『情熱大陸』Pが明かす出演者の選定基準、密着期間と秘訣

12月14日(木)11時0分 NEWSポストセブン

『情熱大陸』プロデューサーの福岡元啓さんインタビュー

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“今、気になる”人物に密着する番組『情熱大陸』(MBS制作・TBS系列放送)。長期に及ぶ撮影、コンサートや五輪の会場から実家や友人との食事現場まで入り込むカメラ…30分の番組はどのようにして作られているのか。2010年秋に、『情熱大陸』の5代目プロデューサーとなり、12月17日放送の20周年スペシャルでプロデューサーを卒業する毎日放送の福岡元啓さんに話を聞いた。


──毎週、多彩なジャンルで活躍する人々が登場する『情熱大陸』で気になるのは、その人選。「こんな人がいたんだ!」と驚かされる密着対象者はどう探しているのか?


 制作会社さんから毎日のようにメールやFAX、訪問で企画が寄せられます。中にはご本人からの売り込みもあります。芸能事務所だけでなく、街中の人から「初めまして」と出演を希望する手紙が週2〜3通届く。他にも、報道や営業など局内からの持ち込みなど。合わせて年間1000本ほどです。


 出演者からの紹介もあります。皆さん、さまざまなネットワークをお持ちで、「この人いいらしいよ」という各業界の“シード段階”にいる人の情報を教えてくれる。12月10日に放送した音楽家の原摩利彦さんは、2012年に出演したアーティスト・清川あさみさんからの紹介です。ずっと前から、「この人は注目した方がいい!」と推していました。


──膨大なリストから密着対象者を選ぶ決め手は?


 突き詰めると、“直感”になるんです。視聴率がとれるとか相手の宣伝になるとか、そういう互いの損得勘定抜きで撮りたいと思える対象なのか。その勘が頼りです。


 例えば、2017年4月に紹介したテキスタイル・デザイナーの森本喜久男さん。どう生き、どう人生を締めくくるかというのが今後の大きなテーマだと考えていた時に、ずっと前から森本さんに注目していたスタッフから“彼は本物だし、余命1年といわれている今こそ”、と提案があった。スポーツ選手のように広く知られた人では決してありませんが、放送したらとても反響が大きかった。話題になっている人物だから、ということではなく、社会で提起されている問題を語れる人物、という選び方もあるんです。


 ぼくを籠絡したら出られるとなるとよくないし、必ずしも企画が成立するわけではありませんから、候補者とはできるだけ会わないようにしています。“この人を出してあげたい”という情のようなもので出演者を決めるのではなく、客観的指標を見失わず冷静に判断すること。それができているか、常に自分に問いかけています。


──オファーを断られるケースは?


 実はお願いしても半分くらい、断られることがあります。まずタイミングが折り合わず実現しないケースや、ご本人が番組を好きで「自分は出演するレベルに達していない」と謙遜されるケース。先日も某大物女優さんから「何もしてない女優の私生活を見ても、全然面白くないだろうから」って辞退が。そんなことないのにな、と残念に思います。



 断られてもオファーを続けることはよくあります。小田和正さんは数年越しの交渉が実って、「井上真央ちゃんが撮るならいいよ」と、2012年に出演してくださった。じっくり半年間打ち合わせをするなど、こだわりを持ってスタートまでに時間をかける綾野剛さんのようなケースもあります(2013年放送)。そうした粘りが、その人にとって「初密着」を撮れる秘訣かもしれません。


──密着期間はどのくらい?


 ミニマムは東日本大震災後1週間で放送した2011年放送の元TBSアナウンサー・小島慶子さん。特例では、同年放送の女子サッカー選手・澤穂希さんは過去の素材とW杯の凱旋インタビューを組んで1日で作りました。


 最長は5年で、2016年に放送された漫画家の小山宙哉さん。『宇宙兄弟』が社会現象になった数年前に企画は通していたんですが、納得のいく素材が集まるまで粘りました。同じく2016年のトド猟師・俵静夫さんも、トドが捕れるまで1年寝かせました。平均的には3か月程度。常時20企画が同時進行している状況です。


──密着中に怒らせることは?


 ありますよ。こちらの質問の仕方が悪かったり、相手の感情の起伏などで「ごめんなさい」とディレクターが謝ることはよくあります。


 音楽プロデューサー・小林武史さん(2011年)はOAを見て、「ちょっと違うと思ったんだよなぁ」と話していましたが、周囲の反応で納得された。密着を通して、自分が見ている自分と人が見ている自分とのギャップを突きつけられることが多いんです。「自分が見せたくない部分を出される番組だ」と語っていた貴乃花親方も、密着を始める前にスタッフがカメラを持たないで部屋へ1週間泊まり込んで、信頼関係を築くことでいろいろ撮影させてくれた。


 2013年放送の少女時代は終盤で撮影が難航。日韓問題が微妙な時期に取材の規制がかかりそうになり、ライブ中の楽屋で少女時代のスタッフと番組スタッフが1時間ほどにらみ合った。そこも時間軸での解決です。プロセスを大事にする。そしてその根底に相手に対する愛情を持つことで信頼関係が生まれる。この番組を成立させているいちばんの秘訣かもしれません。


※女性セブン2018年1月1日号

NEWSポストセブン

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