<コラム>ニュース中国語事始め=記事でよく見かける「新エネルギー車」って何?

1月17日(木)23時20分 Record China

中国語の記事を読んでいると<新能源汽車>という言葉がよく出てきます。さて、いったい何を指すのか。<新>は問題ない。<汽車>が「自動車」であることをご存じいの人も多いだろう。問題は<能源>です。写真は中国の電気自動車。

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中国語の記事を読んでいると<新能源汽車 xin1neng2yuan2 qi4che1>という言葉がよく出てきます。さて、いったい何を指すのか。<新>は問題ない。<汽車>が「自動車」であることをご存じいの人も多いだろう。問題は<能源>です。

<能源>は「エネルギー資源」「エネルギー源」のことです。<能量 neng2liang4>。つまり「エネルギー」という語から派生した言葉です。日常用語でも「エネルギー」の語は盛んに使われていますが、元は物理学用語。「仕事をすることのできる能力」と定義されています。物理学用語としての「仕事」にもはっきりとした定義がありますが、ここでは割愛します。

理系の用語が続いてしまいましたが、この「仕事」という言葉はご説明しておきたい。日常用語の「仕事」は中国語で<工作 gong1zuo4>で、物理学用語の「仕事」は<功 gong1>です。近代以降、中国語が日本語から大量の単語を導入したことは、割とよく知られています。でも「仕事」については日常用語でも物理学用語でも、中国語は日本語を“シカト”している。なぜなのか。

中国語が大量の日本語単語を導入したのは、西洋の文化文明を導入するにあたって大量の用語が必要になったからです。全体としては日本の方が訳語創出でかなり先行していました。中国人は日本人が考案した漢字を使った訳語を取り入れたわけです。

ただ、中国語として意味が通じない言葉は、導入できません。そのひとつが「仕事」だったのです。この言葉、使っている漢字は、いわゆる当て字です。日本語には、動詞連用形を名詞として用いる方法があります。そのようにして成り立った名詞を他の名詞とつなぎ合わせて新たな言葉にすることも、よくあります。

例えば「切れ味」。動詞の「切れる」の連用形は「切れ」です。まず「切れ」の形で「切る」という行為を抽象名詞化して、それを「味わい」の「味」と合体させたわけです。では「仕事」とは何か。「する」の連用形である「し」と「こと」をくっつけたわけです。要するに「すること」です。だから「仕」の部分は当て字。<仕>の字義は「身分の高い人につかえる」「役人として奉職する」ですから、サラリーマンや官僚の「お仕事」なら中国語としてもOKかもしれませんが、やっぱり変。だから中国語に取り入れられなかったわけです。

それから日本語の物理学用語としての「仕事」。元の単語は英語で言えば<work>です。幕末から明治の初冬に日本人が英語で書かれた物理学の本を読んだら<work>という用語がある。「<work>とは『仕事』のことでござろう。しからば、理学書に出てくる<work>も『仕事』とすればよろしいでござる」てな具合だったわけです。もちろん、中国語としてはどうにも変なので、中国では物理学用語の<work>の訳語が<功>となったわけです。

横道がずいぶん長くなりましたが、中国語の<新能源汽車>は本来、「新エネルギー源車」とでも訳すべき語です。ただ、中国語では<能源>を「エネルギー」の意味で用いている場合がありますから、「新エネルギー車」としても、誤訳とまでは言えないでしょう。

ただ、ここで問題になるのが「新エネルギー車」が何を指しているかです。私は、中国関連の記事で「新エネルギー車」の語を見るたびに「いいのかなあ」と思ってしまいます。新たな概念を示す語が出てきた場合、定義などの説明なしで使ってよいか、記者はよく考える必要があります。

日本国内で登場した新語なら、「読者は理解できるだろう。この語を解説している文章も普通にあるし」と考えることもできますが、外国で発生した新語を直訳するだけで済ませてよいかどうかは別の話です。私は「基本的に解説をつけるべき」と考えます。

さて、この<新能源汽車>ですが、中国では「通常の自動車用燃料を動力源としない自動車」などと解説され、具体的には<混合動力電動汽車 hun4he2 dong4li4 dian4dong4 qi4che1>(ハイブリッド車)、<純電動汽車 chun2dian4dong4 qi4che1>(電気自動車)、<燃料電池電動汽車 ran2liao4 dian4chi2 dian4dong4 qi4che1>(燃料電池車)などと説明されてきました。

ハイブリッド車については、しばらく前まで、「特に<挿電式混合動力電動汽車 cha1dian4shi4 hun4he2 dong4li4 dian4dong4 qi4che1>(プラグインハイブリッド車)を指す」などとする説明文もよく見たのですが、その後、単に<混合動力電動汽車>とするのが一般的になりました。

なお、これらの名称は、<電動車(=純電動汽車)>、<混合動力電動車(=混合動力電動汽車)>のように、短く表現される場合もあります。

さて、この文章も本来ならば、このあたりで打ち止めにしてよかったのですが、そうもいかない事情が発生してしまいました。中国政府・国家発展改革委員会が2018年12月に<汽車産業投資管理規定>(自動車産業投資管理規則)>という文書を発表したのです。この文書はそれまでの“常識”とは異なり、ハイブリッド車を<新能源汽車>に含めず、「伝統的な燃料油を燃やす自動車」に分類しました。

私がこの文章を書いている2019年1月時点では、中国政府が今後、ハイブリッド車をどのように扱うか予断を許さない状態ですが、「従来型の自動車」に分類して、<新能源汽車>に対するさまざまな奨励策の対象にはならない可能性が濃厚になってきました。

中国政府が<新能源汽車>を重視する理由は大きくふたつがあるとされます。ひとつは環境対策で、もうひとつは自国産業の育成です。

中国で<新能源汽車>として最も重視されているのは電気自動車です。おそらくは、技術や経験の蓄積がある外国の自動車メーカーに最も対抗しやすいとの、政策面の判断があるでしょう。中国は自動車の駆動方式としては電気自動車を先行させ、同時に自国にとって“得意科目”であるIT技術を駆使した<自動駕駛技術 zi4dong4 jia4shi3 ji4shu4>(自動運転技術)を確立しようとしています。

ピンインの表記について:本コラムでは中国語を<>の中に、日本語の常用漢字の字体で表示しています。以下の部分のピンインについては、ローマ字表記の直後に声調を算用数字で添えます。軽声は0とします。 u の上に2つの点を添えるピンインには v を用います(例:東西=dong1xi0、婦女=fu4nv3)。

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