サウジがシリアでISIS掃討か

2月8日(月)19時15分 ニューズウィーク日本版

 その驚くべきニュースは、たちまち世界中を駆け巡った。それはオバマ政権の夢であるばかりでなく、大統領選に出馬している立候補者たちにも政策にもマッチしている。これで、こう着状態にあるシリア情勢にも突破口が開けるかもしれない。

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 先週、サウジアラビアの国防相が、シリアでISIS(自称イスラム国、別名ISIL)と戦うために地上部隊を出してもいいと発表すると、欧米の指導者たちは喜びに震えた。これまでアメリカを中止とした有志連合でシリア空爆を続けてきたが、空爆の限界は明らかだった。ISISを根絶やしにするにはやはり地上部隊の投入が不可欠だという声が高まっていた。

願ってもない援軍

 シリアから遠く世論から派兵の理解も得られないアメリカに代わって、中東地域の大国で同盟国のサウジアラビアが地上軍を投入してくれればまさに理想だ。

 アシュトン・カーター米国防長官はすぐに歓迎の意を表した。ホワイトハウス報道官のジョシュ・アーネストもこう言った。「同盟国のサウジアラビアが軍事的負担を担ってくれるのはありがたい」

 民主党の指名獲得を争うヒラリー・クリントン前国務長官とライバルのバーニー・サンダース上院議員も喜ぶだろう。サンダースは昨年秋の時点で、ISISなど過激主義の暴力と戦うためにNATO(北大西洋条約機構)のような軍事組織を作るべきだと提唱していた。ISISに勝つにはアラブ諸国やトルコのいっそうの貢献が必要、というのはクリントンの持論だ。

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 だが、世の中そんなにうまい話はない。サウジが言っているのはこういうことだった。「米軍の地上部隊が先に行けばサウジ軍も有志連合に加わろう」

 サウジの言う「地上部隊」の意味が、アメリカの戦闘部隊のことを言っているなら、オバマや民主党だけでなく、共和党も決して派兵を支持しない。つまりアメリカからすれば、サウジのオファーは絵に描いた餅だ。

場違いな軍隊

 しかもサウジには、シリアでの長い戦闘に耐えられる能力のある遠征部隊は存在しない。イエメンではイランの支援を得た反政府勢力と戦っているサウジだが、それもほぼ空爆に限られている。総勢17万5000人のサウジアラビア軍は、もっぱら国内の治安維持のための軍隊なのだ。

 仮にサウジがシリアに部隊を送り込んだとしても、サウジはISISよりアサド政権をまず倒そうとするだろう、と専門家は言う。「サウジはずっと、ISISがシリアで栄えたのはアサド政権が人々を弾圧したせいだ、と言ってきた」と、駐米サウジアラビア大使館の政治アナリストだったファハド・ナゼルは言う。

 もっとも、サウジがどうするか、どうすべきかといった議論は、机上の空論だという声もある。先週は北部のアレッポで、ロシアの空爆の後押しを受けたアサド政府軍が反政府勢力に大攻勢をかけた。

「あっと言う間に形勢は逆転した」と、米国際問題研究所(CSIS)の中東責任者ジョン・オルターマンは言う。彼らは、アレッポが陥落すればさらに北のラタキア、南のダルアーに進軍するだろう。「各国の部隊や物資をまとめて同盟軍の体ができた頃には、戦場はまったく別物になっているだろう」と、オルターマンは言う。

ジェフ・スタイン

ニューズウィーク日本版

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