稲垣吾郎「<新しい地図>を結成して7年、僕自身のあり方は変わらない。日常では70%がちょうどいい、ゆるさが心と体の健やかさに繋がっている」
2024年12月20日(金)12時30分 婦人公論.jp
「健康のために日々心がけているのは、なるべくストレスをためず、規則正しい生活をすること」(撮影:木村直軌)
〈発売中の『婦人公論』1月号から記事を先出し!〉
クールなたたずまいで私たちを魅了する稲垣吾郎さん。近年は俳優としての活躍以外にも、ラジオMCに力を入れたり、ファンミーテングを行ったり、ますます精力的に活動しています。そんな稲垣さんが12月から、4度目となる舞台に挑みます。その心境は(構成=上田恵子 撮影=木村直軌)
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早寝早起き。睡眠は8〜9時間
この12月に誕生日を迎えました。でも実感は……正直あまりないですね(笑)。僕の場合、10代の頃から基本的に同じ仕事をしているでしょう。会社員の方のように、勤続年数にともなって役職がつくわけでもないから、余計に年齢のことを意識しないのかもしれません。
健康のために日々心がけているのは、なるべくストレスをためず、規則正しい生活をすること。夜はできる限り10時までに寝て、朝は6時に起きます。ええ、早寝早起きなんです(笑)。かつては深夜早朝でも関係なく現場に行ったりするような時代もありましたけど、今の僕の睡眠時間は平均8〜9時間。
ちゃんと寝るって、すごく大切なことだと思っているんです。実際、僕のまわりにいる健康で若々しい先輩方は、皆さん睡眠をしっかりとっていらっしゃる。
一方、食については徹底できているとは言い難くて……。スーパーに行った際、パッケージ裏の原材料表示をちょっと気にして見てみるくらいです。
この前、ある俳優さんと共演した時、「最近は発酵食品しか食べてない」と言われたんですが、僕はそこまでストイックにはできなくて。一応、彼の真似をして寝かせ玄米とかやってみたんですけど(笑)、3日しか続かないんですよ。
つよぽん(草なぎ剛さん)なんかは凝り性で、現場にこだわりのお茶を持参して「健康つよぽんだ!」とか言っていますが。まあそう言う僕も健康で、「健康ゴローちゃん」なんですけどね。(笑)
ミーハーなので、新しいことはとりあえず試すようにしているんです。でも、美容も健康も、ぜーんぶ中途半端。運動も含め、常に70%くらいを意識しながらやっている感じです。
でもそれでいいと思っています。そのゆるさが、僕の心と体の健やかさに繋がっているんじゃないかな、と思うんです。
4度目となるベートーヴェンに挑む
そんな僕とは真逆の性分といえるのが、12月からの舞台『No.9 —不滅の旋律—』で僕の演じるベートーヴェンかもしれませんね。同作で彼を演じるのは、今回で4度目。再演が決まった時は素直に嬉しかったです。
この作品については、「テレビをリモコンでオフにしても主電源は抜かない」みたいな感覚がずっとあったので、ようやくまたこの日を迎えられたなという喜びがあります。
上演時間は約3時間ですが、僕が演じるベートーヴェンはとにかく出ずっぱり。出ていない部分は10分くらいしかないんです。しかも怒っているシーンが多い(笑)。素の僕はそういう性質じゃないので、熱が下がらない感じに体がビックリしていますが、非日常感があってそれはそれで楽しくて。
ベートーヴェンの人間性については、気難しい人だったとか、急に怒り出して物を壊したなどと言われていますが、実際どんな人間だったか、本当のところはわかりません。解明することはできない以上、想像の中でやっていくしかないんですよね。
もともとの繊細さはあったにせよ、彼があそこまで気難しくなったのには、病気で耳が聞こえなくなったことも影響しているはず。若い頃は人付き合いがよく、冗談を言ったりして社交的な人だったとも言われていますから、そういう意味ではすごく人間臭い人だと思いますし、親しみを感じます。
特にこの舞台では、素直でチャーミングな人に描かれるところが多いので、より人間らしさを感じるのかもしれません。
普段の言動も、僕だったら恥ずかしくて隠してしまうことも、彼はむき出しにするんですよね。普通なら周囲の目を気にして小さく収まってしまうのに、彼はそうではない。
音楽がすべてだから周囲に何を思われようと頓着しなかったのかもしれませんが、そんなふうに感情がむき出しになっているところが可愛いですし、僕には魅力的に映ります。
思い悩んでいても人には言わないタイプです
ベートーヴェンは、暴力的な父親との関係や自身の病気など多くの苦悩を抱えていました。大変な人生だったと思いますが、一方で彼の音楽はその苦悩がなかったら生まれなかったとも言えます。
もちろん彼自身は苦悩を糧に作品を作ったわけではなく、厳しい環境の中で作品が生まれてしまった、ということなんでしょうけどね。僕自身はできるだけ苦しみを回避したい性格なので、いくら後世に名が残るとしても、そういう人生は遠慮したいです。(笑)
また、耳が聞こえなくなった彼は、絶望のあまり一度は死を考えたと言われています。そしてそこから再び立ち上がる原動力になったのは、やはり音楽でした。幸か不幸か、僕はそこまで思い悩むタイプではないので、彼のようにドラマチックなエピソードは持っていません。
もちろん、この歳になるまでには、それなりにいろいろありました。なかでも42〜43歳の時に自分の周りの環境が変わったことは大きかったですね。
香取慎吾、草なぎ剛とともに「新しい地図」を結成して、もう7年。けっこうな波瀾の日々だったはずですが、僕自身のあり方は変わらないというか。僕は自分の心情と仕事を分けて考えるほうなんです。
「心の奥底に、弱いところを人に見せるのは好きじゃないという思いがあるのかもしれません」
苦悩や挫折を仕事に活かして、みたいなこともないし、何か苦しみや悩みごとがあっても、そこにはいったん蓋をして、自分の心と体を常に健康な状態に持っていくようにしています。
なぜそれができるかというと、僕らは、ベートーヴェンのようにゼロから作品を作るクリエイターではないからなんですよね。誰かから与えられた作品を、演技や歌で表現するのが仕事です。それだけに、常に心が健全でいないと、職人として、仕事をまっとうできないんです。
それに僕の場合は、たとえ思い悩んだとしても、それを人に言わないですね。プライドが高いのかな? 心の奥底に、弱いところを人に見せるのは好きじゃないという思いがあるのかもしれません。
演じている役に引っ張られることも、ないですねえ。やっぱり芝居って人に伝えるものですし、作品は皆で作るものだから、あまり独りよがりになってもいけないと思うんです。何より、ずっと引っ張られていると身が持たない(笑)。味気ない言い方で申し訳ないですが、僕はそんなふうに考えています。
舞台には、ある程度前回をなぞっていかないと危険な部分や段取りがあります。そこと慣れとの戦いと言いますか、いかにして「いま初めて起きたものにするか」が大切なのだとしみじみ思います。
充実していた2024年。来年はさらに良い年に
稽古が始まって、すでに3日ほどがたちました。やっぱり人間ですから、過去3回も上演していると、どうしてもそれまでの経験と成功体験をなぞるところが出てきてしまう。
ですが、お客様の中には初めてご覧になる方もいらっしゃいますし、今回新たに加わったキャスト、スタッフもいます。4度目の舞台に臨むにあたり、僕の頭の中である程度これまでのイメージを破壊して、また新しい気持ちで役柄を再構築していくつもりです。
『No.9 —不滅の旋律 —』は今日まで96回の公演を重ねてきました。96回もベートーヴェンの人生を生きたのか! と感慨深いです。今回、クリスマス・イブにちょうど100回を迎えることになるので、引き続き鮮度を保ちながら頑張っていきたいですね。
年齢のせいなのか時代のせいなのか、一年が過ぎるスピードがどんどん速くなっています。2024年は僕にとってとてもいい年でした。
これからも一日一日を大切に、感謝しながら過ごしていきたいですし、2025年はさらに良い年にできるといいなあと思っています。この先、いい予感しかありません!
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