バイデン大統領と菅首相は実は中国問題で決裂!? 日本の官製報道では見えない日米首脳会談の「同床異夢」

4月18日(日)7時5分 NEWSポストセブン

日本の報道は成果ばかりを強調するが(AFP=時事)

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 さて、余談と思われるかもしれないが、大事な話なのでここから始めさせていただく。アメリカ人が今、最も気にしているニュースは、コロナでもないし、中国問題でもない。もちろん、日米首脳会談などほとんど話題になっていない。一番の関心は銃乱射事件である。アメリカでは連日のように乱射事件が起き、15日のインディアナ州の事件では8人が死亡した。こんなに毎日のように乱射事件が起きるのは、銃社会のアメリカでも異様なことである。筆者が移住してからの47年間では間違いなく初めての経験だ。


 インディアナ州の事件では、犯人の母親が事前にFBIに息子の異変を通報していた。しかし、それで警察が全く動かないほど、この種の事件は日常になってしまった。人種差別が悪化していることは日本でも報じられているようだが、背景にある白人至上主義の台頭、右翼や無政府主義者、極端な左翼の動きは海外からはわかりにくいだろう。アメリカは明らかに越えてはならない一線を越えようとしている。


 こんな世相でコロナが再拡大することは非常にまずい。しかし、国民の半数近くがワクチン接種を終えているにもかかわらず、コロナは拡大を続けている。一日8万人という新規感染者は、第4波におののく日本の20倍だ。アメリカの人口は日本の3倍である。この数字がどれだけひどいかわかるはずだ。それなのに、若者たちは「コロナは終わった」と騒ぎ、パーティーや旅行に明け暮れている。


 バイデン大統領は、ワクチン接種を全力で進めながら、経済復興を急いでいる。3兆ドル近い政府のカネを使ってインフレ政策を推し進めようとしているのは、そうでもしないと国民の不満や鬱屈した気持ちを払拭できないからだ。


 前置きが長くなった。とにかくそんな国内危機のさなかに日本の菅義偉・首相はホワイトハウスに招かれた。バイデン政権で初めて来米した国家首脳である。しかし、これを「日本重視だ」とありがたがる日本の報道はいったん忘れてもらいたい。アメリカ人が見ているアメリカの報道からすると、これは小さなニュースである。中国が増長していることは言うまでもないし、アメリカは動かないわけにはいかない。しかし、それは急を告げる問題ではない。それがわかっているから中国は強気なのである。だから日本が選ばれた。中国問題を日本に任せたいのがバイデン氏の本音である。


 バイデン氏は、事前に国務長官、国防長官を日本に送り、事務レベルで日本とすり合わせをした。「尖閣防衛は日米安保の課題だ」といったリップサービスをすることで日本国民の信任を得て、実質的には東シナ海の問題は日本に丸投げするのがアメリカの戦略だ。日米外交筋を取材すると、そのあたりに関してはかなり突っ込んだ事前協議があったようで、しかも難航したという。当初、日本政府がアナウンスしていた日程より、首脳会談が1週間遅れたのは、それが理由のひとつだったとされる。


 世界最強のアメリカ軍といえど人間である。祖国や家族のためならまだしも、日本の、しかも誰も住んでいない小さな無人島のために命をかけて戦うのはご免なのだ。日本人の一部もそれに気づきつつある。中国の挑発は我慢ならないが、アメリカ軍が手を出さない場合に、本当に自衛隊を派遣して命がけで中国軍と戦う覚悟が日本にあるだろうか・バイデン政権はそれを慎重に見極めようとしていた。しかも日本には、平和を謳えば敵国は攻めてこないと考える左派層がいまだ少なからずいることもアメリカ政府は熟知している。


 日米首脳の共同記者会見を注意深く見ると、台湾問題に関する言及はあっても、中国本土の問題については具体的な言葉がない。これは、事前に事務レベルで話したとされる内容と大きく異なっている。日本の報道は詳細に確認していないが、ここから読み取れるのは、どうやら両首脳は対中国の具体的な戦略については合意できなかったようだ。アメリカはかなり踏み込んで日本に大きな役割を求めたはずである。おそらく菅首相はそれを?めなかったのだろう。アメリカの手に負えない難題なのに、日本が先頭に立って中国と事を構えるのは並大抵の覚悟ではできない。


 中国との軍事衝突について、もちろん防衛省・自衛隊では詳細なシミュレーションをしているだろう。しかし、問題は日本政府にその決断ができるかどうかであり、その後ろ盾になるのは日本国民が自衛隊員や場合によっては民間人の犠牲を受け入れてでも命がけで中国と戦争する覚悟があるかだ。ウォール・ストリートで長く活躍する友人のフィルとちょうど話す機会があったが、対中国の軍事政策についてフィルは、「日本が中心になってくれればありがたいが、日本人は戦争の勝算を考えるより、戦争をしない方法を考える国民だと思う。中国に圧力をかけることができるかは疑問だ」と言う。


 日本の大手メディアは、外交については外務省や首相官邸の発表通りに報道することが多いと理解している。しかし、アメリカの報道やアメリカ人の気持ちは、それとは大きな隔たりがあることは知っておいたほうがいいだろう。


■佐藤則男(ニューヨーク在住ジャーナリスト)

NEWSポストセブン

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