斉藤和義の“モデルチェンジ” ここからどう進化を遂げるのか——近田春夫の考えるヒット

12月11日(水)6時0分 文春オンライン

『いつもの風景』(斉藤和義)/『歌になりたい』(ASKA




絵=安斎 肇


 ベテランといわれ、パッと浮かぶのは、やはり自分よりは年配の人たちの姿ではないだろうか? しかし私ぐらいの歳にもなれば、そのような方々はもう鬼籍に入られていたりするケースも少なくなく、若い人たちとは話の通じないこともよくある。


 そんな世代差というか現実をまざまざと痛感させられたのが、我が担当の若者にとっては斉藤和義が“ベテラン”の扱いだったことだ。


 調べたらば'66年生まれの53歳! って俺よりか15歳も下じゃんさ(笑)。まぁASKAの方は'58年生まれなのでわからなくもないが、それにしても俺よりは下だもん。


 てなわけで今週は「ベテラン対決の巻」! であります。


 長きに渡り表現活動を続けていくと、どのようなジャンルにせよ“その人ならでは”の傾向なりが、外側からどうしても見てとれてしまう。かの、幾多の“時代”を誇るピカソにしろ、後々キャリアを俯瞰してみれば、作品に一貫した秩序は見出せる。


 作曲に関しての“そのひとらしさ”は、往々にして“手癖”といったカタチで——時にメロディラインだったり、コード進行だったり——あらわれる。


 ちなみに私自身は、でき得る限り手癖からは脱却したいと常日頃から考え作品作りにいそしむ“たち”であるが、ま、それはおいておいて……。


 ベテランと呼ばれる人たちの魅力とは、そうした、いってみれば癖、カラー、スタイルといったものの確立の揺るぎなさこそが背景となっている場合も確かに多い。要するに“ブランド”なのである。



いつもの風景/斉藤和義(ビクター)『ちびまる子ちゃん』エンディング主題歌。昨年亡くなったさくらももこが、生前に斉藤和義にあてて作詞。


 斉藤和義のこの新譜を聴いて『歩いて帰ろう』(1994)を思い出さない人はきっといないだろう。それこそ歌い出しの箇所のコードの流れなど、手癖以外のなにものでもない! と俺は思う。


 歌唱しかり。どこをどう切ろうとこの曲は斉藤和義なのだ。ではそれに不服不満があるかといえば、俺にはない。その理由もちゃんとある。


 このサウンドが“斉藤和義として進化したもの”であると、実感出来るからである。例えるなら、自動車のモデルチェンジが分かり易いかもしれない。ベンツはどこまで行ってもベンツのアピアランスを保つ。あるいはモードの世界も同じく、シャネルはシャネルであることを決して崩しはしない。その枠のなかで時代の先取りをする。そしてひとつ必ずいえるのは、新しいバージョンが前より素敵でなければ、買い手は決して手を出しはしないということだ。



 斉藤和義の最新版のサウンドを『歩いて帰ろう』と比べれば、確実に緊張感は増しているし、令和の街の景色にふさわしく、より“非情”な印象を残すことに成功しているだろう。ここからさらにどのような進化をとげるのかと、期待をしたくなってしまう音に仕上がっているのだ。



歌になりたい/ASKA(DADAレーベル)ことし8月にCHAGE and ASKAを脱退したASKA。新曲シングルCDとしては10年ぶりの発売。


 ASKA。


 この声のみを使って、複数職業作家とのコラボ、書き下ろしのアルバム聴きたい!





ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト〜世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。




(近田 春夫/週刊文春 2019年12月12日号)

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