席料」の人数も増やされ、さらにチャージ料金が別途計上されて高額になっていることに抗議したが、店から出さないと店員にすごまれ、逃れるために支払ったという体験が語られていた。不当だとは思っても、支払えない金額ではないのも「プチぼったくり」店舗に特徴的な巧妙さだ。SNS拡散によって激しい抗議を受けた店舗は、HPと店舗を実に手際よく閉鎖して雲隠れを果たした。


 こうして店舗が消えることもあるが、現実に存在する「プチぼったくり」の店の数に比べれば、世間で悪評が立つ店は砂浜の砂一粒程度でしかない。悪質な飲食店は、看板を掛け替えてすぐに同じことを繰り返し、今尚営業している店舗が複数存在している。


 忘年会シーズンを控え、キャッチやキャッチと結託した飲食店がまた活発に動き出すはず。不法行為を働く連中が、あなたを満足させるような店に案内してくれるのか? 詐欺師によって提供される酒、食べ物をあなたは口にすることができるのか? 冷静に考えれば、誰でもわかるはずだ。読者の皆さん、ご注意を。

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