北朝鮮の15歳高校生「緩慢な処刑」で家族も道連れ
2025年1月20日(月)5時3分 デイリーNKジャパン
先月末、北朝鮮・黄海北道(ファンヘブクト)の松林(ソンリム)市にある松林金属技術大学で、「反動思想文化排撃法」の違反状況に関する年末総会が行われたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。
情報筋によると、総会にはすべての学生と教職員が参加。「反社会主義・非社会主義連合指揮部」の幹部らが居並ぶ中、韓流などを隠れて視聴していた学生や教職員が次々と槍たまに上がり、一部には懲役などの重刑が下されたことが明らかにされたという。
北朝鮮当局は2020年に同法を制定して以来、処罰の度合いを毎年のように強めている。初期には見せしめの意味を込めた公開処刑が頻繁に行われた。
最近では、処刑の情報こそ一時ほど多くはない。その一方で目立っているのが、「連座制」の強化だ。
たとえば昨年秋には、中国との国境に接した慈江道(チャガンド)の前川(チョンチョン)で、隠れてK-POP を聞いていた15歳の高校生2人が摘発された。
驚くべきは、逮捕からたった1週間後に、高校生2人のみならず彼らの一家全員が忽然と姿を消したことだ。行方不明の話は地域に広がり、騒然となった。後になって、「しつけがなっていなかった」との理由で連座制が適用され、家族全員が管理所(政治犯収容所)送りとなったことがわかった。
通常、反動思想文化排撃法に対する違反事件の場合、拷問を含む暴力的な取り調べに続き、公開での裁判が行われるのが一般的だ。
ボロボロになった容疑者に、公衆の面前で反省の弁を述べさせて「見せしめ」とするためだ。冒頭で触れた大学の総会が、まさにそのような場だ。
しかし、前川の件ではそうした手続きが省略された。その理由は詳らかでないが、もしかしたら高校生ら本人、または彼らの家族に、別の罪状がかけられたのかもしれない。
あるいは、公開裁判など行わず、そのまま一家全員を「蒸発」させてしまった方が、人々の恐怖を煽る効果が高いと判断した可能性もある。
ちなみに、国自体が世界最悪の人権侵害状態にあると言われる北朝鮮において、管理所の状況はさらに劣悪だ。完全統制区域(一生釈放が許されない区域)に至っては、そもそもが「労働を通じた絶滅」という収容者の緩慢な処刑が行われているも同然で、人権も何もあったものではない。
処刑の情報が減ったとは言え、北朝鮮が韓流の取り締まりに、事実上の極刑で臨んでいることに変わりはないのだ。