市場は10年で10倍に、一斉にゲームを始めた中国人

2月18日(月)6時0分 JBpress

 中国のシンクタンク、中国音数協遊戯工委(GPC)および伽馬数据(CNG)によると、2018年の中国ゲーム市場規模は前年比5.3%増の2144.4億元(約3.5兆円)に達したとのことです。この市場規模は日本の約2倍であり、自動車市場同様、既に米国を上回る世界最大のゲーム市場となっています。

 また激しい国内競争を経て、中国のゲーム開発力も近年目覚ましく向上しています。海外展開も積極的に行われるなど、今やゲーム輸入国から輸出国への転身も現実になりそうな気配です。

 そこで今回は、日系ゲーム業界にとってももはや無視できない中国ゲーム市場について、各種データを交えつつ解説していきたいと思います。


10年で10倍超の急拡大

 下の図は過去10年間における中国ゲーム市場規模とその成長率をグラフ化したものです。見ての通り、2008年にはわずか185.6億元(約3020億円)しかなかった市場は、2018年には2144.4億元(約3.5兆円)に達しており、この10年間で10倍超もの急拡大を遂げていることがわかります。

 そんな急拡大する中国ゲーム市場のうち過半数超の割合を占めるのが携帯電話・スマートフォンで遊ぶ「モバイルゲーム」の市場です。中国のモバイルゲーム市場規模の推移を下のグラフにまとめました。2018年の市場規模は1339.6億元(約2.2兆円)に達して全体の62.5%を占めるなど、他の国・地域同様にゲーム業界の主役となっています。


米国を抜いて世界最大の市場に

 引き続き、中国市場の世界シェアを見てみましょう。

 オランダ本拠のゲーム業界シンクタンク、newzooが2018年4月末に発表した市場予測値によると、世界ゲーム市場における中国のシェア(28%)は既に米国(23%)を抜き、世界トップの座についています。世界第3位の日本(14%)と比較しても中国の市場規模は約2倍もあることとなります。

 こうした巨大な市場を持つことから、中国市場への進出や展開、または現地ゲーム企業との提携を図る日系ゲームメーカーの動きも近年活発化してきています。


IP作品が拡大牽引

 ここまで中国ゲーム市場のマクロデータを見てきました。続いて、これまでの中国ゲーム市場の歴史と現状を簡単に説明します。

 中国では2000年にゲーム機の国内流通が禁止(2013年に解禁)されて以降、パソコンを介したオンラインゲームが普及するようになります。しかし2010年頃から携帯電話の3G通信回線が普及するようになると、モバイルゲームの方が徐々に人気を博すようになり、前述の通り現在はこちらが主流となっています。

 とはいえ、モバイルゲームの普及当初は海外製ゲームのローカライズ、または模倣作品が多く、中国国産ゲームで人気を得られるものはそれほど多くありませんでした。実際に2010年代前半は、筆者の周りでも「アングリーバード」(中国名:憤怒的小鳥)など海外製ゲームで遊んでいる中国人が多かったと記憶しています。

 節目となったのは2013年頃です。この頃から著名なアニメ作品やキャラクターを正式にライセンス契約してゲームに登場させる「IP(知的財産)作品」が中国でも出始め、高い人気を得るようになります。そうした成功事例を見て、おそらく他の業者も「ライセンス料を払ってもお釣り(=利益)がくる」と考えるようになったのでしょう。その後もIP作品の開発・リリースは相次ぎ、また、消費者がそれらに飛びついたことで、中国ゲーム市場は急拡大していきました。

 なおIP作品としては、日本の漫画やキャラクターが登場するゲームが高い人気を博しています。2017年の中国ブラウザゲーム人気投票で1位になったのは、日本の忍者漫画「NARUTO -ナルト-」を使ったゲーム「火影忍者ONLINE」(2013年サービス開始)でした。


2018年に成長鈍化した理由

 こうして毎年2桁成長で急拡大してきた中国ゲーム市場でしたが、2018年は一転して、成長率が前年から17.7ポイント下落の前年比5.3%増と大きく鈍化しました。

「毎経網」の報道では、成長鈍化の背景として消費者嗜好の多様化、大作ゲームの不足の他、新規ゲームのリリース数減少などが理由として挙げられています。

 筆者はその中で新規ゲームの減少が最も影響したとみています。実際に、中国のApp Storeでの2018年における新規ゲームリリース数は前年比59%減と急減しました。

 では、一体なぜこれほど急減したのか? 原因ははっきりしており、中国政府の許認可がなかなか下りなかったためです。

 中国では海外製ゲームを輸入したり、新規オンラインゲームを配信する際は、文化部などの当局から許認可を得なければなりません。しかし2018年3月以降、この許認可の新規発行が一時期ストップし、「当局が綱紀粛正からゲームの規制に動いたのではないか」と噂されました。

 筆者の知人である業界関係者によると、同時期に、管理元だった国家新聞出版広電総局の組織再編が行われており、この再編のドタバタによって作業が中断していたという説が有力だとのことです。実際、その後12月から新規発行は再開され、2019年1月末までに257本のゲームのリリース許認可が下りています。


海外市場に逆攻勢

 中国のゲーム業界では、開発力が高まってきたことを受け、ゲームの輸出や海外でのサービス展開を目指す動きが高まっています。

 下のグラフは、中国自主開発オンラインゲームの海外市場売上高をまとめたものです。

 見ての通り、海外市場での売上高は2018年に前年比15.8%増の95.9億米ドル(約1.1兆円)となり、市場全体の成長率5.3%を10.2ポイントも上回っています。

 前述の通り、かつて中国ゲーム市場は基本的に海外からの輸入製品によって成り立っていました。それが近年は逆攻勢とばかりに海外進出に熱心となる業者が増えています。これは、中国のゲームメーカーが独自開発力を身につけてきた証左とも言えるでしょう。

 下のグラフは、2012年以降の中国モバイルゲーム市場における中国国産ゲームのシェアをまとめたものです。このグラフによると、2012年にはわずか5.4%だった比率が、2018年には62.5%まで拡大しています。中国人ユーザーが、今や海外製ゲームではなく国産ゲームでそのニーズを満たしている現況がはっきり見てとれます。


中国最大のヒットゲームが日本上陸

 中国製ゲームは近年、日本国内でもリリースが行われるなど広がりを見せています。

 日本のゲーム開発大手、ディー・エヌ・エー(DeNA)は2018年11月、中国のテンセントゲームズ(中国名:騰訊)と提携し、中国最大のヒットゲーム「王者栄耀」のスマホ向け日本版「伝説対決 -Arena of Valor-(アリーナオブヴァラー)」をリリースしました。

 同ゲームのリリースについて同社広報は、「近年、中国市場での成功タイトルが日本でも成功する事例が出てきている」と述べ、今後もそうした成功事例を開拓していく方針であることを示しました。

 また同社広報によると、「中国では、ゲームの質がかなりのスピードで向上しており、近い将来、あらゆる方面で世界最高の水準が求められるようになるだろう」とのことです。そこで同社では、上海に独自チームを設置して、設計から開発、パブリッシングまで全方面的に現地対応できる体制を敷き、中国市場の成長を積極的に取り込む方針だといいます。

 急成長が続く中国市場を前に、提携や競争を駆使していかに日中間のユーザーを取り込むか、日系ゲーム企業にも問われる時代が来ているのかもしれません。

 次回は続編として、日本のレトロゲームを愛する中国人について紹介します。

筆者:花園 祐

JBpress

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