少子化著しい韓国、人口で北朝鮮に抜かれる可能性も

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国連が発表した数字によると、2022年の韓国の名目GDP（国内総生産）は北朝鮮の約110倍に達する。GNI（国民総所得）も約30倍もの開きがある。経済力では北朝鮮を圧倒している韓国だが、人口においては約2倍の差しかない。

韓国の人口は2020年の5183万6239人をピークに減少傾向に入ったが、朝鮮半島の南北統一に当たって、韓国が主導権を握れなくなる可能性を指摘する報告書が出た。

韓国政府系のシンクタンク、統一研究院のキム・ソクチン先任研究委員が発表した報告書「低出産・高齢化時代の統一問題」は、今後の人口変動が統一問題にいかなる影響を与えるかについて説いている。

北朝鮮に対する韓国の人口差は2020年の時点で2.03倍だが、2040年には1.91倍、そして2070年には1.65倍となるとの見通しを示した。また、生産年齢（15歳から64歳）人口の割合は、2020年に2.08倍だったのが、2070年には1.29倍まで差が狭まる。

キム氏は、「昨今の韓国の出生率は北朝鮮の半分ほどにしかならず、未来には南北の人口が同じ程になる可能性があり、さらに北朝鮮の人口が韓国より多くなる可能性もある」とした。また、「統一の時期が遅くなるほど、北朝鮮の人口増加により、韓国が統一を主導するのは難しくなり、社会的、経済的負担も大きくなる」と述べている。

統一が2030年に実現すると仮定して、そこから30年の人口変動を計算し、これを統一後のドイツ（1990年から2020年）の人口変動と比較すると、統一後の韓国は人口面において大きな困難に直面する可能性がある。

ドイツは統一後30年で、生産年齢人口の割合が69％から64.3％に減り、65歳以上の人口は14.9％から22％に増加した。

韓国は2030年から2060年までの30年間、生産年齢人口は67.3％から52.6％に減り、65歳以上の人口は21.5％から38.9％に増加する見込みだ。

キム氏は「韓国の出生率が著しく低く、北朝鮮も同様に低下し、統一後の韓国の少子高齢化がドイツより速く進む可能性が大きい」とし、「統一直後の韓国の扶養費の総額はドイツより高く、時間の経過とともに急速に上昇し、労働力不足と社会保障の負担増加という負の側面をもたらすだろう」と述べた。

キム氏は、統一が実現しても、北朝鮮の人口は当面増加すると見て、予想を出している。例えば、南北の人口の差は2030年の1.96倍から2070年には1.72倍に縮まり、生産年齢人口は1.9倍から1.4倍に低下するとの見方を示した。

また、「生産年齢人口の南北比率は、総人口の南北比率より顕著に狭まることになり、これにより統一後の韓国が政治、経済、社会、文化的に主導性を発揮することがますます難しくなる可能性がある」と指摘した。

しかし、こうした分析には留意すべき点がある。

通常、戦乱が起きていない途上国では、教育、医療インフラが整っていないなどの理由で多産傾向にあるが、北朝鮮は例外で、既に少子化、晩婚化、非婚化が進んでいる。

経済が極めて不安定で、経済活動が厳しく制限されているという、極度の統制社会ならではの原因によるものと見られている。

当局は妊娠中絶はもちろん、避妊を禁止し、離婚した場合には、短期の懲役刑を科すなど「少子化対策」を取っている。だが、こうした「押し付け」の政策が、むしろ結婚を避ける傾向に拍車をかける結果を生んでいる。

結婚前に、性格の不一致などがないか確かめ合うために同棲していた男女を、不道徳だと吊し上げにするなど、旧態依然とした家族観も悪い影響しか生んでいない。

ちなみに、北朝鮮は人口の正確な統計を極秘扱いにしており、それを知る立場にある担当者の一家を、外部に漏らした容疑で、収容所送りにするほどだ。

一方で北朝鮮は、韓国にとって経済的な重荷になる可能性が高い。所得水準が低いため、北朝鮮の人々の生活保障を韓国の負担で行わなければならなくなるだろう。また、インフラの再構築、人々の再教育など必要となる費用は莫大な額となる。

労働力が韓国に流入し、人手不足が解消するとの楽観的な見方もあるが、80年も全く異なる体制のもとで暮らしてきた人々は、外国人とほぼ変わりなく、スムーズに受け入れが進むとは考えにくい。

キム氏は、韓国のノーカットニュースの電話インタビューで、「南北朝鮮と統一後の韓国の人口を計算するにあたって、韓国統計庁の中位推計シナリオを適用したが、これは楽観的な状況を想定したもので、現実とは異なる場合が今までも多かった」「実際の人口状況はもっと悪い可能性がある」と述べた。