ウイルスを世界に拡散、大国化を急ぎすぎた中国の罪

2月17日(月)6時0分 JBpress

封鎖された中国・武漢市の住民(写真:新華社/アフロ)

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(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)

 中国でコロナウイルスに感染して死亡する人が増え続けている。中国以外でも香港とフィリピンで死者が報告されているが、どちらもこの原稿を書いている2月11日時点では、1名ずつである。中国における死者は1000名を超えているから、死亡するケースは中国で圧倒的に多い。

 中国以外では感染者が少ないために死者が少ないとも考えられる。コロナウイルスが感染した場合の死亡率は1%から2%程度と見積もられているから、1000人が死亡したのなら中国の感染者数は数万人から10万人になっているはずだ。しかし11日の時点では、中国での感染者は約4万2000人と発表されている。感染者数が少なく見積もられている可能性がある。

 これは当局が故意に感染者数を少なめに公表しているためとも考えられるが、これだけの混乱が生じており、またその初動体制における隠蔽体質が批判されていることを考えると、あえて低めの数字を発表しているとは考えにくい。感染者数が少ない真の理由は、確実な検査を行って感染者を特定する能力が不足しているからだろう。この辺りの医療水準の低さが感染を抑え込めない原因になっていると考えられる。


一気に経済大国になったが平均寿命は?

 中国、特に湖北省など地方の医療水準はどの程度のものなのだろうか。それを客観的に判断する資料は乏しいが、ここでは各国の平均寿命を比較することで医療水準の差異を考えてみたい。中国のデータは信用が置けないものが多いが、人が何歳で死んだかという記録から計算される平均寿命は、比較的信頼性が高いデータである。

 図1に中国、日本、米国、それにインドの男性の平均寿命の推移を示す。

 この図には中国が驚異的な経済発展を始めた1980年代より2017年までの値を示したが、この期間に平均寿命はどの国でも大きく伸びた。中国で8.9歳、日本で7.5歳、米国で6.1歳、インドでは14.2歳も伸びた。平均寿命の伸びは幼児死亡率の低下による部分が大きいために、経済発展が遅れていた国ほど大きく伸びる。インドの伸びが大きいのはそのためである。

 中国の平均寿命は伸びているものの、それでも日本や米国の水準には達していない。2017年の中国の平均寿命は74.3歳であるが、これは日本の1983年とほぼ同じ水準である。

 本題からそれるが、米国の平均寿命は2010年代に入って伸び悩んでいる。これは自殺率や薬物の乱用による死亡が原因とされるが、この図からも、なぜ米国で極端な米国第一主義を掲げるトランプが大統領になったり、社会民主主義者を自称するサンダースが民主党の有力候補者になったりするのかが理解できよう。GDPは増えているが、米国社会は病んでいる。日本の平均寿命は2010年代に入っても伸びているから、経済が低迷する日本の方が、寿命という点では米国より良好な状況にある。

 話を戻すと、平均寿命から考えて中国の医療水準は米国や日本に遅れをとっているとしてよいだろう。図1は国全体の平均値であるが、中国では北京や上海などの大都市と地方では大きな格差が存在する。それは医療も例外ではない。湖北省の省都である武漢には海外から多くの企業が進出しているとされるが、それでも湖北省は田舎である。中国のコメ作の中心地の1つであり、多くの人は農村に住んでいる。

 中国では優秀な医師は北京や上海などの大都市に集まるので、農村には優秀な医師はほとんどない。平均を考えても中国の医療水準は日本や米国に劣っている。それに加えて医療の偏りが、湖北省で発生した感染症を抑え込めない原因になっていると考えられる。


疎かにされた地方都市の衛生状態

 中国はGDPを増大させる公共投資や住宅建設に力を入れてきたが、GDPに直接関係がない地方や農村の医療改善には力を入れてこなかったようだ。そのような傾向は習近平政権になってから一層顕著になった。それは日本と中国の平均寿命の差を取ってみるとよく分かる(図2)。

 日本は1990年頃より、失われた20年とも30年とも言われて経済が発展することはなかったが、それでも平均寿命は伸びている。一方、中国はその期間に奇跡の成長を遂げたが、平均寿命では日本に追いつくことはできなかった。それでも1995年頃から2012年頃までは差が縮小していた。しかし、それ以降は差がほぼ一定になっている。これでは永遠に日本に追いつくことができない。

 差が縮小しなくなったのは習近平の治世に原因がある。今回、中国がコロナウイルスによる感染症を防ぐことができなかったのは、感染症が発生した事実を隠蔽したことだけが理由ではない。習近平政権になってから農村や地方都市の衛生状態の改善や医療の普及などを怠り、GDPの増大や軍事強国の建設という目標に力を注ぎすぎた結果であろう。

 中国の古典である『老子』に「天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず」なる言葉がある。お金儲けや軍事力の増強だけに邁進しても、豊かで人々が安心して暮らせる国を作ることはできない。敵は意外な方向からやって来たようだ。

筆者:川島 博之

JBpress

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