りんごちゃんが大ブレイクした「ギャップ」以外の理由

12月11日(水)7時0分 NEWSポストセブン

「Yahoo!検索大賞2019」の「お笑い芸人部門賞」を受賞したりんごちゃん(右)

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 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、ギャップのあるものまねですっかり人気物になったタレントのりんごちゃんを分析。


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 今年最も検索数が上昇した“今年の顔”として「Yahoo!検察大賞2019」でお笑い芸能人部門賞に輝いたりんごちゃん。そこに掲載されていた『性別が暴露?』という記事を見て、思わずクリックしてしまった。


 可愛い見た目と柔らかい話し方、キャピキャピしたキャラから一転、「ミュージック、スターティン」を合い図にガラリと変わる、野太く低い声にガニ股の足。武田鉄矢井上陽水らのモノマネを始めるのだから、初めて見た時は、そのギャップに目が釘付けになった。


 見た後、あれだけ低い声なのだから、やっぱり男性かな、きっとニューハーフだろうと想像するが、プロフィール上は性別不詳。司会の今田耕司さんが「さっきまで、りんごくんだった」と性別を明かすようなコメントをすると、「出荷前で」と苦笑いし、性別に関する質問には「りんごちゃんはりんごちゃんです」と語ったという。


 ネット検索に「りんごちゃん」と入れると、最初に続けて出てくるのは「性別」の2文字。りんごちゃんの性別が気になっている人は思いのほか多いらしい。りんごちゃん自身、11月のイベントで最も多い質問が性別についてだと明かしている。


 人は、物事を曖昧のままにしておくことを嫌うという傾向がある。りんごちゃんのように性別不詳、年齢不詳と公表されると、推測するだけでなく答え合わせがしたくなる。本音を言えばどちらでもいいのだろうが、どちらか分かればすっきりするということだ。


 だが、曖昧なままにしておくほうがいい場合もある。男性か女性、年齢や年代でカテゴライズされると、知らないうちに持っている、性別や年齢への思い込みや先入観でその人を見てしまう可能性が出てくるからだ。


 このような思い込みを「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」と呼ぶ。性別や年齢だけでなく、人種や宗教など、人は誰でも気がつかないうちにアンコンシャス・バイアスを持っている。今でも多くの職場で働き方や昇給・昇格などで、「男性だから」「女性だから」という声は絶えない。


 そんなアンコンシャス・バイアスの影響を避けるため、米国などのオーケストラでは、演奏者の性別がわからない状態で採用試験を行う“ブラインド・オーディション”を行うケースもある。だが、アンコンシャス・バイアスをうまく利用し、成功している事例もある。世界中で行われている音楽オーディション番組「ザ・ヴォイス」だ。番組では最初、審査員は挑戦者に背を向け、性別や外見による先入観や偏見がない状態で、歌声だけで審査する。歌い終わって椅子が回転し、審査員が挑戦者を見た時、びっくりしたり納得の表情を浮かべるのも番組の面白さを後押ししている。


 もしりんごちゃんが性別を男性と公表したら、見る側には女装した男性orニューハーフのパフォーマンスというフィルターがかかる。モノマネのギャップに驚きはしても、「男性なら低い歌声でも当然」と思われれば、面白さや驚きは半減してしまいかねない。女性か男性かが分からないから、何が起きるかわからない楽しさも味わえるし、アンコンシャス・バイアスによる先入観もなく、りんごちゃんのパフォーマンスをそのまま楽しめるのだ。


 りんごちゃんに言わせると、性別の概念はなく、どんな風に見えてもその人の思った通りでいいらしい。とはいえ、やっぱり知りたくなる。いったいどっち?

NEWSポストセブン

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