韓国側提案の徴用工解決策、日本が乗れない理由

1月16日(木)6時0分 JBpress

1月14日、年頭の記者会見を行った文在寅大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

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(李 正宣:ソウル在住ジャーナリスト)

 元徴用工への賠償判決をめぐって日韓両国が鋭く対立している中、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領が「日韓共同協議体」への参加意向を明かした。これにより、これまで新しい解決法として取り上げられてきた文喜相(ムン・ヒサン)韓国国会議長の案は事実上却下され、徴用工問題は再び原点に回帰した。


「日本も解決案を示して韓国と膝を交えるべきだ」

 1月14日、韓国大統領府で「年頭の記者会見」に臨んだ文在寅大統領は、国内外の諸問題に対する記者たちの質問に答えながら、日韓関係について次のように言及した。

「韓日間には、強制徴用判決の問題をどう解決するかという問題があり、その問題によって日本の輸出規制という問題が生じ、それがWTO提訴とGSOMIA(日韓軍事情報保護協定)問題へとつながった」

「まず、日本の輸出規制とGSOMIA問題など、比較的容易に解決できる問題を早期に解決すれば、両国間の信頼回復に大いに役立つと判断される」

「(徴用工賠償判決について)韓国政府はすでに数回にわたって解決策を提示してきた。また、原告側の代理人だった韓日の弁護士たちと韓日の市民団体も共同協議体の構成などの解決策を提示した。韓国政府はその協議体に参加する意向がある。とにかく日本もそれに対する解決策を示しながら、韓国と膝を交えるべきだ」

「最も大事なのは、被害者の同意を得るための解決策を作り出すことだ。被害者らの同意がなければ、韓日の政府がいくら合意しても問題の解決に役立たないということを、慰安婦の合意で切実に経験した」

「(韓国裁判所の)強制執行手続きによって(日本企業の財産が)強制売却されるまで、それほど時間的な余裕がないため、そのような韓日間の対話がよりスピーディーに促進されることを望む」

 文在寅政府は徴用工賠償判決の問題解決の三原則を保っている。①最高裁判所の判決を尊重、②被害者の実質的救済、③日韓関係への考慮、という3つだ。

 しかし、徴用工問題によって触発された日韓間の葛藤を解決するに当たって、この三原則をすべて満たす解決策を見出すことはほとんど不可能だ。


韓国内で不評だった文喜相案は却下

 特に、「最高裁判所の判決を尊重」という原則は、日本政府にとっては受け入れ難い。日本は徴用工問題は1965年の日韓請求権協定で終結されており、したがって韓国最高裁の判決は「国際法違反」と見ているからだ。結局、文大統領が「すでに何度も解決策を提示した」と主張する韓国政府案はすべてこの三原則を骨子とする内容なので、日本政府にとってはこれまでの戦後体制を否定するものでしかなく、決して受け入れられない案だった。

 そこで日韓政府が一歩引き、両国の企業と国民の自発的な参加で財団を設立し、徴用工に慰謝料を支払うという、いわゆる「文喜相案」が昨年末、韓国の国会で発議された。

 しかし、元徴用工側と市民団体らは「日本側が強制動員を認めて謝罪するのが先だ」として、この案を拒否した。文在寅大統領府も「最高裁の判決を無力化させる」と、反対意思を示した。これに対し、案を提案した文喜相氏本人が直接、「日本の謝罪を前提にした法」「発議は完成ではなく開始段階にすぎない、修正可能で中断される可能性もある」と、一歩後退した。

 結局、この日、文大統領は、文喜相案が霧散したことを明かすとともに、原告側の弁護人と市民団体による「共同協議体」の構成に参加する意向を示し、日本政府にも参加を促した。すなわち、共同協議体による問題解決策を提示したのだ。


韓国側の案に日本政府は「全く興味ない」と即答

 この1月6日、民弁(民主社会のための弁護士会)と左寄りの歴史観で韓国社会でも物議をかもしている民族問題研究所などが中心となった「強制動員問題の正しい解決を望む韓日関係者一同」は、日韓両国で記者会見を開いた。

 彼らはこの席で徴用問題に対する日韓両国の共同協議機構の創設を提案した。同機構の構成員として想定しているのは、原告側弁護士と支援者、その他の日韓の弁護士、学者、経済界および政界の関係者などとしている。

 韓国メディアによると、彼らは①加害者(日本政府と企業)の事実認定および謝罪、②謝罪の証拠として賠償の実施、③強制動員という事実と教訓を後世に継承するための具体策などによる問題解決を目指すという。韓国政府に対しては被害者の権利救済を疎かにしてきた道義的責任を、日韓請求権協定によって恩恵を受けた韓国企業にも責任と義務を要求している。

 つまり、この共同協議体が作り出す解決策とは、すでに日本側から即時に断れた韓国外交部の「1+1」案(日韓の企業がお金を出し合って財団を作り、元徴用工らへ賠償する)とほぼ類似な案になるだろうと思われる。

 実際、翌7日、日本政府は素早く「全く興味がない」と答えた。にもかわらず、その一週間後、文大統領はこの「新解決策」をもう一度日本側に押し付けた。

「自分が長考して下した判断は絶対的な善なので変更ができない」

 かつて、民主党代表時代の文在寅氏に対する、ある民主党の重鎮議員が下した評価が、ここにきて再び立証された瞬間だった。

筆者:李 正宣

JBpress

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