オバマの歴史的キューバ訪問で、グアンタナモはどうなる?

3月22日(火)17時10分 ニューズウィーク日本版

 今月20日、オバマ大統領は歴史的なキューバ訪問を成し遂げ、専用機「エアフォースワン」でハバナに降り立ちました。アメリカとキューバは、すでに昨年7月に国交を回復していますが、この首脳会談と前後してアメリカの航空会社のハバナ乗り入れや、ホテルの進出が進んでおり、両国の関係はさらに進むことと思われます。

 それにしても、1959年元旦のキューバ革命から57年、1961年の断交から55年という年月を経て、今回アメリカの大統領がキューバの地を踏んだことに、あらためて深い感慨を覚えます。

 そのアメリカとキューバの関係ですが、1つ残された問題があります。それはキューバ本島の南西端にある「グアンタナモ湾」の扱いです。ここは縦10キロ、ヨコ20キロぐらいの広い土地で、アメリカが占領しているというより、アメリカがキューバとの条約に基いて「永久租借」をしている土地で、事実上の海外領土となっています。

 東西対立の厳しい時代を通じて、どうしてアメリカが「敵国キューバ」の島内に租借地を維持していたかというと、そこには歴史的な経緯があります。そもそもキューバは、スペインの植民地でした。そのキューバが独立できたのは、1898年の米西戦争でアメリカが勝利してスペインを追放したからです。

【参考記事】アメリカと和解したカストロ政権の大ばくち

 その後1902年にキューバは独立しますが、アメリカは条約によってこのグアンタナモ湾地域を永久租借する権利を得たのでした。正確に言えば、まずアメリカはキューバ全体を占領して、そこからグアンタナモ湾地域以外だけを独立させたとも言えます。

 この租借は、途中に色々な条件変更はあったものの、共産主義化したキューバとなっても続いてきました。そして、アメリカはこの地区に海軍基地を設置して現在にいたっています。有名なのは、911のテロ事件以降、ブッシュ政権がゴンザレス司法長官の強引な法解釈によって、この基地内に「テロ容疑者の収容所」を設置した問題です。

 どうして、このグアンタナモに収容所を設置したのかというと、このグアンタナモは「アメリカの租借地、海外領土」であり、合衆国憲法の効力が及ばないという考え方に基づいています。

 これは、アメリカ国内で、ここ15年にわたって続いてきた議論なのですが、とにかくブッシュ政権と、その流れを汲む共和党の保守派にとっては、「テロリストに合衆国憲法の基本的人権は与えない」というのが「譲れない基本原則」になっているからです。

 具体的には、「民間人に対する刑事裁判ではなく、軍事裁判を適用すること」「裁判所の逮捕状がなくても敵兵として拘禁し、しかも戦争でもないので、ジュネーブ条約による捕虜への権利も与えないこと」「拷問などの超法規的な取り調べを可能にすること」といった、まさに文字通りの「無法」を可能にする「特殊ゾーン」というわけです。

 弁護士出身のオバマ大統領はそんなことは絶対に許すことはできません。ですから2008年の選挙戦では、この「グアンタナモ収容所」の閉鎖について、オバマは公約にハッキリと明記しています。ですが、共和党は激しく抵抗しており、この8年間に徐々に議会での勢力を拡大していることもあって、「グアンタナモ閉鎖」には絶対に反対の意向を変えていません。

 その背景には、共和党の保守主義の中にある「憲法保守主義」というものがあります。まず、憲法の中の「基本的人権はアメリカが犠牲の上に勝ち取った」ものであるから、その「アメリカに敵対する人間には適用しない」という「人権概念の普遍性を認めない」という考え方がベースにあります。

【参考記事】グアンタナモというオバマの袋小路

 これに、武装の権利の拡大解釈であるとか、州の自治権の拡大解釈など、自分たちの価値観に都合のいいところだけを抜き出して「自分こそ憲法の擁護者」という姿勢を見せるのが「憲法保守主義」というわけです。

 今回の大統領予備選で言えば、特にテッド・クルーズ候補はその典型です。それはともかく、オバマとしてはどんなに閉鎖したくても、任期末までの間に、「グアンタナモ収容所」の閉鎖はできないでしょう。それは、この政権の政治的な限界とも言えます。

 実は、このグアンタナモ湾に関しては、ラウル・カストロ首相は「返還要求」を意向として示しています。ですがオバマとしては、そもそも「閉鎖したい収容所を、共和党の反対で閉鎖できない」状態では、湾の全体を返還する交渉に乗っただけで、共和党から総スカンを食う可能性があるわけです。

 その辺はラウル首相も心得ていて、今回も、返還要求はあったものの、「どこかの時点で」という言い方で、アメリカ側の事情に理解を示しています。ですが、この「グアンタナモ収容所」というのは、21世紀のアメリカの「闇」であることは間違いないのです。政治的合意で収容所を閉鎖した上で、いつかの時点で地域全体をキューバに返還することは、避けられない流れとなるでしょう。

ニューズウィーク日本版

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