北朝鮮「原発研究者2人」を公開処刑…金正恩氏の指示を守れず

2025年1月23日(木)4時37分 デイリーNKジャパン

「われわれの力では難しい」そんな一言が命取りとなった。


今月10日午後4時、北朝鮮の首都・平壌の万景台(マンギョンデ)区域の、南浦(ナムポ)方面に向かう道沿いにある空き地で、公開処刑が行われた。処刑されたのは、原子力発電所の建設技術を研究していた責任研究者2人だ。関係者全員が見守る中で処刑は執行された。いった彼らはどのような過ちを犯したのか。平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。


責任研究者2人と研究員4人は、原子力研究省の科学技術部門で原子炉の設計と運営技術を研究していた。


昨年末に開催された朝鮮労働党中央委員会第8期第11回総会で、原発の運営技術に関する報告があったが、研究が進まないことについて、彼らに対する批判が提起された。


「故意に怠慢した」
「敗北主義に染まった」


原発建設は、北朝鮮が電力難解消の核心戦略として、最も重要視しているものだ。


従来の北朝鮮の電力供給は水力がメインだったが、雨の少ない北朝鮮では充分な発電ができず、特に冬には深刻な電力不足が何十年にもわたって続いていた。彼らはその解消を任されていたわけだが、金正恩総書記が示した技術目標のノルマが達成できなかった。つまり、研究が失敗したということだ。


詳細は明らかにされていないが、彼らはこんな弱音を吐いたという。


「この課題は、われわれの力では難しい」


北朝鮮はかつて、極秘に核兵器の開発を始めたが、国際原子力機関(IAEA)の査察などで露見してしまった。1994年にはIAEAからの脱退を宣言して核開発を進めたが、同年10月に、米国のクリントン政権(当時)と、核兵器に使用されるプルトニウムの抽出が難しい韓国型軽水炉の提供を受けることで合意した。


2003年までの完成を目標に工事が始まったが、2006年に軽水炉が完成しないままで合意は破棄されてしまった。北朝鮮はその後、核兵器の製造には成功したものの、原発は未だに作られていない。それを自国の技術で完成させようという目標を掲げ、研究を進めてきた。


研究者6人は研究に情熱を傾けたが、技術的な制約や資材不足のため、遅々として進まなかった。悩み抜いた末に朝鮮労働党に報告したところ、激しい批判にさらされてしまったというわけだ。


北朝鮮において、技術万能主義、技術至上主義とは、「技術的な限界をできない言い訳にする」という意味合いで使われ、そんな弱音を吐いたら最後、「思想的に問題がある」「敗北主義」などと激しく責められる。


実際、6人は次のように批判された。


「技術的条件のせいにするなど、安逸な態度を取っている」
「革命的態度と思想的武装が足りない連中」


思想がしっかりしていれば、技術的限界も突破できるという根拠不明な精神論が、北朝鮮では力を持つ。技術面では全くのド素人である朝鮮労働党の党員が、工場や研究所の指導的役割を担い、技術者が「できない」などと言おうものなら、このように非難するのだ。


そんな精神論で無理やり進めた実験が、事故を引き起こしたのも一度や二度ではない。


結局、6人は刑場に引き立てられ、2人は処刑され、4人はどこかへと連れ去られた。裏では「管理所(政治犯収容所)に連れて行かれた」との噂が流れている。



刑期が決まっている革命化区域に送られたのか、釈放が許されない完全統制区域に送られたのかは不明だが、劣悪な環境、暴力、恣意的な処刑が頻発する管理所送りになった4人は、遅かれ早かれ死を迎えるだろう。貴重な人材が、こんなくだらない理由で命を落とすのだ。


当然のことながら、こんな状況で研究が進むわけがない。


「(他の研究者たちは)結局こんなことになってしまったと残念がり、士気も下がってしまった」(情報筋)


処刑後、原子力研究省は、原発技術研究の責任者を任命した。中央は、開発過程における朝鮮労働党の統制を強化せよとの指示を下した。かくして、何の役にも立たない思想ばかりで頭でっかちの「使えないやつ」が上に立ち、研究者に無茶ぶりを繰り返すことになる。

デイリーNKジャパン

「研究」をもっと詳しく

「研究」のニュース

「研究」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ