拉致問題で共闘、日本の援軍がトランプ政権入り

2月5日(月)6時12分 JBpress

サム・ブラウンバック氏(出所:Wikipedia)

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ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウス大統領執務室に脱北者6人を迎えた。通訳を挟み談笑するドナルド・トランプ大統領(右)と脱北者のチ・ソンホ氏(左、2018年2月2日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / ANDREW CABALLERO-REYNOLDS 〔AFPBB News〕

 サム・ブラウンバックという名前を聞けば、日本の拉致問題関係者の多くは瞬時に前向きな反応を示すはずである。

 10年ほど前、日本側の人たちが、北朝鮮に拉致された日本国民を救出するために米国の支援を得ようと動き始めた。その際、米国議会上院の共和党有力議員として活発に助力してくれたのがブラウンバック氏である。

 そのブラウンバック氏がこの2月から、“宗教の自由問題”担当の特別大使として、トランプ政権の国務省に加わった。同氏は北朝鮮の宗教弾圧も追及することになる。


任務は世界の宗教弾圧への対処

トランプ政権は、カンザス州知事のサム・ブラウンバック氏が2月1日に国務省・国際宗教自由担当の大使に就任したことを発表した。

 国際宗教自由大使の任務は、世界の宗教弾圧への対処である。ワシントンの国務省本省に拠点を置きながら、移動大使という形で世界規模で活動する。

 米国歴代政権は、国務省を主体に、世界各国の宗教の自由を守るための超党派の対外活動を続けている。同大使はその活動の中枢となる。

 ブラウンバック氏といえば、日本の拉致問題の解決に米国議会を代表して積極的な支援を続けてきたことで幅広く知られている。現在61歳の同氏はカンザス州の弁護士出身の共和党政治家で、1995年から96年まで同州選出の連邦下院議員を務めた。96年には上院に転じ、2011年まで上院外交委員会などで活動した。

 ブラウンバック氏は2008年の大統領選挙にも共和党予備選に出馬した。2011年には地元カンザス州の知事となった。その後、再選を果たし、2019年1月まで任期が残されていたが、このたびトランプ大統領の要請で政権入りした。同氏は敬虔なカトリック教徒として知られ、議会でも北朝鮮や中国の宗教抑圧への抗議を再三表明してきた。


「北朝鮮人権法」の制定に尽力

 ブラウンバック氏が日本人拉致事件の解決への支援の活動を顕著にしたのは、2003年以降、上院外交委員会の「東アジア太平洋問題小委員会」委員長となってからである。同氏はそれまでアジアとの関わりは特に深くはなかったが、人権弾圧非難という観点から北朝鮮や中国に注意を向け、活発に動くようになった。

 たとえば2003年6月には独自に記者会見を開き、北朝鮮の人権弾圧や、北朝鮮難民を抑圧する中国の行動を非難した。日本人拉致問題についても指摘し、北朝鮮当局を激しく糾弾した。

 私もこの記者会見に出ていたが、静かな口調ながらも熱をこめて「北朝鮮工作員による日本国民の拉致」に言及するブラウンバック議員に好感を抱いたことをよく覚えている。

 同議員はその後、米国の国政の場で、北朝鮮の残虐な行為の典型として日本人拉致を繰り返し指摘するようになった。そして「北朝鮮人権法」の制定へと動く。この法律は文字通り、北朝鮮の人権弾圧を阻むために米国政府が多様な支援行動をとることを規定していた。対象とする北朝鮮の人権弾圧には日本人拉致事件も含めている。この法律は2004年10月に成立した。


拉致被害者のために事務所を提供

 当時のブッシュ政権は北朝鮮を「テロ支援国家」に指定しており、それに基づき2005年9月にマカオの中国系銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」の北朝鮮関連口座を凍結するという経済制裁措置をとった。ブラウンバック議員はこうした措置を積極的に支援していた。

 ちょうどそのころ、日本側の拉致問題の「家族会」「救う会」「拉致議連」などがブッシュ政権の支援を得ようと動き始めていた。ブラウンバック議員はそうした各会の代表たちのワシントン訪問を温かく迎えるようになった。

「家族会」の横田早紀江、増元照明両氏、「拉致議連」の平沼赳夫会長や「救う会」の西岡力会長、島田洋一副会長らが訪米するたびに、ブラウンバック議員は上院外交委員会の代表として面会していた。日本側代表たちが緊急記者会見を開く必要が起きた際には、自分の事務所を即座に開放して提供するほどの協力ぶりだった。2008年10月に当時のブッシュ政権が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除すると、ブラウンバック議員は誰よりも強い反対を表明した。

 このようにブラウンバック議員は米国連邦議会の歴代のメンバーのなかでも、日本人拉致事件の解決のために、最も深く、最も長く協力してきた人物である。そうした人物がトランプ政権の国務省に加わり、世界の宗教弾圧に対峙するという展開は、北朝鮮による拉致事件の解決を目指す日本にとっても歓迎すべき動きといえるだろう。

筆者:古森 義久

JBpress

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