日本が見捨てられる… 米中会談直後発生、驚天動地の出来事

1月19日(金)7時0分 NEWSポストセブン

トランプは南シナ海を中国に差し出した可能性がある The New York Times/AFLO

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 日本人はいつまでも米国が守ってくれると思い込んでいるのではないか。しかし、現実を直視する必要がある。米中は急激に接近し、両国の新型大国関係は事実上始まっている。京都大学名誉教授の中西輝政氏が警鐘を鳴らす。


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〈2049年の建国百年までに社会主義の現代化強国を築く。中華民族はさらに活力を増し、世界の諸民族の中でそびえ立つだろう〉


 昨年10月、中国共産党第十九回党大会の初日、習近平総書記は3時間半に及ぶ大演説でこう宣言した。


 この党大会で習近平は独裁体制を完全に確立し、今後は中国が世界一流の軍事、経済、政治大国になり、米国に代わる超大国として世界秩序を変えていくとの野望を見せつけた。


 中国が長期的な戦略で「百年マラソン」をひた走る一方、世界唯一の超大国アメリカの繁栄には翳りが見える。その事実を認めたくない米国民は、「米国を再び偉大な国に」とのスローガンを掲げたトランプを大統領に押し上げたが、時代の趨勢は長期的に見て明らかだ。


 特にトランプ政権発足後は国の内外で摩擦が相次ぎ、「パクスアメリカーナ(米国の覇権による平和)」の終わりが近づいたことを感じさせる。


 急速に台頭する中国と緩やかに衰退する米国が激しくせめぎ合うのが朝鮮半島だ。文在寅大統領の誕生後、中国に急接近した韓国は米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の追加配備を容認しないなど「3つのノー」(※注)で習近平に秋波を送った。


※注/昨年10月の中韓首脳会談で交わしたとされる3つの合意。(1)THAADを追加配備しない(2)米国主導のミサイル防衛に参加しない(3)日米韓の連携を軍事同盟に発展させない、の3点とされる。


 極東で中国が韓国を手中にして、「日米韓の連携」が崩れることは、日本にとってもはや、足元の脅威である。そしてさらなる悪夢を予感させたのは、2017年11月の米中首脳会談だ。


 トランプ政権の誕生時、日本の「安倍応援団」と呼ばれる一部保守派の論客やメディアは、「彼なら中国に強硬に出て抑え込んでくれる」と手を叩いた。クリントン、ブッシュ、オバマと中国に“甘い”政権が続いた後、「ついに本格的な対中強硬政権が登場した」と歓迎したのだ。


 だが期待は無残に裏切られる。首脳会談でトランプは、習近平を「世界的指導者のひとり」と持ちあげ、中国が唱える「米中新型大国関係」を受け入れる姿勢を示唆した。日本の保守派は深く落胆した。


◆金融市場と南シナ海をディール


 だが、米国の「政権の本質」と「国益の構造」を理解していれば、米中両大国の接近は予測されたことだ。


 米国の対中戦略を支える柱は2つある。ひとつは外交・安全保障で、ワシントンの国務省、国防総省が担う。もうひとつは金融で、ニューヨークのウォール街が主役となる。


 中でも、トランプ政権の本質は、金融利権と対中権益の確保であり、その証拠に親中派でウォール街に近いキッシンジャー元国務長官の人脈や娘婿のクシュナー上級顧問が政権中枢で幅を利かせている。


 かわりに政権発足時に脚光を浴びていたスティーブ・バノンやピーター・ナバロといった対中強硬派は政権外に追いやられたか格下げされた。トランプ自身、ニューヨーク出身のビジネスマンなのだ。


 日本のメディアはあまり報じなかったが、米中首脳会談の直後、実は「驚天動地」の出来事があった。中国財政省が国内金融市場への外資企業の参入規制を緩和すると発表したのだ。


 中国で外資の金融機関が証券=投資業務を手掛ける場合、中国企業との合弁会社を設立する必要がある。これまで合弁会社の外資出資比率は49%が上限だったが、それを緩和して51%に引き上げ、将来的には外資が100%出資する現地法人の設置を認めるという。実はこれは画期的なことであり、今後の中国と米国の関係に大きな転機をもたらすだろう。


 今回の首脳会談では中国がボーイング社から航空機300機を購入するなど約28兆円の巨額商談が成立し話題となったが、人口約14億の国の金融市場が開放されれば、はるかに巨大なインパクトを持つ。「28兆円の買い物」などとは一桁も二桁も違う大マーケットの開放なのだ。


 ウォール街の喜びようが目に浮かぶ。世界経済の核心である金融利権で固く結ばれることで米中の一体化はより進むはずだ。


 これほどの大型事案が成立したのは、習近平とトランプの間に何らかの「グランド・ディール」(大取引)があったからと考えられる。そこで浮上するのが、南シナ海だ。


 中国にとって南シナ海は軍事戦略上、極めて重要だ。核ミサイルを搭載した原子力潜水艦が潜伏できる水深の深い海は、中国の近海でそこしかないからだ。金融市場を開放する代わりに中国は、南シナ海における軍事的プレゼンスを米国に認めさせたのではないか。


 事実、最近は南シナ海における米軍の「航行の自由作戦」の頻度が下がり、監視活動が希薄化している。もうこれ自体が、大変気がかりな兆候であるが、もしそんな米中の「ディール」が現実に移されると、気がかりではすまない。


■なかにし・てるまさ/1947年大阪生まれ。京都大学卒業。ケンブリッジ大学大学院修了。京都大学大学院教授を経て、現職。近著に『アメリカ帝国衰亡論・序説』(幻冬舎)、『日本の「世界史的立場」を取り戻す』(祥伝社、共著)がある。


●取材・構成/池田道大(フリーライター)


※SAPIO2018年1・2月号

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