北朝鮮が「刑務所」を大幅増強…犯罪率上昇で統制強化
2025年4月18日(金)7時30分 デイリーNKジャパン
北朝鮮の拘禁施設は大別して「教化所」と「管理所」に分類される。教化所には、刑法に違反したあらゆる犯罪者が収容される。一方、管理所は政治犯専用の収容所だ。これ以外にも、比較的軽い罪(懲役2年未満)を犯した者が収容される「鍛錬隊」という施設もある。
最近、4カ所の教化所が増築され、教化所と思われる新たな拘禁施設1カ所の建設が進んでいる様子が、衛星写真を通じて確認された。これは、北朝鮮当局による住民への統制強化と、それに伴う収容者の増加を示すものと思われる。韓国のサンドタイムズが報じた。
米国の北朝鮮専門ニュースサイト「NKニュース」の衛星写真の分析によると、2023年3月から黄海北道(ファンヘブクト)黄州(ファンジュ)で大規模な施設の建設が進められている。
黄州は平壌から南に35キロのところに位置しており、ミサイル基地をはじめとする多数の軍事施設や、最新かつ最大規模の広川(クァンチョン)鶏工場(養鶏場)などがある。
ここでは平壌市民に供給する鶏が飼育されているが、外国人観光客が平壌のホテルで食べる鶏肉も、受刑者の手で育てられたものかもしれない。
工事中の施設は、2.6ヘクタールの長方形の敷地を塀で囲み、6つの監視塔を備えている。敷地は3つの区域に分かれており、最も広い1.4ヘクタールの区域には、コの字型に配置された3階建ての建物3棟がある。それぞれの建物は横55メートル、縦12メートル程度と見られ、いずれも収容者用の居住棟と推定される。この区域にはさらに同規模の建物が2棟あり、食堂や工場として使用される可能性がある。
この区域のすぐ隣、敷地の中央部分には管理所の本部と思われる第2区域がある。その隣には、やはりコの字型に配置された建物群がある第3区域がある。配置構造は第1区域と同様だが、敷地面積で0.65ヘクタールと建物の大きさは小さい。収容者を性別や罪の重さで分けて収容するための構造とみられる。
建物の配置はコの字型になっているが、脱北者によれば、これは北朝鮮の教化所でよく見られる構造だという。そのためサンドタイムズは、黄州の収容所は管理所ではなく教化所である可能性が高いと分析している。
また、新義州(シニジュ)、沙里院(サリウォン)、川内(チョンネ)の各教化所では2023年12月から、咸興(ハムン)教化所では今年初めから増築工事が行われている。
北朝鮮で近年、犯罪率が上昇していると伝えられている中での教化所の新築、増築は、統制の強化を目的としたものと見られる。
北朝鮮当局は近年、「反動的で反社会主義的思想文化の流入・流布を阻止し、思想陣地、革命陣地、階級陣地を強化する」として、反動思想文化排撃法、青年教養保障法、平壌文化語保護法、国家秘密保護法など、住民生活の統制を強化する法律を次々と制定している。
また、一般的な刑事犯罪も増えていると見られる。公式な統計はないが、最近の北朝鮮メディア報道では市場での密売摘発に関する記事が増加しており、「密売は死刑に処される可能性がある」といった警告文もコロナ後多く見られるようになった。
一般的に拘禁、矯正施設の新築や増築は、収容者の人権状況改善に繋がるが、世界最悪の人権国家である北朝鮮の中でも、さらに人権が蹂躙されている教化所の施設が新しくなったからと、人権状況が改善するものではない。結局は、国内外に対するプロパガンダ目的の見せかけだけの施設にとどまるだろう。