『サクラ』『4マリ』交通事故連発に失望 超展開の狙いは?

12月14日(土)7時0分 NEWSポストセブン

展開に疑問の声が上がった『同期のサクラ』(公式HPより)

写真を拡大

 最近のドラマでは、放送中や放送後にSNS上に視聴者の感想などが次々と書き込まれていく。制作者にとって耳なじみのいい声ばかりではなく、中には演出やストーリー展開への疑問や批判の声が上がることも珍しくない。今回、その対象となった2作品の“超展開”について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。


 * * *

 秋ドラマが軒並みクライマックスに差し掛かっている中、物議を醸している2つの作品があります。


その2作品は『同期のサクラ』(日本テレビ系)と『4分間のマリーゴールド』(TBS系)。両作ともにヒロインが突然交通事故に遭い、瀕死の重傷を負ったことに「ありえない」「これは反則」などと批判の声が上がっているのです。


批判の声が上がるのも無理はありません。『同期のサクラ』の北野桜(高畑充希)も、『4分間のマリーゴールド』の花巻沙羅(菜々緒)も、第1話から瀕死の重傷を負うことを明かしていて、視聴者は「なぜそうなってしまったのか?」とさまざまな予想をしていました。


 しかし、終盤に入って明らかになったのは、「ストーリーに無関係かつ突発的な交通事故」「加害者は初登場のキャラクター」。言わば、瀕死の重傷を負わせるためだけに用意された強引な筋書きだったのです。


 なぜ作り手たちは、クライマックス前に多くの批判を招き、評価を下げる強引な筋書きにしたのでしょうか?


◆重要ではない「昏睡状態になった理由」


 見る人の予想を裏切る強引な筋書きは、アニメ、特撮、ゲームなどの世界で“超展開”と言われ、賛否両論を巻き起こしながらも、それなりに受け入れられてきました。その多くは「ガラッとムードを変えるためにあえて強引な展開を仕掛ける」という狙いによるものですが、心の機微や伏線の回収を重視する連ドラでは、あまり見られません。


 まれに連ドラでも超展開のようなものがあり、その都度「ぶち壊し」「時間を返せ」などと批判を受けていましたが、今回は「同じ週に、同じ無関係の人による交通事故」が続いたことで、連ドラ全体のイメージダウンにもつながってしまいました。


 強引な筋書きにした主な理由は、「主要キャラクターを命の危機にさらして、序盤から視聴者を引き付けたい」「最も描きたいのは命の危機ではないから、瀕死の理由はこの程度に留めて、早く先に進めたい」「原作通りにしたから」などが考えられます。


 とりわけ連ドラは「第1話を見てもらわないと高視聴率は難しい」と言われているため、「何とか見てもらおう」とインパクトの強い筋書きを採り入れる作り手が以前よりも増えました。たとえば、オリジナル作品の『同期のサクラ』は第1話の冒頭に、「重い脳挫傷で昏睡状態の桜を同期たちが心配そうに見守る」というシーンを入れ、その後も何度となく同様のシーンを差し込んでいます。


 連ドラらしく時系列で物語を進めていくのなら、8話で交通事故に遭うまで昏睡状態の姿は見せなくてもいいはずですが、その形では「第1話から見てもらえない」という可能性があるのも事実。インパクトを強くするために、多少強引でもあえて時系列を入れ替え、終盤の姿を第1話冒頭から見せていたのです。


 作り手にとって昏睡状態になった理由は、さほど重要ではなく、第1話から見てもらうための工夫にすぎず、「昏睡状態を脱したあとの姿をじっくり見せたい」という狙いなのでしょう。


◆ネットでバズる可能性を秘めた劇薬


 一方、『4分間のマリーゴールド』も第1話から命の危機を見せていましたが、こちらは原作漫画の筋書き通り。忠実に世界観を再現しているのですが、作り手が原作を読んだとき、「この原作のドラマ化なら、第1話から死の危機を見せて視聴者を引きつけられるだろう」という狙いがあったことは想像に難くありません。


 つまり、「オリジナルでも原作のある作品でも、連ドラの作り手が考える手法は似ている」ということなのですが、それを「ご都合主義」と一刀両断するのは少し気の毒な気がします。連ドラは年を追うごとに録画視聴やネット視聴が増えて、視聴率につながるリアルタイム視聴をしてもらうことが難しくなりました。少しずつ視聴率以外の指標も採り入れられはじめていますが、まだ十分とは言えず、作り手たちも仕事として連ドラを手がけている以上、強引な筋書きを使ってでも結果がほしいのです。


 ここで挙げた2作以外では『ニッポンノワール —刑事Yの反乱—』(日本テレビ系)も、「主人公たちが警察の地下組織『ニッポンノワール』に人体実験されてしまう」というアニメや特撮のような筋書きを採用していました。「何話もかけて積み重ねてきた謎を超越していく」という手法は劇薬である反面、ネットでバズる可能性があるだけに、賛否はさておき今後も見られるのではないでしょうか。


【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

NEWSポストセブン

「同期のサクラ」をもっと詳しく

「同期のサクラ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ