架空債務請求ハガキ 「カモリスト」作成のデータにもなる

12月28日(金)7時0分 NEWSポストセブン

架空債務請求ハガキは古典的な特殊詐欺だが...

写真を拡大

 架空請求ハガキによる特殊詐欺は、手口が広く知られていることもあり、騙される人が少なくなったもののひとつだろう。ところが、手段の簡単さも手伝って現在も続いており、最近ではそこに、別の目的も加わって、消滅する気配がない特殊詐欺となりつつある。「コールセンター」勤務経験がある男性などが語る、架空請求ハガキが持つ複数の目的について、ライターの森鷹久氏がレポートする。


 * * *

「いや…アホくさくなったというか…。こういうことはやっぱやっちゃダメだなって…」


 今回筆者のインタビューに応じてくれたのは、つい最近まで、とある「詐欺」事案に加担していたという、神奈川県在住の男性・A氏(30代)。不動産投資業者への就職が決まり、昨年の春に上京したのはよかったが、あまりの激務に半年で体調を崩すと、日雇いの建設作業員などをやって何とか食いつないできた。実は実家には妻と子供を残してきており、月に数万の「仕送り」を約束していた。日雇いでは十分な給与が得られないということで、ネットで見つけた「シゴト」に応募したのが始まりだったという。


「架空債務請求ハガキ、テレビや新聞でやっているから知ってますよね? あれの電話番みたいなことをやっていたわけです。時給は1000円ほど。ネットの掲示板に“高給”やら“日払い”と書いてあったのですが、実際は給与は普通…。それで詐欺やんなきゃって。二〜三十代の人が何人かいましたが、私語は厳禁だったので素性は知りません。みんな、同じようにネットの求人を見てやってきたようではありましたが…」(A氏)


 話題の事案についてあまりにもあっけらかんと話すA氏に驚いたが、A氏にとってはなんとなくやっていた「シゴト」以上でも以下でもない、そんな口調である。


「電話がかかってくると管理センターです、とか、訴訟センターとか言って受けるんです…。日によって受け方が違うんですよね。相談センターって言ってた時もあったかな? それでまず、名前と住所を言ってもらう。パソコンに住所を打ち込み、該当がなければ、それ以上電話をする必要はない、といわれていました。該当があれば、担当者に変わらなければいけないんです。最初は何をやっているのかよくわかりませんでしたが、途中から変なことやってるなって気が付いて…」(A氏)


 ちょうどそのころ、テレビで見かけたのが「架空債務請求ハガキ」の報道だった。記者らしき人が電話をかけている先は、まさに自分がいる場所だったのである。


「(受話器から)電話のコール音とか、ガヤガヤって音がしてたんですよね。僕がいた場所でも“コールセンター”っぽい音をラジカセからずっと流していたんです。あ…同じだって」(A氏)


 A氏は、自身が詐欺の片棒を担いでいると気が付き辞めようと決意。しかし「室長」を名乗る上司は、A氏の退職を許さなかった。辞めるなら代わりを連れてこい、と迫ったり、損害金を要求してきたのである。身の危険を感じたA氏はそのまま仕事を“バックれ”たが、その後、仕事先から連絡が来ることは一度もなかったという。


 ところで、今なお全国各地に送り付けられている「架空債券請求ハガキ」だが、いわゆるオレオレ詐欺(特殊詐欺)同様、これが「詐欺」だということは世間も広く認知されている。筆者が以前取材をした事情通は「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」で、何百、何千通の詐欺ハガキ送りそのうち一通が、例え10万円でも詐取できるなら意義はある、と答えたが、他の事情通の見方は別だ。


「これは新たなカモリストの作成のためにやっているのです。ハガキを出した先はすべてエクセルなどにデータとしてまとめられており、電話がかかってきたら、相手が送り先かどうか、名前と住所を確認します。これで何がわかるか? それは、あのようなハガキにも騙される可能性があるターゲットかどうか、ということです。住所と名前、電話番号のほかに、その人物が“騙させる可能性があるのか”はデータとしては非常に重要で、よりカモにしやすいターゲットを絞り込む作業ということになります」


 九州北部地方に住む主婦の女性(60代)は、自宅に届いた架空請求ハガキに電話をしてしまったが、金を振り込むなどの指示を受けなかったと話す。


「身に覚えがないというと“データの間違いかも”ということで親切に応じてもらいました。預貯金はいくらあって、どの銀行に預けているのか、今まで詐欺にあったことはあるか…。金を振り込めなどの指示はなく、詐欺にあっている可能性もあるから、一度相談員が訪ねるかもしれないとまで言ってくれて」


 このように、詐欺師たちは電話をかけた相手によって、フレキシブルに対応を変えている可能性がある。今すぐカネが取れそうなら、ありもしない口実を並べ立て入金するよう口座番号を伝えてくる場合もあれば、口座残高など巧みに聞き出して「次につなげる」為の情報収集にあたるのだ。


 前出の主婦は、オレオレ詐欺に引っかかったこともなく、どちらかといえば慎重な方だと自負していた。しかし、相手が詐欺師ではなく相談できる相手だと勘違いした途端に、自らの個人情報を、それこそ詐欺師側が喉から手が出るほど欲しい情報を、べらべらと喋ってしまった。


 詐欺の形は、ある意味で日々進化し、巧妙性が高くなっている。まずはこのような「隙」を作らないことが、詐欺事件の被害者にならないための大前提だろう。

NEWSポストセブン

「架空」をもっと詳しく

「架空」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ