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トランプが命じたシリア「精密攻撃」の危うさ

4月19日(木)15時0分 ニューズウィーク日本版

<化学兵器使用を理由にアサド政権への限定的な軍事行動に踏み切ったトランプだが、ロシアとの全面対決を招く恐れも>

ドナルド・トランプ米大統領は4月13日、シリアの化学兵器関連施設への精密攻撃を命じたと発表した。同国のアサド政権が化学兵器を使用したとされる問題への対抗措置だ。この作戦には同盟国のフランスとイギリスも参加した。

「私は少し前、シリアの独裁者バシャル・アサド(大統領)の化学兵器能力に関連する施設への精密攻撃を米軍に命じた」と、トランプは全米に生中継された演説で述べた。

「フランスとイギリスとの共同作戦は現在進行中だ」とした上で、トランプはこう付け加えた。「禁止された化学物質の使用をシリア政府が停止するまで、(アメリカは)この対応を継続する用意がある」

シリア政府軍が4月7日、反政府勢力の拠点だった首都ダマスカス近郊東グータ地区のドゥーマを化学兵器で攻撃した可能性があると報じられると、トランプは9日に「強力な」対抗措置を取ると明言。米軍当局者と共に「あらゆる選択肢」がテーブルの上にあると口をそろえて主張し、シリアだけでなく同盟国のロシアとイランも「大きな代償」を支払わされる可能性があると警告していた。

トランプは13日の演説でイランとロシアに直接語り掛けた。「何の罪もない男や女、子供たちの大量虐殺に関与しようとするのはどんな国か? 世界の国々は、どんな友人を持っているかで判断できる。ならず者国家や残忍な暴君、血に飢えた独裁者を支援する国が長期的に成功することはない」

ロシアは15年以来、反政府勢力やイスラム過激派と7年越しの内戦を続けるアサド政権を支援してきた。ロシア軍はシリア全土に展開しているが、最も重要なのは地中海沿岸にある2つの軍事施設——タルトゥースの海軍基地とラタキア近郊にあるヘメイミームの空軍基地だ。トランプ政権が具体的な行動を検討している間に、シリア政府軍は装備の一部を両基地に移動したとも言われている。

米ロ両国はそれぞれの支援勢力を通じてテロ組織ISIS(自称イスラム国)と戦ってきたが、シリアの政治的将来については意見が対立している。ここへきて、両者の対立が本格的な軍事衝突に発展する恐れが出てきた。



中東「泥沼介入」の歴史

ニッキー・ヘイリー米国連大使は3月半ば、アサド政権に対する一方的な軍事行動を示唆。これに対してロシア軍のバレリー・ゲラシモフ参謀総長は次のように警告した。「わが軍兵士の生命への脅威が発生した場合、ロシア軍は報復措置としてミサイルとその運搬手段の両方を攻撃対象とする」

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はシリアでの紛争拡大に反対するとして、もしトランプ政権が新たな軍事行動に出れば、アメリカは再び長期にわたる中東での戦争に引きずり込まれる恐れがあると警告した。

「シリアでの無謀な行動は、リビアやイラクのときと同様の禁じ手だ。そのような危険な賭けに出る者がいないことを願う。たとえ小さな事件でも、再びヨーロッパへの難民流入が激増するきっかけになる」

紛争拡大を「歓迎するのは、おそらく外国勢力だけだろう」と、ラブロフは付け加えた。「彼らはひそかに自分たちの地政学プロジェクトを前進させるため、(中東という)地域全体を破壊する試みを続けている」

01年の9.11テロ以降、アメリカはアフガニスタン戦争を皮切りに、いくつかの紛争に直接関わってきた。しかし、必ずしも思いどおりの結果にはなっていない。

アフガニスタンでは、9.11テロの首謀者であるウサマ・ビンラディンをかくまっているとの理由でイスラム原理主義勢力のタリバン政権を攻撃。直ちに同政権を崩壊させたが、その後も反政府武装勢力の活動に悩まされ続けている。

03年にはイラク戦争に踏み切った。フセイン政権が大量破壊兵器を隠し持っているというのが開戦の「大義」だったが、この疑惑はぬれ衣だったことが後に判明した。フセイン政権の崩壊後、イスラム教シーア派主導の政権が樹立されたが、それに反発するスンニ派武装勢力の活動が活発化した。そうした勢力の一部が合流して、スンニ派武装勢力「イラク・イスラム国」が誕生した。

11年に中東で「アラブの春」と呼ばれた民主化運動が拡大すると、アメリカやその他のNATO諸国はリビアの反政府勢力を支援し、カダフィ政権を打倒させた。しかしその後、リビアは内戦状態に陥った。バラク・オバマ前米大統領は後に、このときに適切な対応ができなかったことを、在任中に犯した最大の失敗だと振り返っている。



国防長官マティスの懸念

11年末、アメリカはイラク駐留部隊のほとんどを撤退させた。一方、CIAはこの頃、カタール、サウジアラビア、トルコの政府と共に、シリアの反政府勢力への資金援助を開始した。アサド政権が反政府勢力を抑え込むために、人権侵害を行っているというのが理由だ。

イラク・イスラム国は13年、混乱に乗じてシリアに勢力を拡大させ、ISISを名乗るようになった。翌年、ISISはイラクとシリアの半分を支配下に収め、内戦状態のリビアでも存在感を強めていった。

アサド政権は、ロシアとイランの支援により、これまでのところフセイン政権やカダフィ政権と同じ運命をたどらずに済んでいる。それでも、大統領府の防御体制を強化したり、政府軍の一部装備をロシア軍施設内に移したりしているという報道は、アサド政権がトランプの脅しを深刻な脅威と見なしていたことの表れと言えそうだ。

13日の空爆開始直前まで、シリアとロシアの両国政府は、軍事行動の可能性をちらつかせるトランプを牽制していた。

シリアのバシャル・ジャファリ国連大使は、「米英仏がわが国の国土を攻撃するなら、自衛のために戦うことを躊躇しない」と発言。ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使も、トランプがシリアへの攻撃を行えば、米ロ戦争の可能性を「排除できない」と述べていた。

対立がエスカレートすることへの懸念は、米政府内にもあった。ジェームズ・マティス米国防長官は12日、攻撃すれば、事態が「コントロール不能」になり、紛争が拡大する危険があることを認めている。

それでも、トランプはシリア空爆に踏み切った。それが「コントロール不能」な事態を生まないことを願うばかりだ。

<本誌2018年4月24日号[最新号]掲載>



トム・オコナー

ニューズウィーク日本版

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