地面師、改ざんダンパー… なぜ不動産業界は不正が横行?

12月27日(木)7時0分 NEWSポストセブン

不動産業界の闇を語り合った(左から大島てる氏、夏原武氏)

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 2018年は不動産事件が相次いだ。サブリース問題、制震・免震ダンパー不正事件、地面師事件──。“不動産業界の闇”に斬り込む、事故物件公示サイト管理人の大島てる氏と「ビッグコミック」連載中の漫画『正直不動産』原案者・夏原武氏が緊急対談した。


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──「ビッグコミック」連載中の漫画『正直不動産』と事故物件公示サイト「大島てる」は、不動産業界の闇を曝け出すという点が共通しています。


夏原:「大島てる」は本当に業界の禁じ手をやりましたよね。不動産業者から憎まれているでしょう?


大島てる:それが、家主からは反発されますが、業者からはありません。結局、何を書き込まれようが、業者にとっては自分の扱う家以外は関係ないんです。


夏原:不動産屋は家主や地主がいないと商売にならないけれど、事故物件になってしまえば、もうそんな家主はいらなくなるんでしょうね。


大島てる:サイトに批判的なのは不動産業界よりも自殺者の遺族ですね。遺族は家主から連帯保証人として、損害賠償を請求されます。だから「サイトがあるせいで、下がった家賃分を補償しなければいけないんだ」となるわけです。仲介業者はどうでもいいというスタンスです。ある意味では、私はそのやる気のなさで助かっているのかもしれません(笑)。『正直不動産』には、不動産業者からの批判はありますか?


夏原:クレームは多少あります。でも、真面目にやっている業者からは喜ばれているんじゃないかな。取材にも協力してもらえます。それも、抗議するほどやる気のある業者が少ないだけかもしれないけど(笑)。


──12月27日に発売される『正直不動産』単行本第4集には、欠陥マンションとホームインスペクション(住宅診断)をテーマにしたエピソードもあります。


夏原:住宅の安全性は素人にはわかりません。専門知識をもった第三者の意見がすごく重要になる。でも、あまり指摘されていませんが、インスペクターも中立ではなく、仕事を振ってくれる業者側に立ってしまうというのは、あり得る話なんです。



大島てる:安全性では、今年は制震・免震ダンパーの不正が問題になりました。私はどこのマンションで改ざんダンパーが使われているのか公表すべきだと思います。しかし、「オーナーの許可がないとできない」「公表すると不安を煽ることになる」と言って公表されない。このメーカーの言い分は事故物件に対する業界の対応と全く同じです(笑)。公表しないと、関係のないマンションにまで疑惑が及ぶだけなのに。


夏原:知り合いが住んでいるマンションが危ないらしくて「公表される前に売りたい」と言っていました(笑)。結局、売る側になってしまえば自分だけは損したくないというのは、業者も一般人も同じです。ローンも残っているし、気持ちはわかります。だからこそ不動産業者が正直に仕事をしなければいけないんですよね。


 現在の制度では、業者はインスペクションはやってもやらなくてもいいことになっています。でも、本来は不動産業者が自ら進んで調べるべきでしょう。だって、自分たちの売り物なんだから。そこまでやれば業界への信頼は増しますよ。


──『正直不動産』単行本第4集には、地面師も登場しています。


大島てる:全国に地面師が御用達にしている土地があるというのは本当ですか? そういった情報は「大島てる」では扱いませんが(笑)。


夏原:それを作ると、大島さんの身に危険が及ぶかもしれないな。確かに、事件化した五反田の元旅館は裏社会で有名な土地の一つでした。でも、あの地面師はちょっと雑なところがありましたね。偽女将が「今度、田舎に帰る」とか言ってたらしい。いや、ここがおまえの家だろう(笑)ってね。「カミンスカス操」とか名前も含めてキャラクターが強いから、漫画で登場すると逆に嘘くさい。一般の人にはこうした大事件より、街の不動産業者の悪事のほうが身近だし、たちが悪いんでしょうけどね。


大島てる:最近は不動産業者に事故物件が悪用されて困っています。おとり広告の言い訳に使うんです。『正直不動産』にも出ていましたが、お客さんから問い合わせがあったとき、「さっき契約が決まってしまいました」と言うのは、通用しない場合も出てきた。だから「実は、あの部屋で自殺があったんです」と言うんです。すると客のほうから「じゃあ、やめておこう」となりますからね。それを真に受けた人が「大島てる」に投稿したりするから、いい迷惑です(笑)。



夏原:事故物件を教えてくれる正直な不動産会社に見えるけど、そもそも広告自体が嘘だという。“逆・正直不動産”だ(笑)。それ、漫画のネタで使わせてもらいます。


大島てる:五反田の土地のような有名なところで、なぜ積水ハウスのような大企業が騙されたのでしょうか?


夏原:この事件がどうかわかりませんが、普通だと気がつくような話でも、不動産会社は売り上げ目標などで追い詰められると信じてしまうことがあるんです。やはり数十億単位の金が動きますからね。


大島てる:正常な判断ができなくなるのでしょうか。


夏原:あとは裏社会から付け込まれるというのもある。常連のお客さんが実は暴力団関係者で、人間関係の中で、だんだんといろいろな要求をされるようになるということがあるんです。まずは別人名義で部屋や事務所を借りるのを仲介するとか、軽いところから始めて、逃れられなくなっていく。


大島てる:そうした裏社会のやり方があるんでしょうね。


夏原:大きな嘘といえば、昔は原野商法というのがありましたね。将来値上がりすると言って、二束三文の原野を売りつける。今年も北海道で怪しい不動産の儲け話が出てました。なぜ五輪も万博も関係ない北海道なんだろうと思ったら、「カーリング場を作る計画がある」と言って、声をかけているらしい。今年は平昌五輪でカーリング娘が話題だったから、それで話を作っている。もう、どこからでも儲け話を作り出しちゃう。あんな大きい北海道でカーリング場の影響なんてごく一部だろうと突っ込みたくなります(笑)。


 普通に考えれば、そんな話には乗らないんでしょうが、不動産を金儲けの手段としてしか見られなくなると、やはり危うい。不動産は、人が住んで、生きていく場所なんだという意識がなくなっているんでしょうね。



大島てる:『正直不動産』単行本第2集の帯に「『成功している人は、なぜ正直者なのか?』が解る作品だ」と推薦コメントを寄せさせていただきました。これ、半分は皮肉なのです(笑)。でも、『正直不動産』主人公の永瀬財地は嘘が上手くつけなくなっても頑張っていますから、なんとか成功してほしいです。この先の展開では、会社をクビになって路頭に迷ってしまうのかもしれませんが(笑)。


夏原:私もせめて漫画の中だけでも、正直者が成功してほしい。でも、そんなに上手くは行かないだろうな。


【プロフィール】

おおしま・てる/事故物件公示サイト「大島てる」管理人。殺人、自殺、火災死、孤独死などがあった物件を“事故物件”として、日本全国のみならず海外までを扱い、WEB上で公示する。


なつはら・たけし/作家、ルポライター。裏社会に詳しい。著書に、『バブル』、『現代詐欺師シノギの手口』など。「ビッグコミック」連載中の漫画『正直不動産』では、原案を担当。漫画原作担当作品に、『クロサギ』、『逃亡弁護士成田誠』など多数。


◆取材・文/小野悠史、撮影/三輪憲亮

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