オバマを待ち受ける順風満帆すぎる第二の人生

1月26日(木)19時0分 ニューズウィーク日本版

<55歳の若さでホワイトハウスを去るオバマ。引退後は講演料収入などで裕福な生活が約束されているが、本人はもともとの人権派弁護士としてコミュニティに貢献したいようだ>(写真:トランプ政権の就任と同時にオバマはホワイトハウスを去った)

 アメリカで、ついにドナルド・トランプが大統領に就任した。政治経験のないビジネスマンがこれから4年間、どのようにこの超大国を率いていくのか、世界中が注目している。

 トランプ政権がスタートしたことで、2期8年に渡ってアメリカの舵取りをしてきたバラク・オバマはホワイトハウスから去った。メディアは今、トランプの一挙手一投足を取り上げているが、55歳の若さで表舞台から去るオバマの今後の動向はあまり報じられていない。

 オバマはどんな第二の人生を送るのか。まずオバマは、退任後すぐに、地元シカゴには戻らない。娘のサーシャ(15)が高校を卒業するまで数年間、ワシントンDC近郊に残って生活を送るようだ。資産価値が500万ドル相当の高級な賃貸マンションに住むと報じられており、しばらく前から家のセキュリティ強化のための回収工事の様子がメディアで取り上げられていた。

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 今後、オバマが収入で困ることはない。まず、連邦政府の退職者として年間約20万ドルの年金が支給される。さらに、大統領経験者として講演を行えば高額な講演料が転がり込む。例えば、ジョージ・W・ブッシュ元大統領は退任後から少なくとも200回の講演を行い、だいたい1回の講演で10〜17.5万ドルを稼いでいる。

 またビル・クリントン元大統領とその妻で昨年の大統領選で敗れたヒラリー・クリントンは、高額のギャラを取って講演を行い荒稼ぎしてきたことで、批判も受けている。クリントン夫婦は2001年から2015年の15年間で、1億5300万ドルを稼ぎ出している。その間、トータルで729回の講演を行い、1回のギャラは平均21万ドル以上にもなる。

 こうした前例を見ると、オバマには裕福な生活が保障されていると言える。



 さらに、オバマは大統領就任前から出版社と「題材は未定のノンフィクション本」を執筆する契約を結んでいたが、任期中は保留にしていた。また2014年にも子供向けの本を書く契約もしているため、退任後はこうした契約を進めるために、まず本の執筆に取り組むことになるだろうと言われている。さらにこれまでも自叙伝を出版しているが、大統領時代の秘話などを含めた内容の本にすれば、米世論も注目するはずだ。

 今後のオバマについてはさまざまな憶測が出ている。オバマは以前、プロバスケットボールチームのオーナーになりたいと発言していたこともあるし、音楽配信会社に興味を示していたこともある。また、もともと弁護士だったことから、大学で法律を教えたいとも語っていた。おそらく、オバマが望めば、ある程度のことは実現可能だろう。

 とは言え、オバマはそもそも人権派の弁護士だ。大統領時代のイメージから考えても、講演でぼろ儲けするビジネスマンというよりは、市民運動や人権問題に取り組む姿のほうがしっくりくる。

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 事実、米メディアでは、8年の任期中にオバマが実現できなかった政策などについて引き続き取り組んでいくだろうという観測が見受けられる。例えば、刑事司法制度改革や移民問題、銃規制や核不拡散などの問題だ。オバマは引き続き、これらの課題に関して発言していく可能性が高い。

 また、かつてオバマが取り組んでいた、コミュニティサービスに再び携わるとの見方もある。オバマはすでに自らの名を冠したオバマ基金を立ち上げていて、例えばシカゴではオバマは大統領図書館の建設に主導的役割を果たしている。またオバマは2つのNGO団体と関係があり、そこでの活動がオバマを以前のような公共サービスとの関わりに巻き込むことになりそうだ。

 また社会のために働くということなら、上院議員への復帰を狙えばいいのではないか、という考えもあるかもしれないが、その可能性は低い。もちろん元大統領が再び国会議員になることは法律上可能だが、19世紀以降、アメリカでそんなケースはない。

 ではオバマ自身は第二の人生について、どう考えているか。オバマは2015年にワシントン州での学生との対話で、自らの退任後について言及し、「以前やっていたような、人々を助けるための道を探そうと取り組む仕事に戻ることになるだろう」と、述べている。「私が本心でやりたいのはそういう仕事なのだ」

≪執筆者≫
山田敏弘
国際ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などで勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で国際情勢の研究・取材活動に従事。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)。現在、「クーリエ・ジャポン」や「ITメディア・ビジネスオンライン」などで国際情勢の連載をもち、月刊誌や週刊誌などでも取材・執筆活動を行っている

山田敏弘(ジャーナリスト)

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