都の罰則付き受動喫煙対策 反対多数のパブコメがもつ意味は

12月17日(日)16時0分 NEWSポストセブン

拙速なたばこ規制強化に各地で反対署名も

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 新たなマナーやルールを法令で定める場合、事前に広く国民への理解と周知が諮られなければ実効性は乏しいといえるが、いま、規制ありきで前のめりの法整備が進められているのが受動喫煙防止を目的とした「たばこ対策」だ。しかも、国(厚労省)と東京都がそれぞれ独断でルールを設けようとしているから、話は余計にややこしい。


 11月中旬より新宿、錦糸町、上野、八王子など東京のJR主要駅付近では、都が公表した受動喫煙防止条例(仮称)に対し、慎重な議論を求める署名活動が行われた。


 都の飲食業組合らが主催となり、「これから飲食店などの屋内は全面禁煙になるかもしれません。お客様と事業者が“喫煙・分煙・禁煙”と自由に選択できる環境を残すために、ぜひ署名にご協力を!」と街ゆく人々に呼びかけた。


 だが、新たに禁煙場所に指定されそうな施設や面積、例外規定などをめぐって国や都の統一基準がコロコロと変わっており、肝心の都民の意志はもはや置き去りにされているのが現状だ。新宿駅南口の喫煙スペース内で署名に応じた40代男性は、こう吐き捨てた。


「屋内も屋外も喫煙できる場所をジワジワと減らしていき、最終的にはすべて禁煙にしたいのだと思う。少数とはいえ喫煙者の声がまったく聞き入れられないまま、一方的にたばこ規制が進んでいくのには反対です」


 事実、東京都はすでに18歳未満の子どものいる部屋や自動車内などで喫煙をしないよう努力義務を課した「子どもを受動喫煙から守る条例」を成立(10月5日)させたが、都民から幅広い意見を募るパブリックコメントを実施したのは、直前の8月30日〜9月8日のわずか10日間だけ。しかも、その結果は非公開だった。


 さらに、前述したように都は本命ともいえる公共施設や飲食店などの屋内を罰則付きで原則禁煙にする条例(受動喫煙防止条例)の来年可決を目指して10月6日までパブコメを実施。こちらはさすがに批判を恐れてか意見募集結果を公表したが、規制強化を含む条例案に賛成したのは6464人だったのに対し、一部反対を含め反対票は8192人と賛成を上回る結果となった。


〈喫煙者のモラル・マナー向上に努めるべき〉〈飲食店は店頭表示を徹底すれば十分〉など、強硬なたばこ規制に疑問を呈する声が挙がったが、都は「頂いたご意見や各種調査結果を参考に条例案を検討し、年度内に条例案の提出を目指します」と、あくまで条例制定にこだわる姿勢を見せている。


 こうした形式的なパブコメ実施に果たして意味はあるのか。東海大学名誉教授(行政法)の玉巻弘光氏がいう。


「建前として、パブコメは法令立案者と国会・議会だけで法制化を進めるのではなく、主権者たる国民・市民の意見、そして当該法令によって影響を受ける者の意見を集めて内容を調整したほうが、より現実社会に適合した法令案となり施行もスムーズになるという考えのもとで実施されています。


 もっとも、意見として合理的なものは反映されるべきですが、意見対立がある場合、寄せられた賛否が市民意見の縮図となるわけではないため、多数決的結論を取ることが不適切な面もあり、パブコメ実施者がどの意見を取り入れるかについて政策的選択を行うことにならざるを得ません。


 しかし、今後はパブコメで寄せられた意見の集約を行政独断で行うのではなく、外部の評価も取り入れなければならないという形にすれば、行政のアリバイ作り的、聞き置く的パブコメにブレーキがかかるのではないでしょうか」


 いずれにせよ、都民、国民の多様な議論を待たずに「東京オリンピック(時の施行)に間に合わない」との理由で強化されそうなたばこ規制。もちろん“望まない受動喫煙”を防止することは喫緊の課題といえるが、その解決策が喫煙者の排除だけでは能がなく、あまりに乱暴だろう。


 12月5日には、都内にて愛煙家およそ200人以上を集めた緊急シンポジウム「たばこはそんなに悪いのですか?」が催された。パネリストとして招かれた7名の識者たちも口々に拙速な法規制に“待った”をかける持論を展開した。


「分煙こそ譲り合いの社会。たばこの吸わない人の権利を守るように、自分の(吸いたい)権利も行使したい。それは、わざわざ法律で線を引いて罰則規定を設けてやることじゃない」(ジャーナリストの山路徹氏)


「東京都の“子ども条例”による受動喫煙の定義は〈他人の呼気に含まれる煙又はたばこを吸っている他人の呼気に含まれる煙〉とあり、たばこの臭気その他の排出物も含まれると書かれているが、たばこの臭気は非常に主観的なものだし、法的に違法とする範囲も不明確。また、都だけでなく区でも(路上禁煙)条例を設けているところが多いが、条例の内容や過料もまちまちで非常に複雑なのは問題だ」(現代史家の秦郁彦氏)


「規制の方法は、例えば分かりやすい喫煙所を作って明確に使いやすくする工夫をするなど、必要最小限の規制で効率的なやり方もあると思う。“嫌煙権”もそうだが、嫌○○権を政策で押しつぶそうとするのは法論理的には成り立たない話。お互いにそういうことがあっても、ある程度は我慢しつつ、ある程度は主張しつつ調和を図っていくべき」(弁護士の野中信敬氏)


「いつまでも(喫煙者・非喫煙者で)思想を戦わせていても出口は見えない。もっとエアカーテンなどの技術を開発し、たばこが嫌いな人からイヤと文句を言われないための完璧な分煙にすればいい。そうすれば経済も活性化する」(参議院議員の石井苗子氏/非喫煙者)


「たばこのデメリットばかりでなく、一服のメリットも考えてほしい。音楽を仕事にしている私にとって、仕事の区切りがついたときに一休みして一服するのは音楽の“休止符”と同じでなくてはならないもの。禁煙ファシズムにつながるような規制は容認できない」(作曲家のすぎやまこういち氏)


「日本は世界に比べて喫煙規制が緩いと言われているが、そんな事実はない。欧米は屋内禁煙が基本ルールだが、屋外は自由。それに対し、東京は屋外も屋内も家庭内も禁煙になりつつあり、すでに世界でもっとも厳しい喫煙規制を敷いている。喫煙者全滅、魔女狩りではなく、バランスの取れた建設的な議論をすべき」(経済学者の森永卓郎氏)


 そして、ジャーナリストの須田慎一郎氏は、最後にこう訴えた。


「ヒステリックな主張や規制に対して喫煙者もヒステリックに反応すると、結果的には非常に不幸になる。喫煙者の側も『どこでも吸いたい』とか『子どもの顔の前でも吸いたい』と言っているわけじゃない。世間一般の平均的なルールの中で、常識的な中で喫煙する権利は認めてほしい。そのことを愚直に訴えていくしかない」


 さて、来年には都条例の第二弾だけでなく、国も健康増進法の改正案として受動喫煙対策の強化について通常国会で議論し直す方針だ。果たして非喫煙者だけでなく喫煙者の権利も守る“折衷案”を見出すことができるか。

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