欧州の環境意識が高い理由

1月17日(金)6時0分 JBpress

南米アルゼンチンのパタゴニア氷河

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 日光で天然氷が取れず、大変に困っているとの報道がありました。(https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/265067)

 氷の切り出しには14センチ以上の厚さが必要なのだそうです。

 しかし1月11日に切り出そうとしたところ、氷の厚さは6センチと半分に満たず、例年なら1月上旬に1回目の切り出しが終わり、2回目の生産に入る時期なのに、人が乗ることができる厚さにも氷が成長していない。

 1週間寒さが続けば何とかなると生産者は言います。下野新聞は、寒気の到来を願って結ばれていました。

 こうした現象は日光、あるいは東日本だけに限りません。

 山陽新聞は岡山県北での雪不足によるスキー場の開店休業状態を伝えています。(https://www.sanyonews.jp/article/974806)

 3連休初日の段階で、積雪ゼロ。ゲレンデが整備された1989年以降、こんなに雪が少ないのは初めてではないかと関係者は頭を抱えているとのことです。

 大芽スキー場では2015〜16年のシーズンに、1日も開業できなかったという非常に苦い経験があるとのことですが、「あのときですら、今頃少しは雪があったのに」という状態で、事態は相当深刻になっています。

 もちろん、気候は毎年変動し、来年以降も厳寒の冬は間違いなく訪れるでしょう。しかし、全体としてみたベースラインの「地球温暖化」は間違いなく進んでいる。

 長野のワカサギ釣りの湖は氷が張りません。雪が名所の白川郷は、茶色い土色の冬景色になっている2020年の初春。

 オランダ、アムステルダムでは「地球環境を守るため、飛行機には極力乗らず陸上移動する」という人が急速に増えています。

 日本ではそんな声は聞かれません。環境へのグローバルな配慮が、日本は欧州よりはるかに遅れている印象があります。

 では、欧州人の倫理水準が高く、日本人はモラルに劣る民族なのでしょうか。

「そうではないだろう」と、アムステルダムの友人たちは指摘しました。

「問題は緯度にある」。なるほど、と思いました。


高緯度地方で顕著な「気候変動」

 改めて考えるなら、いろいろと話題になった「グレタ・トゥーンベリ」ちゃんもスウエーデンの少女環境活動家です。

 ちなみに、スウェーデンの首都、ストックホルムの北緯はどの程度だと思われますか?

・・・北緯59度20分。

 北海道の大半は北緯40度代半ばで、最北端の稚内、宗谷岬でも45度31分。北緯50度といえば、演歌に歌われる極寒の漁場で、カムチャツカ半島の主要都市、ペトロパブロフスク・カムチャツキ—でも北緯53度。

 これに対して、フィンランドの首都ヘルシンキは北緯60度で、10の位の数字が日本とは相当違っています。

 東京が北緯36度に対して札幌は北緯43度で7度ほどの違いですが、日本最北端の宗谷岬と、ストックホルムやヘルシンキとの間には緯度にして15度近くの違いがあり、東京と札幌の2倍ほども日本の最北端よりさらに極北の地ということになる。

 欧州は日本より数年早く、いまのような雪不足など社会経済にはっきり影響が出る気候変動による変化を迎えていました。

 例えばスキー場。2014〜15年にはすでに雪不足は深刻で、直接的には観光客の足取りに影響が出ますし、農業をはじめとする産業にも露骨な影響が避けられません。

 卑近な例を挙げましょう。ドイツでは大晦日など、年末年始に花火を打ち上げて祝います。ロケット花火や爆竹などでうるさくて仕方ないことになります。

 2000年代のベルリンでは、こうした花火は大概、道端に降り積もった雪を交通のために雪かきして集めた、路傍の小山のような雪塊に差して発射していたものでした。

 地面は凍りつき、融雪車輛が活躍、塩をまいて凝固点を降下させ、扱いやすくした雪や氷を砂利などと一緒に除雪するのが普通でした。

 当然ながら自転車などは一切使い物になりません。ベルリンの冬と言えば、そういうものだった。

 ところが近年のベルリンでは、およそ雪など降りません。道路も凍りませんし、塩をまく風景も見なくなりました。

 真冬でも自転車で動く人が沢山いますし、年末年始の花火も風物詩だった雪上での打ち上げもトンと見ない。

 こんな議論をしているアムステルダムですら、北緯52度、とてもではないですが、日本の北限よりはよほど北に位置します。

 ただ、メキシコ暖流のために、欧州ではアルプス以北では、むしろ北が温かい地方がある。バルト海も不凍港で繁栄したわけで、もちろん東アジアの緯度と寒さを欧州に直結するつもりはありません。

 ことは単純な緯度だけの問題ではなく、アメリカ西海岸北部の主要都市シアトルなどは北緯47度もありますが暖温帯に分類されているようです。

 ただ、間違いなく言えることは、「温暖化」の影響は元来「亜寒帯」など、水の凝固点をまたぐ気温エリアでの変化の方が、より顕著に観測されることでしょう。

 もっと露骨に言うなら、雪が降り氷が張っていたエリアが、みぞれや雨になり、氷結しなくなってしまえば、土地の風土や季節感、それに伴う産業や経済にも露骨な影響がいち早く表れてしまう。

 善くも悪しくも日本は「東京」を中心に動き、思考も東京中心にめぐります。

 東京をはじめ日本の大半は温帯に属し、根雪をいただいたりはしないので、その変化にピンと来ず、結果的に「環境倫理」も後手になりやすかった。

「気候変動対策もセクシーに」などという話は、そのような「分かりにくい温暖化」での話だったと言えるでしょう。

 しかし、日光の天然氷が作れなかったり、その結果、夏のかき氷がとんでもない値段になったり、私たちの実生活に影響が出始めれば、早晩リアルな問題として認識しないわけにはいかなくなります。

 年が明け、昨年の台風19号、犠牲者がついに99人に達したとの報道がありました。

 関連の問題を本質的に検討し直すべきところに、温帯の日本も差しかかりつつあるように思われます。

(つづく)

筆者:伊東 乾

JBpress

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