近所の子供が連日泣いている、通報するべきかどうか

12月16日(月)16時0分 NEWSポストセブン

しつけが虐待とみなされることも…

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「小2の息子を怒鳴っていたら通報された」。2019年11月3日、47才の母親の投書がある新聞に掲載された。


 ちょっとしたしつけのつもりが、どうしても声が大きくなり、言葉も荒くなってしまうことがある。そんな姿を見られたある時、子ども家庭支援センターの職員が家を訪れる。


 虐待の“疑惑”をかけられた親は、自分なりに必死に子育てをしていただけということも少なくない。


 神奈川県の主婦・Aさんは、日々のしつけが虐待だとみなされ、児童相談所(以下、児相)に通報されてしまった1人だ。


「息子は小学校低学年まではわがままで甘えん坊で、学校に行くのを嫌がって大変でした。1人で行きたくないと泣く息子を玄関まで引きずって放り出すように見送るのを毎朝していたら、ご近所の誰かに通報されてしまった。しばらくの間、定期的に児相の人が家に来るようになりました」(Aさん)


 児相に通報されたAさんは「がんばってしつけしている私が通報されるなんてと理不尽に感じる部分もあったが、話を聞いてもらえたり、アドバイスしてもらえたりと、結果的に子供も自分も助けられた」と振り返る。冒頭の新聞投稿者も「今は“見守ってくれている”という安心感がある」と記している。


 埼玉県の専業主婦のBさんは、第三者に子育ての悩みを聞いてもらえた経験から、虐待を未然に防ぐことができた。


「娘が小学生の頃、成績が伸びないことに悩んで、怒鳴ってばかりいた時期があります。ある時、娘が塾の先生に“お母さんが怖い”と言ったらしく、それから毎日のように塾から電話がかかってくるようになりました」(Bさん)


 おかげでBさんは先生に不安や愚痴を吐き出すことができ、徐々に怒鳴らなくなっていった。一般社団法人こころぎふ臨床心理センター代表理事の長谷川博一さんは、今は昔と違って、勉強や習い事で親が子供に情熱を注ぐのが当たり前の時代だと指摘する。


「まじめな親ほど、“ちゃんとしつけなきゃ”“ダメな親だと思われる”と、しつけに力を入れすぎてしまう傾向にある」(長谷川さん)


◆通報すべきか? そして通報されたらどう捉えるべきか


 力みすぎた子育てをやめるには、親自身の“吐き出しの場”が不可欠。児相はその1つだ。東京都に住むCさんは、決まって毎朝5時から1〜2時間ほど近所のマンションから聞こえてくる子供の泣き声が気になって、匿名で児相に通報した。


「電話をかけようかどうしようか、何日も迷いましたが、“子供に何かあってからでは遅い”と決心し、非通知で電話しました。ドキドキしながら場所と状況を伝えると、最後に私の名前を聞かれました。でもそれだけは許してほしいと言って、答えませんでした。


 後から知ったのですが、通報してすぐ、子供がいつものように泣いていると、警備会社と警察が部屋に入ったそうです。そのマンションの管理人から聞いた話では、以前からご近所内でも問題視されていたとのこと。


 その後、第三者が介入しての話し合いがもたれたそうです。それから、泣き声はしなくなりました。少なくとも、子供は虐待から逃れられた——そう思うと、やはり通報してよかったです」(Cさん)


 児相は“悪い親を取り締まる機関”ではなく、子育てや親子支援のプロフェッショナル集団だと、一般社団法人ママリングス代表理事の落合香代子さんは言う。


「よほどのことがない限り、通報したからといってすぐに親が逮捕されたり、親子が引き離されたりすることはないので、少しでもおかしいと思ったら通報した方が、子供だけでなく、親にとってもいい」


 逆にもし自分が通報されても、それは社会的支援のきっかけを得たというだけのこと。


「子育ての相談相手がいない八方ふさがりの状況から脱出できたと受け止めてほしい。それをきっかけに、どんどん相談していいんです。決してあなたが“しつけができないダメな親”というわけではないのですから」(長谷川さん)


 幼稚園や保育者向けセミナーなどを運営する「りんごの木」代表の保育者・柴田愛子さんは、「しつけとは、親が“やらなくちゃ”と思ってするものではなく、各家庭で育つ子供が無意識のうちに吸収していく“うち流のやり方”のこと」だと話す。


「親がいつも“いただきます”と言っていれば、子供もそうするように育ちますし、親がきちんと靴をそろえる姿を見ていれば、子供も自然とそうするようになる。しつけってそんなもの」(柴田さん)


 親子を支える制度が整いはじめている。胸を張って“うちの子らしく”育ててほしい。


※女性セブン2020年1月1日号

NEWSポストセブン

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