三人っ子政策を導入? 急速に高齢化する中国の大問題

1月11日(金)6時12分 JBpress

金豚年にあやかって全身ゴールドのピカピカ豚の貯金箱。金運、子宝に恵まれるという(筆者撮影)

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 「『金豚』の年は、経済だけでなく、金運もアップする!」

 春節が迫る中、中国やアジア圏の友人は、新年が待ち遠しくて仕方がないという。

 日本では新年は新暦(太陽暦)のため1月1日だが、中国をはじめ香港、韓国、台湾、シンガポール、べトナム、マレーシア、インドネシア、カンボジア、ネパールなど多くのアジア諸国(華人系)は、旧暦(太陰暦)のため、今年の新年(春節)は2月5日。

 特に中国では、1年で最も重要な行事の一つで、故郷を目指す帰省ラッシュは「春運」と呼ばれ、春節期間にのべ数十億人が大移動。全国で交通機関が麻痺することで知られる。

 中国では、1週間ほどの正月休みとなるが、イスラム圏のマレーシアやインドネシアでも華人系の正月として、2月5日は祝日だ。

 しかも、今年の干支は「豚」。日本の干支は「イノシシ」だが、西遊記の「猪八戒」を思い出してもらえればお分かりのように、中国語では「猪」とは「豚」のこと。ちなみにイノシシは、中国語で「野猪」という。

 なぜ日本だけイノシシになったか。定説はないが、「家畜のブタを飼う習慣がなかった日本は、野生のイノシシを捕獲し、タンパク源にしていたから」というのが有力な説のようだ。

 さておき、この「豚」。イスラム圏では不浄とされ、豚をあしらった縁起物を控える業者も一部あるが、中華圏では十二支の中でも豚は「金豚」「黄金豚」といわれ、「豚が夢に現れると大吉」とされるほど、経済上昇や金運アップの象徴と知られる。

 さらに、「黄金豚年生まれ」は、「大金持ちになる」とも伝えられ、師走真っ只中の中国やアジア圏では、黄金豚の置物や貯金箱が大人気で、売り切れ御免の店舗も続出しているようだ。

 筆者も縁起を担ごうと、初めて「金豚」をゲットした。

 中国人などアジア圏の華人が信じてやまない風水では、今年の豚年のラッキーカラーはまさに、「金」「赤」「白」という。

 街中やスーパーなどには、例年にも増して金や赤色が眩いばかりに輝き、ギラギラの春節商戦を煽っている。

 豚は、子沢山でも知られ、「豚年の出生率は上がる」というジンクスもある。

 赤ちゃん用品の関連企業株も上昇するとされ、まさに「金豚株」は注目株だ。

 特に中国では、米中貿易戦争勃発で今年の経済動向に暗雲が立ちはだかる。建国以来、70年ぶりの人口減が明らかになる中、国家の存続をかけ、「金豚年」に望みをかけている。

 春節を前に中国郵政が発行したその記念切手には、2匹の親豚と愛らしい「3匹の子豚」が描かれた。

 このことから、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)などソーシャルメディアでは、将来的な労働人口減少による経済低迷、国力の後退を危惧し、「政府が二人っ子政策や産児制限を完全に撤廃し、『三人っ子政策』を新たに導入するのでは」と話題になっている。

 中国政府は2016年、40年近く続いた一人っ子政策を廃止し、夫婦に2人目の子供を容認した「二人っ子政策」を導入した。その際にも、事前に発表された申年の切手に、小猿2匹を描いていた。

 今回、3匹の子豚が描かれたことから、三人っ子政策が導入されるのではないかとみたわけだ。

 しかし、一人っ子政策の廃止による効果は政府の期待を裏切っている。

 2016年の中国の出生数は、前年比で130万人多い1790万人だったが、増加数は予想の半分以下にとどまった。2017年は2000万人を見込んだが、1700万人に減少してしまった。

 さらに、今年に入って米国のウィスコンシン大学の易富賢氏ら人口統計専門家が、「2018年の全土の出生数は前年比で79万人増加するとの政府予測を裏切り、250万人減少した」と香港メディアなどで発表。

 今月中に予想されている中国国家統計局の2018年の人口統計公式発表を前に、中国の昨年人口が、建国以来初めて70年ぶりに減少したことを明らかにしたのだ。

 その上で「少子高齢化の波は加速化し、中国経済の活力は弱体化し、人口動態上の危機でもある」と警鐘を鳴らした。

 また、中国の出生率は「2000年以降、日本より低い状態が続いている。中でも2010年から2016年の平均は『1.18』で日本の1.42をはるかに下回った」とも指摘した。

 そんな中、中国が「金豚年」にあやかり、二人っ子政策を廃止しても、その効果は望まれないのが現実ではないだろうか。

 中国だけではなく、韓国、シンガポール、タイ、台湾、最近では多産のイスラム圏のマレーシアでも少子高齢化の潮流が懸念されている。

 このように、中国でも高等教育を受けた大都市圏の女性は、仕事を最優先するだけでなく、若い夫婦にとって高騰する教育費や住宅費用が大きく家計を圧迫していることから多産に向かうのは難しいとみられる。

 さらに、心理的な作用として、「一人っ子が理想」だとする長年の概念を取り払うだけの大家族や子育てによるメリットより、デメリットが危惧されている現状がある。

 筆者の友人で、北京に住む共働き夫婦も、日頃、こうつぶやく。

 「住宅費の高騰だけでなく、保育施設不足に加え、将来的に高齢化する『4人の親』の面倒を見る資金に備え、2人の子供より、1人に経済的、精神的支えを集中したい」

 さらに、長年の「一人っ子男子優遇政策」が中国の男女比を狂わせた。

 男の子を持ちたいという伝統的な考え方から、作為的な中絶や流産で、出産可能な女性の絶対数が極端に少ないのだ。

 そのため、最近では中国人男性とベトナム人女性の強制的な結婚が国際問題に発展しているほどだ。

 こうした状況に、出生率が最も低い遼寧省では昨夏、減税、教育費、さらには住宅費の補助や出産・育児休暇の延長など、助成策を打ち出した。

 また、江西省は、人工中絶規制を強化する指針を発表。女性が人工中絶を希望する場合、医療従事者3人の同意署名を義務づけた。

 男児の出産優遇阻止の策というが、「国家の人口計画達成が目的だ」「女性は、自分の卵巣の選択肢もないのか」などと、ウェイボーなどで批判が殺到、炎上した。

 そんな中、今年1月4日、中国の中国社会科学院は「中国の人口は、2029年の14億4000万人をピークに減少に転じ、労働力減少は中国経済に重大な影響を与える」と政府に異例に、国家の制度改革を求めた。

 こうした経済後退や国力低下の危機感から、国に頼らず独自に少子化対策を実施する企業も現れた。

 世界有数の中国のオンライン旅行企業、「シートリップ」はこのほど、社員の子供が学齢期を迎えた際、ボーナスを支給するほか、中国企業初の取組みとして、女性管理職の「卵子凍結」費用補助を決めたことを発表した。

 前述の在米の人口統計専門家、易氏は、「一人っ子政策が、中国の深刻化する少子高齢化の主要因」と指摘した上、「中国の人口減少傾向は、日本が20年前に直面した問題と類似し、中国の製造業界も将来的に、深刻な労働力不足に喘ぐだろう」と警告する。

 しかし、筆者は以前にも指摘したが(「悲惨極まりない中国人の老後 失踪死亡が多発」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51859)、特に中国と日本社会の高齢化の実態には大きな違いがある。

 中国では、「未富先老」。すなわち、「国民が裕福になる前に、高齢化が先に訪れる」。そのため先進国になって高齢化に突入した日本とはわけが違う。しかも、その規模が比較にならない。

 中国では2050年、日本の人口に相当する約1億2200万人が、「80歳以上の後期高齢者」で占められる。実に中国の人口の約9%にもなる。

 また、中国民生部傘下の研究機関、中民社会救助研究院によると、「中国では毎日1300人以上、年間で50万人が失踪する」と悲惨な実態が明らかになっている。

 行方不明の8割が65歳以上の高齢者という。

 今後、経済成長率が低下し、社会保障制度への不満や懸念が高まったときこそ、一党独裁の共産党体制の存続が危ぶまれるだろう。

(取材・文・撮影 末永 恵)

筆者:末永 恵

JBpress

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