アサドの化学兵器使用はオバマのせい──トランプ政権

4月5日(水)16時46分 ニューズウィーク日本版

<シリアのアサド政権は、反体制武装勢力に対して何度も化学兵器を使ってきた。それが再び使われたのは、アサドに対する武力攻撃まで約束しながら実行しなかったオバマのせい、あとはシリア人が決めることだと米政府は言う>

シリア北部の反体制派の支配地域イドリブ県で4日、化学兵器を使ったとみられる空爆があり、死傷者数は数百人を超えるとみられる。現地の医師によると、病院に運び込まれた犠牲者は、サリンなど猛毒の神経ガスの使用が疑われる症状を訴えている。シリアのバシャル・アサド政権は、過去にも神経ガスを使用した疑惑がある。

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シリアの戦争監視団や医療関係者は当初、死者は少なくとも50人、負傷者は300人と伝えた。一方、シリア国内の人道団体と連携する「医療救済機構連合」は、死者は少なくとも100人、負傷者は400人以上にのぼると報じた。

今回の空爆がアサド政権による攻撃であることが確実となれば、6年に及ぶ内戦の末にシリア政府が反政府勢力をいよいよ潰しにかかっていることを示す最新の事例になる。オバマ前政権と違いアサド大統領への退陣要求からは距離を置いていたドナルド・トランプ政権にとっては、アサドが自国民を無差別に攻撃したとなると対シリア外交の舵取りが難しくなる。

国連の調査によると、シリア政府は2014年と2015年に反体制派の支配地域で化学兵器を使用。4日の空爆は、数百人の死者を出した2013年8月のアサド政権によるガス攻撃以来、最大規模の化学兵器を利用した攻撃となる。

レックス・ティラーソン米国務長官は先週トルコで、「アサドの退陣はシリア人が自ら決めることだ」と発言。米国のニッキー・ヘイリー国連大使も3月30日、アサドの政権打倒は米国の優先課題ではないと語った。

優柔不断なオバマのせい?

ティラーソンは4日、当初はコメントを拒否したものの、数時間後にアサドを「残忍で恥知らずな野蛮行為だ」と述べ、化学兵器を使った空爆を非難した。

米議会の共和党内でも議論になっている。ジョン・マケイン上院議員は、トランプ政権は「反体制派を抑え込むアサド政権を見て見ぬふりをしている」と批判した。また、ティラーソンのトルコでのコメントについて、「米国史上恥ずべき一章」とこきおろした。

「ヘイリーやティラーソンの発言は、アサドを勇気づけるものだ」と、マケインは言った。

ドナルド・トランプ米大統領は、今回の化学兵器攻撃はシリア政府によるものだと認めた上で、これはバラク・オバマ前大統領の「弱さと優柔不断」が招いた「当然の結果」だと声明で語った。

オバマ前政権は2013年8月、化学兵器使用を「レッドライン(越えてはならない一線)」と規定し、シリアへの軍事攻撃に踏み切る姿勢を示したが、化学兵器使用が明らかになっても介入を見送った。また2013年の化学兵器使用後には、アメリカとロシアがシリアの化学兵器廃棄に乗り出したが、完全廃棄には至らなかったか、製造が続いていたと見られる。

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ただ米政権交代後、トランプのシリア政策見直しの公約にもかかわらず、アメリカはシリア政策に本腰を入れていない。米当局者は、「アメリカは現地で積極的に軍事行動を行っているトルコやロシア、イランとは異なり、シリアに対して影響を及ぼす力がさほどない」と言う。シリアの停戦協定を監視しているのはロシアやイランだから、今回の空爆はそれらの国々の責任だとの考えを示した。

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シリア政府は空爆について「断固として責任を否定する」との声明を発表した(空爆に使用された飛行機は、アサド政権軍のものとみられる)。「今回の空爆に関して、化学・毒物の使用を一切否定する。過去にも化学兵器の使用はなく、将来も使わない」と、強く否定している。

国連本部は今回の空爆に関してまだ声明を発表していないが、英国とフランスは、国連安全保障理事会で緊急の会合を開くよう議長国のアメリカに要請した。

アントニオ・グテレス国連事務総長はステファン・デュジャリック報道官を通して、「非常に動揺している。現時点で国連は空爆について検証する立場にないが、報告書に目を通していく。化学兵器の使用によるシリアでの幾度にも及ぶ人権侵害の問責には、国連も頭を抱えている」と述べた。

From Foreign Policy Magazine


ロビー・グレイマー

ニューズウィーク日本版

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