北朝鮮が「労働党旗」ではなく国旗を強調し始める

2025年2月17日(月)13時33分 デイリーNKジャパン

北朝鮮の国旗は、赤を基調に青と白の3色からなり、中央より左側には白地の円内に赤い五角の星が描かれている。建国を目前にした1948年7月10日、北朝鮮人民委員会の第5回会議は、太極旗(現在の韓国国旗)を廃止し、この旗を国旗として定めた。


朝鮮労働党機関紙・労働新聞は2022年7月3日の「わが首領様と共和国旗」と題した記事で、その意味合いについて次のように説明した。


国旗の赤は抗日烈士と朝鮮の愛国者たちが流した血と、共和国の周りに固く団結したわが民族の不敗の威力を象徴するものであり、国旗の白はわが国土で同じ血と言葉、文化を持ち、無垢に生きてきた単一民族国家であることを象徴し、青は民主主義の新しい社会建設のために闘うわが民族の逞しい姿と世界の平和と進歩のために闘う朝鮮人民の精神を象徴的に示していると言える。


この国旗は対外的にはよく使われるものの、北朝鮮国内ではむしろ、赤地に鎌、槌、筆が描かれた朝鮮労働党の旗の方がよく使われていた。


同様の現象は、国歌においても見られ、国歌「愛国歌」よりも「金日成将軍の歌」の方がよく歌われていた。


当局は最近、政治的な行事などにおいて労働党旗ではなく国旗だけを使用するように指示を下した。その背景について、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。


咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、「最近、すべての会議、行事、集会では労働党旗ではなく国旗だけを見かける」と伝えた。今までこの手の集まりでは、ほとんどの場合、労働党旗が掲げられていたため、情報筋は首を傾げていたが、しばらくして当局の指示によるものだと知ったという。


情報筋の勤める企業所は、新年を祝う政治行事に関する布告を行った際に、「行事の会場には国旗だけを持って入場しなければならない」と強調したという。隣りにいた朝鮮労働党の企業所内の委員会の初級党書記に尋ねてみたところ、当局の指示があったとの答えが返ってきたとのことだ。


金正恩総書記は即ち労働党であり、労働党は即ち金正恩総書記である」


北朝鮮の人びとは思想教育でこのように教え込まれ、月給、食糧配給、特別配給などはすべて金正恩氏と労働党の配慮によるものとされていた。会議や集会はもちろん、通りにも労働党旗が掲げられ、人びとは当たり前のものとして受け止めていた。


それだけあって、急に労働党旗が消えたことに、戸惑いを隠しきれないようだ。


「今まで数十年間、首領(最高指導者)が最高、労働党が最高と強調してきたのに、最近になって急に国家の重要性を強調するようになり、国旗がまともな待遇を受けるようになったが、未だにこのような状況に慣れない」(情報筋)


両江道(リャンガンド)の情報筋も、昨年末の水害被災地での住宅竣工式、新年を祝う政治行事から急に労働党旗が姿を消したと伝えた。


「報告と討論では、被災地に立派に建てられた新築の家には、金正恩氏と労働党の恩徳が宿っているとは言っていたが、その場に労働党旗はなかった」(情報筋)


このような措置は「当局の指示なしにはありえない」として、国民の労働党への不満が高まっていることの反映ではないかとの見方を示した。


「その理由は明白だ。建国以来今まで、すべてのことを労働党が牛耳っていたが、経済政策や人民生活政策の結果は惨憺たるものだ。空約束ばかりの労働党の評判は非常に悪い」(情報筋)


「人民が米のご飯に肉のスープを食べ、絹の服に瓦の家に住めるようにする」


金日成氏は、北朝鮮人民にこんな約束をしたが、果たせないままこの世を去った。後継ぎの故金正日総書記は、約束を守るどころか、何十万人もの餓死者を出した大飢饉「苦難の行軍」を招いた。



そして金正恩氏だが、2010年代には市場への取り締まりを緩和し、国民生活は徐々に向上していった。ところが、コロナ禍をきっかけに、国民の暮らしを規制でがんじがらめにする体制の復活に乗り出し、人びとの暮らし向きは悪くなる一方だ。


労働党と金正恩氏への不満は高まる一方で、その打開策の一つとして国や国旗を強調し始めたようだが、情報筋は欺瞞だと吐き捨てた。


「最近、国への忠誠心を強調するようになったが、だからといって労働党の地位や役割が変わるわけではない。国民を欺く一つの手法に過ぎない」

デイリーNKジャパン

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