ママカーストや虐待発生背景に母が格差社会で抱える閉塞感

12月20日(火)7時0分 NEWSポストセブン

3月に第2子を出産した東尾理子(41才)

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 2016年1月、埼玉で3才女児が「元夫に似ているからムカツク」との理由で日常的に虐待を受けた末、死亡した。女児の体は痩せ細り、顔は熱湯をかけられ焼けただれていたという。また10月には、大阪で、3才長男を山中の崖から投げ捨てたとしてヤンキー夫婦が逮捕されるなど、耳を疑うような痛ましい虐待の事件が相次いでいる。


 不妊治療の末、長男・理汰郎くん(4才)を授かった東尾理子(41才)は、3月には長女・青葉ちゃんを出産した。虐待事件には心を痛めるものの、「虐待したくなる気持ちは、わかります」と言う。


「抱っことかおむつ替えとか毎日のことで、きれいごとじゃすまない。腰は痛いし、肩も凝る。イラっとすることもいっぱいありますよ。でもそこは我慢して、深呼吸。そしてあえて笑顔を作るようにしています。そうできるのも周りの支えがあってこそ。夫も、家族も、親戚も、ご近所さんも、私はみ〜んな頼ってるんですよ(笑い)。ひとりじゃ、子供って育てられませんから」(東尾)


◆「母親だから」と力むのをやめて、「親」になるということ


 東尾のように誰かを頼ることはさも簡単に見えて、実はすごく難しい。それどころか、悩みを打ち明けたり、憂さを一緒に晴らしたりする相手もいないのではないか。そう思わせる事件も起きている。2016年2月、神奈川で高校受験に失敗した長男(15才)の首を母(47才)が締め、その後母も首を吊って亡くなるという悲劇が起きた。どうしてそこまで——。


 著書に『ママたちの下剋上』があり、19才と17才の子供がいる作家の深沢潮さん(50才)は、「今の母親は、格差社会のなかで大きな閉塞感を抱えている」と指摘する。


「こう育てたらこうなるという正解がないのに、将来は不安だらけで、より安全に、苦労しないように、と子供を育てるあまり、常に不安と焦りがあるんです。だから、幼児教育も英会話から体操教室スポーツまで、本当にすごい」(深沢さん)


 少子化の影響で、1人の子供にかける時間も思いも大きくなり、実際ある調査では、未就学児童の習い事にかける費用の平均は月約8700円にものぼるということが明らかになっている。東尾も理汰郎くんの教育に熱心だ。



「もう、がっつりやってますよ。ゴルフも野球もバイオリンもピアノも(笑い)。こんなに時間とお金を使って何やってるんだろうって思うんですけど、親のエゴですよね。預けられる先生たちもバカバカしいなって思いながらやってると思いますよ(笑い)。でも人にどう思われようが、この姿を見て親が幸せに思って、子供もやりたいと思っていればそれでいいなと思っています。


 ただ子供は所有物じゃないから、ひとりの人間として尊重して、ちゃんと意見を聞くようにしなくちゃいけない」(東尾)


 それは夫・石田純一(62才)についても同様だ。2016年、都知事選への立候補が大きなニュースとなったが東尾自身は「嫌だ」と思いながらも最後は夫の思いを受け入れた。


「しょうがないですよ、やっぱり。人ってやりたいと思っていることは、やるなと言われてもやる。だから、子供も将来私の思いと違う道を歩んでも、やりたいことが見つかる方が素敵だと思います」(東尾)


 幼児教育もあって、最近の子供たちは似たようなおりこうさんが多いと深沢さん。しかしそのしわ寄せは母ひとりにおおいかぶさっていると言う。


「社会では多様性が求められますが、学校では“一様であること”を良しとして、少しでも他の子供と違うことに対して非寛容になっています。例えば忘れ物があるとすぐに親を呼び出しますが、それはかならず母親。何事も問題が起きると呼ばれるのは父親じゃなくて、やっぱり母親なんです」(深沢さん)


 母親に責任を周りが押しつけ、母親自身もそれに巻き込まれていく。


「今の子たちはお行儀よく教育されているので、授業参観でも『はいはいはいはい』という子はあまりいないんですが、友人の息子さんがそういったタイプだったんです。彼女はシングルマザーでしたが、懇親会のときに、他の保護者たちから『○○くんは寂しいから、ああやって目立とうとするのよね。お母さんがほったらかしにするからよ』って言われていて、驚きました。



 でもそういった日常で、母親の方も自意識を強くしていく。子育てというフィールドで、母親として闘っているから、いかにいい母親であるかを認めてもらうために、子供が園児ならば、極端なほどキャラ弁に凝ったり、友達との交流のためホームパーティーを開き頑張るんです。そうして他人と比べるなかで自ずとママカーストに巻き込まれる。子供のためと思ってやっていますが、実は自身の承認欲求と区別がつかなくなっていたりします」(深沢さん)


 イクメンが叫ばれて久しいが、実際問題、子育ての現場では相変わらず主体は母親。社会も人々の意識もこんなに変わっているのになぜなんだろう。6月に母親になった作家の山崎ナオコーラさん(38才)は、これまでの「固定観念が強固だから」と分析している。


「世間に流通している母親像というものが、すごく堅牢というか、がっちりあるように思います。例えば離乳食を作るなら完璧に手作りしなくちゃいけないとか、仕事よりも常に子供を優先させなくちゃいけないとか、高い声で子守歌を歌うとか。『母親なんだからこれをしなくちゃ』というものがあまりに多い。母子手帳、ママバッグとか、ママサポートとか、母親の責任を感じさせるものもあまりにあふれているように思います」


 そうしたプレッシャーから変に力んでしまったり、理想を高く持ちすぎてつらくなっているという人があまりに増えている——山崎さんはそう思って、現在WEB上で『母ではなくて、親になる』という連載をしている。


「『親』と思ったらそこまでやらないかもしれないのに、『母親だから』という理由で、完璧主義になっちゃう部分があるように思うんですよね。また『母親だから』となると、『ちょっと外に向けてアピールしなくちゃ』という部分も出てくるような気がします。 


 男の人も親になりたがっているから、育児に熱心な人はたくさんいるけれども、『母親になろう』と思っている人みたいな力みはないですよね。単純に子供といい関係を築いたり、子供の世話が楽しいと思って行動する。親になるっていうのは、妊娠や出産など特別な経験をしなければなれないものではないと思うんです。結局、人間関係は1対1。母親対子供となると、そこに父親がいなくちゃいけなくなる。だから、親対子供と考えれば、もっとシンプルに生きられるように思います」(山崎さん)


※女性セブン2017年1月1日号

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