20代女性を処刑…北朝鮮「児童も動員」見せしめ強制体験の現場

2025年2月18日(火)5時2分 デイリーNKジャパン

北朝鮮で昨年11月に起きた老夫婦殺害事件で、犯人の女性が公開処刑された。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋がその詳細を伝えた。


事件が起きたのは昨年11月6日のことだ。平安南道の順川(スンチョン)で、農業で生計を立てていた70代の夫婦が何者かに殺害された。


この事件については、当初から様々な声が上がっていた。夫婦は決して裕福な暮らしをしているわけではなかった。つまり、金目当ての犯行ではなかったという推論が可能だ。


食糧が底をついた「絶糧世帯」が増加するにつれて、食べ物欲しさの犯罪が相次いでいる。老夫婦も、収穫物を保管していたため狙われたのではないかとの見方が浮上し、市民を恐怖に陥れた。


容疑者が逮捕されたのは、事件から3カ月が経ってからのことだった。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、容疑者は20代女性の李某だ。


新義州(シニジュ)市内のカバン工場に勤めていた李某容疑者は、生産品を横流しして摘発された。罰則として「3K強制労働」を課せられたが、彼女はそれを無視して、無断欠勤を続けた。


生活費が底をついた李某は、顔見知りの老夫婦宅に転がり込んだ。2人はお人好しだったのか、李某を住まわせることにしたが、その恩は仇で返されることとなった。


額は不明ながら、夫婦が現金を持っているのを見た李某は、それを盗もうとして殺害に及んだ。


彼女は先月20日、新義州市内の彩霞(チェハ)市場そばの空き地で開かれた公開裁判に引き出された。裁判長は李某に対して、「住むところと食べものを提供してくれた老夫婦を殺害、逃走するという人道にもとる罪を犯した」と指摘して、死刑を言い渡した。


刑の執行は閉廷後すぐに行われた。そのため、裁判を見ていた子どもたちが凄惨な光景を目の当たりにし、非常に強いショックを受けたとのことだ。現場には10歳未満の児童も多数いたという。大人たちからは、「すぐに銃殺が行われるとは思わなかった」「空き地には子どもが多かったのに、恐ろしいものを見せてしまった」と、批判の声が上がった。



北朝鮮は、昨今相次ぐ凶悪犯罪を抑制する目的で公開処刑を行っているが、追い詰められた人々に全く効果はないようだ。


そもそもの原因は、金正恩総書記が、市場経済化しつつあった経済を、無理やり中央集権型の計画経済に戻そうとしたものの、モノ不足とインフレをひどくするばかりで失敗したことにある。


民間への富の蓄積に伴い、体制を揺るがしかねない、権利意識や消費欲求の強い中間層の誕生を恐れ、国民を「生かさず殺さず」の状態にとどめようとしているのかもしれない。しかし、そのような政策は国民の強い不満を生んでいる。

デイリーNKジャパン

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