BIGLOBEトップBIGLOBEニュース
国際

大荒れトランプ政権、経済政策の命運を握る2人のキーパーソン

ニューズウィーク日本版2月17日(金)15時28分
難局に直面する米国のトランプ政権が体勢を立て直すには、減税・インフラ投資などの前向きな経済政策を実現できるかどうかがポイントとなる。カギを握るのは、あまり報道されていない二人の人物、行政管理予算局(OMB)のミック・マルバニー局長と、経済担当のゲーリー・コーン補佐官だ。

トランプ政権は機能不全の瀬戸際

トランプ政権が揺れている。大統領側近のマイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が辞任、労働長官に指名されていたアンディ・パズダー氏は議会承認を得られずに指名を辞退した。移民・難民の入国禁止に関する大統領令が全米で混乱を巻き起こす一方で、メディアでは連日のように大統領側近の仲たがいが伝えられる。トランプ政権は、機能不全に陥る瀬戸際にあるように見受けられる。

体勢の立て直しには、前向きな政策の実現が必要だ。なかでも重要なのが、ドナルド・トランプ大統領が主張してきた大型減税やインフラ投資である。大統領選挙後の米国の株価は、これらの積極的な財政政策の実現を期待して上昇してきた。その行方が不透明になるようでは、さらにトランプ政権の足もとは危うくなる。

日本にとっても、こうした政策の行方は見逃せない。トランプ大統領が主張してきた法人税の減税は、米国でビジネスを行う日系企業にも恩恵になる。インフラ投資についても、日本企業の参入機会が拡大するきっかけになるかもしれない。保護主義的な通商政策など、日米関係では気掛かりな政策が目立つだけに、なおさら、こうした前向きな政策の推進が期待される。

移民・難民の入国禁止のような問題含みの政策に比べると、こうした前向きな政策は出遅れ気味だった。入国禁止などは大統領令だけで進められるが、減税やインフラ投資などの財政を使う政策は、議会での立法が必要になる。その実現には、どうしても時間がかかる。

ムニューチン財務長官の人事が議会承認されるなど、経済分野に関するトランプ政権の人事は、ようやく陣容が整ってきた。議会での審議が本格化するこれからが、トランプ政権の正念場である。

財政運営の舵をとるマルバニーOMB局長

経済政策での失地挽回が必要なトランプ政権だが、そのカギを握る人物が二人いる。

その一人が、OMBのマルバニー局長である。耳慣れない名前かもしれないが、OMBは各省庁の予算をとりまとめ、政権としての提案を行うホワイトハウスの機関である。OMBが取りまとめた政権の方針は、毎年2月に「予算教書」として発表される。

減税やインフラ投資の提案も、この予算教書に含まれる。どの程度の減税や、インフラ投資を行うのか。トランプ大統領の意向を実際の数字に置き換えるのが、マルバニー局長の役割だ。

マルバニー局長の前職は、共和党の下院議員である。下院議員時代のマルバニー局長は、強烈な歳出削減論者として知られてきた。年金や医療保険、さらには国防費をも聖域とせず、歳出を減らす。それによって財政赤字を無くそうというのが、マルバニー局長の主張だった。



こうした議員時代のマルバニー局長の主張は、必ずしもトランプ大統領とは一致していない。トランプ大統領が公約してきた大型減税やインフラ投資は、財政赤字を拡大させる。年金や医療保険の削減も、トランプ大統領の公約には含まれていなかった。国防費に至っては、トランプ大統領は増額を謳ってきた経緯がある。

マルバニー局長と同様に、共和党のなかには、財政赤字の拡大に警戒心を隠さない議員が少なくない。トランプ大統領の公約と自らの主張、さらには、共和党議員の関心をどうすり合わせるのか。マルバニー局長の責務は重い。

着々と地歩を固めるコーン補佐官

もう一人、トランプ政権の経済政策を語るうえで見逃せないのが、NEC(国家経済会議)の議長であるゲーリー・コーン経済担当大統領補佐官だ。コーン補佐官は、大荒れに荒れるトランプ政権のなかで、着実に地歩を固めていると伝えられている。

トランプ政権では、とくに経済分野の人事が遅れていた。ムニューチン財務長官を議会が承認したのは、政権発足から3週間以上が経過した2月13日のこと。マルバニー局長の承認に至っては、2月16日までずれ込んだ。過去のOMB局長は、遅くとも政権発足から1週間以内には承認されている。まさに異例の事態だ。

そうしたなかで、トランプ政権の経済政策を陰で支えてきたのが、コーン補佐官だった。NECを担当する経済担当補佐官は、経済関連の閣僚の意見を取りまとめ、政権としての方針を大統領に提案する役割を担う。その閣僚が揃わない中では、コーン補佐官の存在感が高まるのは当然の成り行きだった。

コーン補佐官の手腕が発揮されたのが、2月3日に発表された金融規制の緩和に関する大統領令だ。コーン補佐官は、議会関係者などとの事前の調整を万全に進め、波乱なく仕事をやり遂げた。大混乱となった入国禁止の大統領令とは大違いである。トランプ大統領は、近々、具体的な減税案を提示するとしているが、そこでも、議会などとの事前の調整は、コーン補佐官が進めている模様である。

コーン補佐官の前職は、米金融大手ゴールドマン・サックス社の社長兼COO(最高執行責任者)。グローバルな経済・金融の現場に触れてきたのはもちろん、組織運営の経験も豊富である。報道によれば、多い時には一日に5回も呼び出されるなど、トランプ大統領の信頼を勝ち得ているようだ。

トランプ政権と言えば、「白人至上主義」的な思想が取りざたされるバノン首席補佐官や、対中強硬派でNTC(国家通商会議)を仕切るピーター・ナバロ氏が注目されてきた。マルバニー氏やコーン氏の動静は、それほど日本では報じられてこなかったが、トランプ政権の経済政策の命運は、この二人の双肩にかかっているといえそうである。

安井明彦1991年富士総合研究所(現みずほ総合研究所)入社、在米日本大使館専門調査員、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長、同政策調査部長等を経て、2014年より現職。政策・政治を中心に、一貫して米国を担当。著書に『アメリカ選択肢なき選択』などがある。



安井明彦(みずほ総合研究所欧米調査部長)

はてなブックマークに保存

最新トピックス

国際トピックス

芸能写真ニュース

旬なニュースを配信中 フォローしてね!

注目ワード

話題の投稿画像

ページ設定

「トランプ」をもっと詳しく

注目ニュース
行動規範、枠組み案合意=南シナ海で中国とASEAN 時事通信5月18日(木)20時45分
【貴陽(中国貴州省)時事】中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国は18日、中国貴州省貴陽市で南シナ海をめぐり、高官レベルの協議を行い…[ 記事全文 ]
ジェームズ・ボンド役で人気、ロジャー・ムーア氏死去 TBS5月24日(水)1時18分
映画「007」シリーズのジェームズ・ボンド役で知られるイギリスの俳優ロジャー・ムーアさんが、23日亡くなりました。89歳でした。[ 記事全文 ]
犯人は自爆、死者22人に=英マンチェスター爆弾テロ—ISが犯行声明 時事通信5月23日(火)22時11分
【ロンドン時事】英中部マンチェスターの屋内競技場「マンチェスター・アリーナ」で起きた爆発事件で、警察は23日記者会見し、犯人が自爆テロを実…[ 記事全文 ]
日本車嫌いの中国人の言い分は正しいか?—中国メディア Record China5月22日(月)11時10分
中国では日本車が人気だが、日本車嫌いの中国人も存在する。これに関して江蘇テレビ電子版は21日、「中国人が日本車を買わない理由」と題したコラ…[ 記事全文 ]
スーパーを見て「中国人が日本で買い物をしたがる理由」が分かった!=中国 サーチナ5月24日(水)7時12分
日本を訪れる中国人旅行客の間で爆買いがブームになったのは記憶に新しい。特定の商品の爆買いはなくなりつつあるが、それでも質が高い日本製品は今…[ 記事全文 ]
アクセスランキング
1 日本車嫌いの中国人の言い分は正しいか?—中国メディアRecord China5月22日(月)11時10分
2 韓国大統領特使への安倍首相のもてなしがひどい!韓国ネットユーザーが椅子に注目し指摘=「ミスにしてはあからさま」「韓国を相当見下してるね」Record China5月23日(火)11時40分
3 韓国人が世界の国々を動物に例えてみた、気になる日本は?=「日本をここまで低く評価するのは韓国人だけ」—韓国ネットRecord China5月22日(月)11時30分
4 運転中にハンドルが外れた!整備後の韓国車で驚きの事故=韓国ネット「恐ろしい」「意図的な殺人未遂」Record China5月23日(火)7時30分
5 英爆発「会場全体が揺れた」、テロで22人死亡読売新聞5月23日(火)15時15分
6 「老けた!」と中国で話題の木村拓哉、独占インタビューで「永遠の若さ」を拒否—中国Record China5月22日(月)21時40分
7 英で爆発テロ、19人死亡 米歌手コンサート会場共同通信 47NEWS5月23日(火)8時34分
8 ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」NEWSポストセブン5月22日(月)7時0分
9 空から魚が降ったか、米カリフォルニア州の小学校で怪現象(字幕・19日)ロイター5月22日(月)17時2分
10 トランプ大統領初の外遊 “反イスラム”に変化・・・TBS5月22日(月)18時33分

本サイトのニュースの見出しおよび記事内容、およびリンク先の記事内容は、各記事提供社からの情報に基づくものでビッグローブの見解を表すものではありません。

ビッグローブは、本サイトの記事を含む内容についてその正確性を含め一切保証するものではありません。本サイトのデータおよび記載内容のご利用は、全てお客様の責任において行ってください。

ビッグローブは、本サイトの記事を含む内容によってお客様やその他の第三者に生じた損害その他不利益については一切責任を負いません。

データ提供元:アニメキャラクター事典「キャラペディア