アーティスト2人を「手錠で辱め」…北朝鮮”見せしめ大会”の裏に金与正氏か

2025年4月11日(金)5時3分 デイリーNKジャパン

先月末、北朝鮮の平壌(ピョンヤン)で朝鮮労働党中央委員会(中央党)宣伝扇動部の指導の下、芸術部門のアーティストを対象に「思想闘争会議」が開かれたという。党宣伝扇動部は、金正恩総書記の妹・金与正(キム・ヨジョン)副部長が籍を置く部門だ。


平壌市の情報筋は8日、デイリーNKに「先月26日、平壌市の牡丹峰(モランボン)劇場で文学、音楽、歌劇、舞踊、美術、映画、テレビ劇(ドラマ)、·演劇などすべての文学芸術部門の創作家たちが参加した中で大思想闘争会議が行われた」と伝えた。


同日の会議は、関係者の間で顔が知られていない党宣伝扇動部の部員2人が主導し、午後から夜遅くまで続いたという。


会議は分野別アーティストが1人ずつ舞台に上がり、創作過程で現れた非社会主義的な現象を自己批判討論することから始まり、非社会主義行為の容疑で捜査機関に拘束された万寿台創作社所属の2人のアーティストに対する公開批判へと続いた。


ここで言う非社会主義行為とは、北朝鮮の体制が「好ましくない」と考えるすべての言動を指す。最近では韓流ドラマなどを隠れて視聴する行為が代表的なものだが、今回の事例は違ったようだ。


万寿台創作社所属の2人は、すでに2月初めから捜査機関の取り調べを受けてきたという。


情報筋は「この日の会議に参加した創作家たちは会議の目的が創作での怠慢と非社会主義現象を一般的に批判することだと思っていたが、手錠をかけられた2人が舞台に引きずり出されると、ようやくなぜこの日の会議が開かれることになったのか、その本当の目的に気づいた」と話した。


情報筋によると、舞台に立たされた2人は今年2月、密かに中国の業者に美術作品を売り渡し、これが中国との不正を監視していた保衛員(秘密警察)に察知され摘発された。


中国は北朝鮮の友好国ではあるが、国内情報の流出や海外情報の流入、禁制品の密輸入のほとんどは中朝国境を通じて発生するため、当局が厳格な監視下においているのだ。



会議を主導した党宣伝扇動部員ら2人を指して「党が勉強させて才能を開花させてやったのに、外国に美術作品を密かに売って金儲けをしていた。創作での怠慢がなぜ起き、革新的な作品がなぜ出てこないのか知っているか? 頭の中に問題があるからだ」と辛らつに批判した。


2人はこの日の会議であらゆる非難と罵倒を浴びた後、手錠をかけられたまま連行された。会議に参加した人々は彼らの姿を見ながら蒼白になっていたという。


一方、会議が終わった後、参加者たちの間では党宣伝扇動部員たちに対する不満の声が聞かれた。


情報筋は「普通は会議の開始に際して宣伝扇動部の誰それであると自己紹介をするものだが、今回はそれがまったくなく『これは自分たち創作家を無視する行為』だという声が出てきた」という。


だが、いかに中央党の所属とはいえ、従来とは異なる形で会議を進行するなど、一介の部員が勝手にできることではない。金正恩氏に次ぐ権威を持つ金与正氏の意向が、何らかの形で作用した可能性もある。

デイリーNKジャパン

「アーティスト」をもっと詳しく

「アーティスト」のニュース

「アーティスト」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ