習近平「独裁」体制は大きな悲劇を招くだろう

3月15日(木)6時12分 JBpress

全国人民代表大会の開会式に臨む中国の習近平国家主席(2018年3月5日撮影)。(c)AFP PHOTO / WANG ZHAO〔AFPBB News〕

 経済が順調に発展すれば、韓国、タイ、インドネシアが民主化したように、中国も民主化されると考えられていた。しかし、それは西側に住むインテリの勝手な思い込みだったようだ。

 中国はこれまで国家主席の任期を2期10年までと定めていた。今回の全人代でその制限が廃止された。これによって習近平は死ぬまで国家主席の座に居すわることができるようになった。

 このことは、現在私たちが考えている以上に、大きな事件である。2018年はヒトラーが政権を取った1933年と同様に、歴史の転換点として記憶されることになろう。


全ての独裁は悲劇的な結末をもたらす

 習近平はこれまでもさまざまな手段を用いて権力の強化をはかってきたが、任期がなくなったことによって、それはより露骨になる。

 辞めることが分かっている政権であれば、時が来るまでじっと身をひそめて待つことが可能である。30代や40代の官僚は、あと5年で終わる政権には近づかない方がよい。あまり近づきすぎると、正反対の政権ができたときに冷や飯を食わされるからだ。

 つまり任期が明確であることは、権力が暴走することを防ぐ。だから、米国の大統領は任期を2期8年までと定めている。そもそも民主主義国には選挙があるから、長期にわたって政権を維持することは難しい。それは日本を見ればよく分かるだろう。

 だが中国に選挙はない。そんな国で任期をなくしてしまえば、いとも簡単に長期政権ができてしまう。そして人生100年と言われる時代に、64歳の習近平が死ぬまで政権の座に留まる可能性が出た以上、若手でも習近平に近づかざるを得ない。本心であろうが、面従腹背であろうが、とにかく忠誠を誓わなければ生きて行くことができない。

 習近平の独裁をヒトラーの独裁に例えることに対して中国共産党は不満を示すだろう。ヒトラーの独裁は悪い独裁であり、習近平の独裁は良い独裁と言うに決まっている。しかし、独裁に良いも悪いもない。全ての独裁は悲劇的な結末をもたらす。そのことを毛沢東の独裁を経験した中国人はよく知っているはずだ。


無能な人物も政権の中枢に

 なぜ独裁は悲劇的な結末を招くのだろうか。その本質は人事の不公平にある。権力が牽制し合う場合、概ね人事は公平に行われる。あまりトップの身びいきが過ぎると、各方面から文句が上がる。しかし、独裁政権では人事はトップの専権事項になってしまう。

 文化大革命の時代、4人組と言われた人々が毛沢東の寵愛を受けて大きな権力を握ったが、その後に中国自身が断罪したように、彼らはそれほど能力のある人物ではなかった。ただ、毛沢東に気に入られたと言うだけで大きな力を持ったのだ。

 独裁が長引くに連れて、独裁者に近いというだけで、それほど能力のない人物が枢要なポストに任命されるようになる。なかには“ごますり“しか能がない人物もいるだろう。

 既に中国では、習近平のこれまでの任地であった陝西省、福建省、浙江省において習近平と親交を深めた人々が重要なポストに抜擢されるようになっている。独裁が完成したことにより、今後、その傾向は一段と強まろう。そして、どの独裁でも同じだが、独裁者の耳には心地より情報しか入らなくなる。それが独裁者の判断を誤らせる。


大国の独裁は極めて危険

 習近平の独裁はヒトラーの独裁によく似ている。それは北朝鮮やキューバなど小国の独裁とは異なる。小国の独裁は大国の意向にそったものであり、独裁者といえども全能ではない。国内では独裁者であっても、対外政策は大国の思惑の中にある。小国の独裁者が勝手に国際社会に挑戦すれば、イラクのフセイン大統領がそうだったように、短時間で無残な結末を迎えることになる。

 しかし、1930年代のドイツ、そして現在の中国は大国である。そのトップは他の国の思惑を忖度することなく、国際社会に挑戦することができる。そして、第2次世界大戦が短期間で終わらなかったように、その挑戦は国際社会にとって極めて危険な出来事になる。

 今後、思うように経済が発展しなくなると、習近平政権は国民の支持をつなぎとめるために、台湾への軍事進攻など言った思い切った手段に出る可能性がある。それは東アジアを大きな混乱に巻き込むことになろう。

 これは三文週刊誌に書かれるような、突拍子もない予想なのかも知れない。しかし、事実は小説よりも奇なり。私が高校生だった半世紀ほど前に、ソ連の崩壊や、人民服に身を包んでいた貧しい中国人が大挙して銀座に爆買いに来ることなど、誰が予測し得たであろうか。

 歴史の教訓に鑑みれば、大国の独裁は周りの国をも巻き込んだ大きな悲劇で終わる。22世紀の教科書には2018年は1933年と同様に、歴史の大きな転換点であったと書くことになるかも知れない。

筆者:川島 博之

JBpress

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