デビュー45年に オール巨人が語る「アンタッチャブルの復活と漫才師としての引き際」

12月22日(日)6時0分 文春オンライン

7年目のM-1 オール巨人が明かす“審査員の苦悩”「来年はM-1を休むつもりです」 から続く


 2004年のM-1チャンピオン・アンタッチャブルが約10年ぶりに復活。『THE MANZAI』で見せた新ネタも話題になった。


 じつはその『THE MANZAI』への出場を見送っていたというオール阪神・巨人。「テレビでの漫才が好きじゃない」という理由とデビュー45周年を迎えるにあたり、たどり着いた“究極の漫才論”とは? (全3回の3回目/ #1 、 #2 へ)



じつは今年の『THE MANZAI』への出場を見送っていたというオール巨人さん


◆ ◆ ◆


10年ぶりアンタッチャブルの復活をどう見た?


——先日、アンタッチャブルが復活し、大きな話題となりました。相方のザキヤマ(山崎弘也)さんが登場したときの柴田英嗣さんの表情が印象的でした。本当に嬉しそうで。


巨人 よかったよなぁ。みんな待っとったし、おもろいしな。まだ、ネタになっていないところもあったけど、今は、その方がおもしろいんですよ。内容というよりは、復活した彼ら2人に注目が集まってますから。極端な話、何をやってもいい。



——会話の延長が漫才だという言い方をよくしますが、『THE MANZAI』で披露した新ネタは、会話っぽい漫才というよりは、漫才っぽい会話のようでしたね。それが瑞々しくて、かえってよかった。


巨人 この前、僕もあるところに営業に行ったんですけどね。500人くらいおったかな。ほとんどがオッチャンで、みんなご飯を食べて、お酒も飲んだ後なんです。そういう席がいちばん難しい。前に出た若手がことごとく滑ってました。まあ、滑るやろうと思いましたけどね。あんなところで普通に漫才をやっても絶対、ウケませんから。みんな漫才師が来ただけで、始めはわーっとなってる。しかしある程度集中力を要するネタを聞こうという態勢になってない。そんなときは、普通のおっちゃんと気楽にしゃべるような感じで入って、ちょっと和んできたらネタを入れて、また普通のしゃべりに戻して……という具合にやらせてもらいました。これが漫才という芸のいいところやね。お客さんに合わせて、なんぼでも変えられる。


なぜ『THE MANZAI』に出なかった?


——その『THE MANZAI』ですが、オール阪神・巨人もオファーがあったそうですが、仕事の都合で出られなかった、と。普通は、調整をつけてでも出たい、という舞台なんですよね。


巨人 無理をすれば行けた!……という感じではあったんやけどね。でも昔からテレビで漫才するの、好きじゃないんですよ。時間とか、放送コードとか、いろんな縛りがあるでしょう。


——普段、トリで舞台に立つ場合は、持ち時間は15分なんですよね。


巨人 他の組は10分で、最後の2組が15分くらいかな。でも、僕らはだいたい17分ぐらいやってるね。15分のところを12、3分とか、10分くらいで終わらせてしまう方もいますが、それはそれで別にいいんですよ。僕らは持ち時間より短くするということは、まずないですね。



オール阪神・巨人をテレビで見る機会が減っていく?


——15分間、あのスピードと、あの声量で、しかも、きっちり流れをつけてしゃべれるコンビは今、他にいないのでは。


巨人 いやいや他にもいてるでしょ。一度、東京の営業で、25分間お願いしますと言われたこともありましたね。でも、やりましたよ。2本、組み合わせたらええだけの話なんで。ぜんぜん違うネタでも、間でしゃべる言葉を選べば、ぜんぜん気にならんようにつなげることはできますから。


——25分間やったら、さすがにグッタリきますか。


巨人 そうでもないけどね。


——それだけの力を維持していても、今後はどんどんテレビで観る機会は減っていく可能性があるわけですね。


巨人 まったく出なくなることはないでしょうけど、滅多に出ないという風にはなるかもしれないですね。勝手な話ですけど、いいネタができたら、やりたいんですけどね。今回の『THE MANZAI』も、じゃあ、そこでやるネタがあるのかというのもありました。若い子ばっかりのお客さんの前で、どうなんやろな、今も僕たちは出ていけるんかな、と。ウケても、普段と違うところでウケるのも気持ち悪いんですよ。ゴルフで言えば、ぜんぜん思ったところに当たってないのに、結果、いいところに飛んで行ったみたいな。まあ、期待されてるわけでもないのに出て行って、どうすんのというのがあるじゃないですか。



劇場のネタはテレビでは絶対にやらない


——期待されているから、お声がかかったわけですよね。


巨人 本当はありがたい事で、行きたいと少しは思うんですが、他の仕事もあったし。ん〜ん、例えば、老人ホームのおじいちゃん、おばあちゃんの会場に若手が出て行って、めっちゃスベる! その逆のような事になったらイヤですしね(笑)。


——そんな(笑)。


巨人 それは冗談としても、この前も、ある局で正月番組の収録があったんですけど、何が嫌って、公開録音なのにお客さんからお金を取るんです。それにものすごく違和感がある。僕らは劇場でかけるネタは、テレビでは絶対にやらないようにしてるんです。なぜなら、お金を払ってわざわざ劇場まで足を運んでくれたお客さんを「テレビで観たことあるネタや……」ってがっかりさせたくないから。お金とってるお客さんに、テレビ用のネタをみせるということが、申し訳なくて。なので、そういう番組も今後は遠慮しようかなと考えてるんです。僕をここまで育ててくれたのは劇場のお客さんだという恩義がある。なので、やはり劇場のお客さんを優先したい。M-1の審査員も、劇場の出番を休んでいきますからね。それもお客さんと相方に申し訳なくて。



『THE MANZAI』とは対極の世界


——今、師匠にいちばんフィットするのはNGK(なんばグランド花月)の舞台ですか。


巨人 今は、劇場とか田舎の公民館とかがいちばん楽しいな。なんぼでもしゃべってられる。離島で漫才させてくれ、言うてるくらいですから。実演の漫才を観たこともないおじちゃん、おばちゃん島民を200人くらい集めてね。昔、『なぜか離島で漫才旅』という番組を3回だけやったことがあるんですよ。おもろかったなー。島内放送で、阪神君が「ピンポンパンポーン」チャイムをたたいてから、「皆さん、こんにちは。オール阪神・巨人の阪神です。聞こえてますか。明日6時から、〇〇会館で漫才やりますから集まって下さい。こいよー!」いうたら、島民の8割から9割きてくれる。でも時間やらコストがかかるんで、その番組は終わってしまったんですけど。



——離島で漫才。それが芸能生活45周年を迎え、辿りついた究極の漫才の舞台なわけですね。『THE MANZAI』とは対極ですが、そこに漫才の原風景、漫才とは何かの答えがあるような気もします。


巨人 でも、吉本はやってくれんからな。儲けなあかんからね。なので、もう個人で行かなしゃあないね。個人で行くとなると、僕が阪神君にお願いして、僕が阪神君にギャラ払わんといかんのか(笑)。でも、それでもええから、行きたいな。


【前回】オール巨人が明かす“M-1審査員の苦悩”「来年はM-1を休むつもりです」



プロフィール


オール巨人/1951年生まれ。大阪府出身。1975年4月に「オール阪神・巨人」結成。コンビで令和元年春の紫綬褒章を受章。伝統のしゃべくり漫才で上方のお笑い界を牽引。M-1の審査員は2007年(第7回大会)以降、今年で7度目となる。阪神タイガースファン、身長184cm



写真=釜谷洋史/文藝春秋



(中村 計)

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