「禁断映像」に溺れ…北朝鮮エリート軍人の乱れた生活
2025年2月15日(土)4時56分 デイリーNKジャパン
北朝鮮で、国民統制を担う「反社会主義・非社会主義連合指揮部」の幹部の不正行為が摘発されたという。
江原道(カンウォンド)のデイリーNK内部情報筋によると、江原道党委員会は今月初め、道党小会議室に道保衛局長(秘密警察トップ)、安全局長(警察本部長)、検察所長ら司法機関の幹部を呼び、高城(コソン)郡の連合指揮部の責任幹部であるキム某氏の逮捕事実を公開した。
軍の中佐でもあるキム氏は数年間、連合指揮部の責任幹部でありながら多くの不正を犯し、これと関連した住民たちからの信訴(告発)が多数、道党にもたらされていたという。
道党は、キム中佐がこれまで犯した数十件の問題行為を明らかにした。特に、韓流コンテンツを取り締まるべきキム中佐が、没収した映像を誰はばかることなく視聴し、甚だしくは家族や知人にまで貸しだしていた点が指摘された。
さらに、キム中佐は宿泊検閲中に認識した住民らの違法行為について、現場で賄賂を受け取り黙殺していた。他の要員が取り締まった住民たちにも、裏金を受け取って解放するなど不正腐敗を日常的に行ったことも暴露されたという。
だが、連合指揮部や司法機関の幹部が摘発物を流用したり、ワイロと引き換えに容疑者を見逃したりするのは当たり前のことだ。幹部といえども、職場から受け取る給料は子どもの小遣いほどにもならない。ワイロを取らなければやっていけないのである。
思うにこの中佐は「虎の尾」を踏んでしまった——つまりは、有力者をバックに持っているような、手を出すべきでない人物に手を出してしまった可能性がある。そして、そうした有力者との権力闘争に敗れ、容疑者に身を落としてしまったのかもしれない。
北朝鮮で韓流コンテンツ規制の根拠となっている「反動思想文化排撃法」に基づけば、多数の知人に韓流を流布したキム中佐の行為が有罪とされた場合、最高で死刑が言い渡される可能性がある。
ただし情報筋は「キム中佐に対する法的処罰はまだ結論が出ていない」としている。まだ、権力闘争が終わっていないということだろう。郡の連合指揮部でトップを務めていたこと自体、キム中佐にもそれなりのバックがいることを意味する。
うまく立ち回れば、最悪の状況をギリギリで回避できるかもしれない。